タコが墨を吐く理由は?イカ墨との違いや墨を吐かないタコの特徴

公開日: 2023/03/30

足がたくさんある海の生き物としてお馴染みのタコは、海の中で墨(すみ)を吐くことがあります。同じく墨を吐く生き物にはイカもいますが、なぜタコやイカは墨を吐くのでしょうか? この記事では、タコやイカが墨を吐く理由や、タコ墨とイカ墨の違い、墨を吐かないタコの特徴などについて分かりやすく解説していきます。それぞれの違いを見比べながら、タコやイカが吐く墨の不思議をひも解いていきましょう。

目次
タコとイカはどうして墨を吐くの?
イカ墨と違って「タコ墨」があまり使われない理由
墨を吐かないタコもいる!深海のアイドル「メンダコ」の特徴
タコとイカは墨を使い分けて身を守る海中の忍者!

タコとイカはどうして墨を吐くの?

タコやイカが墨を吐くのは、外敵から身を守るためです。いつ敵に襲われるか分からない動物界において、もしもの時に備えた「身を守る術(すべ)」は、生きていくためにとても重要になります。

そして、タコとイカにとっての身を守る術が、墨を吐いて敵から逃れることなのです。また、面白いことにタコとイカで墨の使い方が違っていて、タコは「煙幕(えんまく)の術」、イカは「分身の術」を使いながら外敵から逃れるのです。

ここからは、タコとイカが「どのように墨を使っているのか」をみていきましょう。

・煙幕の術を使うタコ

タコの墨は、サラサラで水っぽいので、海中に吐かれると煙幕のように広がっていきます。敵に向かって吐かれた墨は、敵を驚かせると同時に煙のように広がって視界を遮(さえぎ)るのです。この煙幕のような墨によって、敵が姿を見失っている隙にタコは逃げているのです。

また、タコの墨には相手の嗅覚(きゅうかく)を麻痺(まひ)させる効果もあります。なぜなら、タコの天敵のウツボは嗅覚が優れていて、ニオイで獲物を探すからです。

このように、目くらましをしたり嗅覚を麻痺させたりして、タコは外敵から身を守っているのです。

・分身の術を使うイカ

イカの墨は、ドロッとした粘り気があり、海中に吐かれた一か所にまとまった状態で残ります。この墨が、イカと同じような大きさでゆらゆら揺れるので、敵からするとまるで分身のように見えるのです。

イカがこのような墨を吐く理由は、イカの天敵となる魚が視覚を使って獲物を追いかけるからです。だまされた捕食者たちは、この分身のイカを攻撃します。しかし、攻撃されたのはイカではなく、身代わりとして使った墨なので捕まえることができません。その隙にイカは外敵から逃げているのです。

イカ墨と違って「タコ墨」があまり使われない理由

タコやイカは、お刺身や天ぷらなどの食材としても人気です。ただ、パスタやパエリア、アイスクリームなど、私たちの身の回りによくある料理で使われているのは、いつも「イカ墨」で「タコ墨」を見かけることはほとんどないと思います。

実際は、タコもイカも同じように墨を吐く生き物なのに、どうして「タコ墨」はあまり使われていないのでしょうか?

ここでは、タコ墨があまり使われていない3つの理由を紹介していきます。

・墨がタコの体にあまり残っていない

私たちがスーパーやお寿司屋さんで目にするタコは、すでに内蔵のほとんどが取り除かれた状態で市場に出回っています。そのため、体内の墨も残っていないことが多いのです。

また、個体によって差はありますが、タコの体内にある墨の量は、イカの10分の1程度しかありません。そもそもの墨が少なく、食べられる量の墨を集めるのが難しいのも、タコ墨があまり使われない理由の1つでしょう。

・墨袋が内蔵に埋もれて取り出しにくい

タコやイカのように墨を吐く生き物には、体内に墨をためておくための「墨袋(すみぶくろ)/墨汁嚢(ぼくじゅうのう)」という器官があります。イカ墨やタコ墨を使うためにこの墨袋が必要なのですが、タコの墨袋は内蔵に埋もれてしまっていて取り出しにくいのです。

取り出す際に破れてしまうことも多く、使われる前に墨が流れてしまうこともあります。このように、イカ墨と比べて取り出すのに手間がかかるタコ墨は、料理にあまり使われないのです。

墨を吐かないタコもいる!深海のアイドル「メンダコ」の特徴

危険を感じた時に墨を吐いて身を守るタコやイカですが、中には墨を吐かないタコもいます。それが、深海のアイドルと呼ばれている「メンダコ」です。

タコの仲間であるメンダコには、墨袋がありません。なぜなら、水深200メートル~1,000メートルほどの真っ暗な深海に住んでいるメンダコにとって、目くらまし代わりの墨を使う必要がないからです。

メンダコは、体長は15センチメートル~20センチメートル前後で両手に収まるくらい小さく、脚の半分以上が膜に覆(おお)われているパラシュートのような見た目をしています。脚をパタパタさせながらバランスを取っている姿や、海底に貼りついたように休む可愛らしい姿が話題になり、水族館のグッズやイラストとしても人気です。

ここからは、深海のアイドルと呼ばれているメンダコの「あまり知られていない意外な特徴」を紹介していきます。

・とっても繊細!水族館で会えたらラッキー

メンダコは、とても繊細な生き物です。環境の変化や刺激に弱く、どれだけ大事に飼育してもストレスを感じ、数日から数週間以内に死んでしまいます。飼育期間の最長記録は、東京の「サンシャイン水族館」で観測された78日間ですが、それでも2ヶ月と少ししか生きることができなかったのです。

このように、メンダコを飼育するのは難しく、常設展示している水族館はありません。ただし、海水が冷たくなる冬の時期になると、期間限定でイベント展示が行われる水族館もあり、メンダコに会うチャンスがあります。

それでも、繊細でストレスに弱いメンダコに会えるわけではありません。どうしても直接見たい場合には、水族館の公式サイトから最新の情報をチェックしておきましょう。

・ニオイで分かるくらい臭い!

メンダコは、その可愛いらしい見た目からは想像がつかないくらいニオイが臭い特徴があります。ニオイの種類は、シンナー系の薬品のようで、ツーンとした独特なニオイがするのです。

私たちが水族館で見るときにニオイはしませんが、漁師さんが言うには「網を引き上げている途中でも分かるくらい強烈なニオイがする」のだとか。

どうしてメンダコが臭いニオイを発するのかは未だ分かっていませんが、もしかするとこのニオイで深海の敵から身を守っているのかもしれませんね。

・食感はガムみたい!

私たちが普段食べているタコとは違って、食卓に出されることがないメンダコ。実際に食べてみると、食感はガムのようにブニブニで、味は海水のしょっぱさを除いてほぼありません。

食べられはするけれど、美味しくないので食用にはされてないのです。メンダコを食べる機会はほとんどありませんが、もしチャンスがあれば実際に食べてみるのもいい経験になるかもしれませんね。

タコとイカは墨を使い分けて身を守る海中の忍者!

タコとイカが墨を吐くのは、外敵から狙われた時に身を守るためだということが分かりました。「煙幕の術」や「分身の術」として墨を使っているその姿は、まるで忍者のようです。

実際にタコやイカが墨を吐く姿はYouTubeで見ることができるので、どれくらいの量の墨を、どれくらいの勢いで吐くのかなどを観察してみましょう。YouTubeならメンダコの可愛らしい姿もたくさん見られますよ。

もしも近くに水族館があるなら、実際にタコやイカに会いに行ってみてはいかがでしょうか。今回の記事で学んだことを思い出しながらタコやイカを観察すれば、いつもの水族館とは少し違った楽しみ方ができますよ。 

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