カブトムシはその力強いフォルムから、クワガタムシと並んで特に人気がある昆虫です。多くの人は、茶色の体に大きなツノというカブトムシのイメージを強く持っていると思いますが、世界には色や形が異なる多様なカブトムシが生息しています。
この記事をいいねと思ったらクリック!
カブトムシは何種類いるの?
昆虫は、あらゆる生物の中でも特に種類が多いことが分かっています。現在知られている地球上の生物の種数は約175万種ほどですが、なんと半分以上である約95万種が昆虫です。昆虫の中でも、カブトムシを含む甲虫類は約35万種を占め、多様な種を含むグループの一つです。
種ってなに?
「種」とは、生物を分類する基準の一つです。種が違う生物同士は、その生物が生息している地域や、生物の見た目が違うことが多いですが、もう一つ「子孫を残せるか」という点も重要なポイントです。
見た目が違う生物の間でも、子どもを産めるケースはたくさんあります。その子どもがさらに子どもを産んで、子孫を残せるのであれば二つの生物は同じ種と考えられます。例えば、メスの馬とオスのロバの間には「ラバ」と呼ばれる子どもが生まれます。ただ、このラバは子孫を残すことができないので、馬とロバは別の種です。
カブトムシでは、わずかに特徴が異なる「亜種」がたくさん見つかっています。環境に合わせて体の色や形状を進化させてきた結果、多様なカブトムシが世界中に分布しています。
世界にいるカブトムシの種数
これまでに世界中で発見されたカブトムシは、亜種を含めると1000種類をゆうに超えると言われています。カブトムシは熱帯雨林のように木が生い茂った地域から、乾燥した地域までさまざまな環境に適応して生息しています。
有名なヘラクレスオオカブトなど、日本では見られないような特徴的なカブトムシがたくさん存在します。
日本にいるカブトムシの種数
日本にもいくつかの種類のカブトムシが生息していることが確認されています。そのうち「ヤマトカブトムシ」と呼ばれる種類はよく知られています。日本で採集する場合は、広葉樹(葉っぱが平たい木)の雑木林で、樹液の出ている木がおすすめです。特に、クヌギの木にはカブトムシなどがよく集まると言われています。
カブトムシの生息地域は赤道に近く温かい地域を中心に広がっていて、日本はカブトムシが生息できる北のエリアの一つです。日本国内では、沖縄県や鹿児島県など南の地域に多くのカブトムシが生息しています。
たくさんのカブトムシの中でも特に有名なのは?
世界にたくさん存在するカブトムシの中でも、見た目の力強さやユニークな特徴で多くの人の興味を集め、特によく知られているものを紹介します。
カブトムシの一生の大部分は幼虫と蛹(さなぎ)の期間で、羽化した後、私たちがよく知っている形態(成虫)として過ごせる時間は限られています。飼育する場合には、成虫として楽しめる期間の長さも確認しましょう。
1.ヘラクレスオオカブトの仲間
数あるカブトムシの中でも、人気や知名度が特に高いのがヘラクレスオオカブトです。
生息場所:南アメリカや中央アメリカの比較的標高の高い地域に生息しています。
特徴:世界最大級の大きな体を持ち、オスでは、頭部から生えたツノ(頭角)、胸部から生えたツノ(胸角)が非常に大きいことが特徴です。
ヘラクレスオオカブトは、日本でよく見かける茶色のカブトムシとは異なり、黄色がかった明るい体色をしています。また、湿度によって体色が変化することが知られていて、湿度が高いと黒色が濃くなります。
生態:成虫の寿命は半年~1年ほどで、カブトムシの中では比較的長い期間飼育を楽しめる種類です。
その他:名前の由来は、ギリシャ神話に出てくる英雄「ヘラクレス」です。その名にふさわしい立派な体とツノを持っています。ヘラクレスオオカブトは日本でも人気があり、大きいものでは数万円の価格で販売されています。
2.アトラスオオカブトの仲間
アトラスオオカブトは、世界最強とも言われるコーカサスオオカブトを含むグループです。
生息場所:フィリピンやインドネシアなど、東南アジアの標高の低い地域に生息しています。
特徴:二本の胸角と頭角からなる3本の大きなツノが特徴的な大型のカブトムシです。光沢があって美しい見た目も魅力的です。
生態:飼育した場合、成虫の寿命は3~4ヵ月程度です。カブトムシの中でも攻撃性が強いことで知られています。
その他:安いものは数千円で購入できるので、飼育に挑戦しやすいカブトムシです。世界にはアトラス山脈やコーカサス地方という地名がありますが、アトラスオオカブトはそれらの地域に生息しているわけではありません。
3.エレファスゾウカブト
エレファスゾウカブトは、世界一体重が重いカブトムシとして知られています。
生息場所:中央アメリカや南アメリカの熱帯雨林に生息しています。
特徴:ツノは大きくないため、体長ではヘラクレスオオカブトに及びませんが、大きく重い体が最大の特徴です。
生態:飼育方法にもよりますが、成虫の寿命は半年程度と言われています。カブトムシの中では比較的穏やかな性格ですが、いざというときにはとても強い力を発揮します。体の大きさが示すように、エサをたくさん食べるカブトムシです。
4.コカブトムシ
大きくて強そうな海外のカブトムシとは対照的に、日本に生息している小型のカブトムシです。
生息場所:日本各地の他、朝鮮半島や中国大陸にも生息しています。
特徴:一般的にイメージするカブトムシのような大きなツノはなく、頭部に小さな突起があるのみです。体長は20ミリメートル程度で、見た目はカブトムシというより、カナブンやコガネムシのイメージに近いかもしれません。
生態:樹液ではなく、他の昆虫などの死骸を食べるのが特徴です。森林の朽木などで見つかることがあるようです。成虫になってからの寿命は長く、半年~2年ほど生きることがあります。
レアなカブトムシとは?
カブトムシの中には個体数が少ない、住んでいる地域がジャングルの奥地などの理由で入手が難しい、希少(レア)なものも存在します。
サタンオオカブト
悪魔という意味の名前が付いたカブトムシです。
生息場所:南米にあるボリビアという国の熱帯雨林に生息しています。
特徴:オスは湾曲した大きな2本のツノをもつカブトムシで、全長100ミリメートルを超えることもあります。胸角の下面あたりには毛がフサフサと生えています。
生態:近年まで観察例が少なく、野生個体の生態は謎が多く残されていました。現在では、同じく南米の熱帯雨林に生息するネプチューンオオカブトと近い種であり、生態も似ていると考えられています。悪魔という名前がついていますが、性格は穏やかで、特に好戦的ではないようです。
珍しい形の個体
よく知られている種のカブトムシであっても、低い確率でツノなどが特徴的な形になる例が報告されています。例えば、日本にたくさん生息しているヤマトカブトムシのツノは、先端が2つのYの字のように分岐していますが、この分岐が通常よりも多く、王冠のような形になった個体が報告されています。この個体では、ヤマトカブトムシの遺伝子に突然変異が生じて形状が変化した可能性があります。他には、かつて絶滅したと考えられている種の生き残りでは?という説も一部で主張されているようです。いずれにせよロマンのある話題ですね。
多種多様なカブトムシは生物の神秘の表れ
世界には、形や大きさが異なるさまざまなカブトムシが生息しています。長い生命の歴史の中で、多くの種が生まれて、絶滅してきた結果が魅力的な特徴をもつカブトムシ達につながっています。
カブトムシを通して生命の多様性を感じてみると、この世界の生き物についてもっと知りたくなりませんか?昆虫は特に多くの種が発見されつづけていますので、いつか皆さんの中の誰かが新しいカブトムシを発見することがあるかもしれませんね。