シンギュラリティとは?子どもがAI時代を生き抜くためにできる準備
公開日: 2019/10/01
第4次産業革命の技術革新のキーワードである、「人工知能(AI)」「IoT(モノのインターネット)」「ビッグデータ」「ロボット」が、身近になる時代が近づいてきています。 ご存知の方も多いかもしれませんが、2020年度、小学校でプログラミング授業の実施が開始されます。小学生のお子さんをもつ方たちには、気になるところだと思います。 今後、子どもたちは、これらの技術が実用化され、どんどん生活に入り込んでくる時代を生きていくことになります。そんな中、シンギュラリティという言葉を聞いたことがある方もいると思います。 今回は、シンギュラリティとは一体何なのか、また親が子どもにできることについても、分かりやすくご説明していきます。
シンギュラリティの意味
現在注目を集めているシンギュラリティという言葉。一体、どんな意味をもつ言葉なのでしょうか?
シンギュラリティの概念
シンギュラリティ(技術的特異点)とは、テクノロジーの進化によって人工知能が人間の知能を超えるという概念のことであり、人工知能の権威であり未来学者でもある、アメリカのレイ・カーツワイル博士によって提唱されました。現在、普及し始めている人工知能は、特定の環境で利用される「特化型人工知能」と呼ばれるもので、今後は汎用性や自立性をもつ「汎用人工知能」へと進化していくという仮定の上に成り立っています。「汎用人工知能」は自らバージョンアップを繰り返し、あるタイミングでその進化は人類には予測もつかなくなります。このような状態をシンギュラリティといいます。また、カーツワイル博士は、遅くとも2045年までにはシンギュラリティに到達すると予測しています。
シンギュラリティ広まった理由
シンギュラリティは、深層学習と呼ばれるディープランニングの発達と、ビッグデータの蓄積などよって発生した第3次人工知能ブームが引き金となって注目されることになりました。また、野村総合研究所が、イギリスの工学博士M.オズボーン他との共同研究の中で、「10~20年後、国内の労働人口の約49%が人工知能やロボットで代替可能になる」という報告結果を発表したこともあり、これまで人間が行ってきた労働の多くはAIに取って代わられるという危機感からも、一気に注目が集まりました。シンギュラリティとは、人間の生活のみならず、人間の在り方そのものへも大きな影響を与える概念といえるでしょう。シンギュラリティの考え方に否定的な人や懐疑的な人も存在しています。そもそも自分の知能を超える知能を生み出すということは可能かどうか、この部分は未だ検証できていません。しかし、テクノロジーの進化のスピードを考えると絶対にないと断言できる人もまたいないのです。
シンギュラリティの影響を受けやすい分野・受けにくい分野
それでは、次に、シンギュラリティが起こることにより具体的にどんな影響があるのでしょうか?シンギュラリティの影響を受けやすい分野と受けにくい分野について、具体的な仕事を通して、解説していきます。
影響を受けやすい仕事
英オクスフォード大学で人工知能研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授は、論文『雇用の未来(THE FUTURE OF EMPLOYMENT)』の中で、定型的な仕事や、体系的に作業を進めていける仕事は、人工知能へと代替される可能性があると指摘しています。マニュアルに沿って物事を処理できる仕事と考えると分かりやすいかもしれません。具体的には、販売員や事務員、銀行の融資担当などが挙げられ、また中には会計士のような高度な知識を必要とする職種も含まれているので、驚きですよね。他にも、ニュースやCMなどで見たことがある方もいるかもしれませんが、すでに人工知能による自動運転技術実験が行われている、タクシーやトラック、バス、電車などは、ドライバーにも影響が出る可能性があるでしょう。人手不足が深刻なコンビニエンスストアの店員やスーパーのレジ精算係も人工知能が対応可能です。また、工場の生産ラインの品質管理も人工知能が代替可能なのです。
影響を受けにくい仕事
では、逆に、人工知能の代替が難しい、シンギュラリティの影響を受けにくい分野とはどんな分野なのか見ていきましょう。高いコミュニケーション力が必要な分野(カウンセラーやコンサルタントなど)、感性などが必要なクリエイティブやショービジネスの分野(芸術家、ミュージシャン、スポーツ選手など)、高いホスピタリティ性が求められる分野(介護福祉、接客、医療など)、アイデンティティに関する分野(伝統工芸の職人、哲学者、文学者)などが挙げられます。また、高度な技術が発達した中で、人工知能やロボットを運用したり、チューニングしたりという仕事は必ず必要になります。今後、子どもたちはAIを使う側とAIを使わされる側に二分されることになります。
シンギュラリティの時代に向けて親ができること
AIを使う側に立つために今話題となっているのが、STEM教育です。さらに、最近ではSTEAM教育という手法も提唱されるようになってきました。STEAM教育とは、S(Science/科学)、T(Technology/技術)、E(Engineering/工学)、M(Mathematics/数学)を統合的に学習する「STEM教育(ステム教育)に、A(Art/芸術)を加えた教育手法です。これからの子どもたちは、シンギュラリティの時代に向けて、科学技術の活用だけでなく、科学技術の理解を深めて利用し、自由に創造して表現する力が重要になってきます。文部科学省は、高等学校からSTEAM教育を導入していく方針で、大学においてもSTEAM教育の導入を試みています。また、多くの民間企業がSTEAM教育の手法をもとにしたさまざまなサービスを提供しています。今後、発達した科学技術に囲まれた生活をおくる子どもたちに、高い専門知識や技術、それを利用して創造する力を、早い段階から意識的に身に付けさせるのは、とても有意義なことでしょう。また、グローバルな観点から考えると、私たち日本人の根底に流れる美意識は、重要な武器になるはずです。大人は意識的に子どもたちに継承していく責任があります。日本人特有の品質への拘りや自然との共生の思想は、新しい技術を生み出す際に常に立ち返って考えるべき意識かもしれません。
シンギュラリティ時代を生き抜くには
第4次産業革命により、さまざまな形で「人工知能(AI)」「IoT(モノのインターネット)」「ビッグデータ」「ロボット」が散見される時代がやってきます。シンギュラリティに到達した場合、人間の知能を凌駕したAIが、今ある労働の半分を代替する可能性があります。成長した子どもたちがその時代をポジティブに生き抜いていくためには、古い価値観からの脱却とその覚悟、ポストヒューマンとしての新しい価値観が必要になります。正しい科学技術の知識と平行して、倫理や哲学など、生き方、在り方を常に問い続けることが必要になってくるのではないでしょうか。ぜひ、この記事をお子さんと一緒に読んでいただき、まずはシンギュラリティについて、親子で興味をもってくれることを願っています。
<参考サイト>Biz HINT「シンギュラリティ(技術的特異点)」https://bizhint.jp/keyword/42911Geekroid(マイナビAGENT)https://mynavi-agent.jp/it/geekroid/2019/07/post-93.html