トカゲの尻尾は切れても生えてくる!?切れる理由と再生の仕組み
公開日: 2023/03/30
トカゲを捕まえようとしたときに、尻尾だけが切れてトカゲ本体には逃げられてしまったことはありませんか?トカゲが尻尾を切って逃げることを「自切(じせつ)」といいます。自切は、トカゲ以外にも両生類や節足動物などさまざまな生き物に見られる行動です。 また、自切する生き物の多くが、切断部分から体を再生する能力をもっていて、人間の再生医療に活用できるのではないかと注目されています。今回は、自切と再生のメカニズムや、トカゲ以外の自切する生き物についてみていきましょう。
トカゲの尻尾はなぜ切れるの?「自切」の理由
トカゲは敵から襲われたり身に危険を感じたりすると、尻尾を切り離します。切り離された尻尾は、10分間程度激しく動き続けます。敵が動く尻尾に気を取られている間に、トカゲは逃げられるわけです。このように、自発的に体の一部を切り離すことを自切といいます。体の一部を犠牲にしても、生き延びられるようにトカゲは自切ができるようになったのでしょう。とくに、子どものトカゲの尻尾はいざというときに自切をして逃げられるように、わざと目立ちやすい鮮やかな青色をしています。
自切と再生の仕組み
トカゲの尻尾が自切したあと、あまり血が出ていないことに気づいた人もいるでしょう。また、しばらくすると新しい尻尾が生えてきますが、元のものとは違った形状をしています。この自切と再生の仕組みを解説しましょう。
・尻尾には切れやすい箇所がいくつもある
トカゲの尻尾は人間の背骨と同じように、尾椎(びつい)と呼ばれる小さな骨がいくつも連なっている構造です。それぞれの尾椎の中央あたりには、脱離節(だつりせつ)という切れ目が入っています。脱離節の周辺の筋肉も切れやすくなっていて、筋肉も骨も自切できるわけです。また、トカゲが自ら「尻尾を切ろう」と思って自切をしているのではなく、危険を察知して強いストレスがかかると、自然に尻尾が切れる仕組みになっています。
・血が出にくい仕組み!筋肉の収縮について
尻尾が切れた部分では、すぐに周辺の筋肉が収縮します。自切したときに少し血がにじむことはありますが、ほとんど血は出ません。
・尻尾の再生のための幹細胞のはたらき
尻尾の切断部分は、徐々に筋肉がふくらんで新しい尻尾が生えてきます。尻尾の再生には、筋肉に含まれる幹細胞が関与していると考えられています。幹細胞とは、さまざまな細胞に変化して増殖することで、組織を再生する力をもつ細胞です。幹細胞のもつ再生能力は人間の再生医療に応用できると考えられていて、とくに再生能力が高いイモリを使った研究が続けられています。
・再生しても完全に元通りにはならない
トカゲの尻尾は再生可能といわれていますが、実は完全に元通りになるわけではありません。硬い骨は再生せず軟骨の通った尻尾になったり、色や模様が変わっていたりするのが一般的です。場合によっては、太い尻尾が生えたり尻尾が2本になったりすることもあります。また、再生にはとても多くのエネルギーを使うので、生涯で1~2回が限度です。もともと尻尾には栄養が多く入っていて、自切することでトカゲは体調を崩すことがあります。メスの場合は、産卵ができなくなるほどのダメージを受けます。また、ナイフなどでわざと切られた尻尾は再生できません。このため、トカゲを見つけたときに、簡単に再生できるだろうと考えて、むやみに尻尾切りをするのはやめましょう。
自切ができるほかの生き物
自切ができる生き物はトカゲだけではありません。さまざまな生き物が自切可能です。また、トカゲの仲間でも自切できない種類もあります。
・トカゲ類
日本の草原や山地でよく見かけるニホントカゲやヒガシニホントカゲは自切できる種類です。また、ニホントカゲに似ているニホンカナヘビやニホンヤモリなどの爬虫類も自切します。一方、ペットとして飼われることの多いアガマの仲間やイグアナなどは自切できません。
・カニなどの甲殻類
カニやエビなどの甲殻類も自切します。カニやエビが自切する箇所は、はさみや脚です。はさみを自切すると袋に包まれた小さなはさみが再生し、脱皮のタイミングで袋から出て元の大きさのはさみになります。
・クモなどの節足動物
クモやムカデなどの節足動物も自切することが知られています。節足動物の場合は、危険から身を守ったり治癒を早めたりするために、脚の一部を自切すると考えられています。
トカゲを観察して自由研究にしてみよう
庭や公園などの日当たりのよい場所でよく見かけるトカゲ。尻尾を切らずに捕まえられるトカゲ釣りをして観察してみてはいかがでしょうか。
・トカゲを捕まえる
尻尾を自切せず捕まえたいなら、釣るのがおすすめです。釣り糸の先にミールワームというガの幼虫を付けて、トカゲのそばに糸を垂らして食いつくのを待ちます。
・捕まえた場所や日時を記録する
捕まえた場所や日時を記録したり、捕まえたときの様子を描いたりしておきます。図鑑などを使って、捕まえたトカゲの種類も調べてみましょう。
・飼育環境を整える
飼育ケースに乾いた砂や土を敷き、隠れ家となる流木や植木鉢のかけらを入れると、トカゲに適した飼育環境になります。ペットボトルやビンの蓋をエサ入れとして使うとよいでしょう。
・食事の様子を観察する
野生のトカゲは生きているエサしか食べません。トカゲが食べられるサイズのバッタやコオロギ、クモなどを捕まえて、毎日飼育ケースに入れる必要があります。エサを入れたら、トカゲの食事の様子をよく観察してみましょう。
脱皮の様子を観察する
自分で飼育すると、野外ではなかなか見ることができない脱皮を目撃できるかもしれません。トカゲが脱皮するときは、鱗(うろこ)のようなものがポロポロと剥がれ落ちます。よく観察していないと気づかないかもしれませんが、しっかり見てみましょう。
観察を終えたら捕まえた場所に返す
自由研究の観察を終えたら、できるだけ速やかに元の場所に戻しましょう。トカゲの飼育には生きているエサが必要だったり紫外線に当てなければならなかったりと、初心者が飼い続けるのは容易ではありません。また、野生のトカゲは警戒心が強く、慣れない環境ではエサを食べないこともあるでしょう。このため、無理して飼育しようとせず、観察を終えたら早めに捕まえた場所に戻すことが大切です。
トカゲの尻尾切りは命がけで身を守る手段
トカゲの尻尾切りは、敵から身を守るために尻尾を自発的に切り落とすことです。もともとトカゲの尻尾は切れやすくなっていて、肝細胞の作用で数カ月後には再生します。しかし、尻尾は栄養分がたくさん蓄えられている場所で、自切した尻尾を再生するには大変なエネルギーを使います。自切を何回もできるわけではなく、自切をしたことで体調を崩すトカゲもいるほどです。また、再生した尻尾も硬い骨がなかったり色や模様が違ったりと、完全に元通りになるわけではありません。このため、トカゲを見つけてもむやみに追いかけて、尻尾を切るようなことのないように気をつけましょう。