小学校におけるICT教育の現状と課題│家庭でできることはある?
公開日: 2022/03/30
1人1台タブレット端末を配布され、小学校ではICT教育が本格的にスタートしています。従来の一斉授業をただ配信するだけではなく、ICTツールを活用してアクティブラーニングや個々に寄り添った学習の推進などが行われています。 しかし、ICT教育の取り入れ方は各校に任され、専門家が教えるわけではありません。そのため、ICTツールを使いこなせる教師が不足している場合は、十分に活用しきれないケースもあるようです。 今回は小学校におけるICT教育の現状と課題、各家庭で取り入れられるICT教育についてご紹介します。
ICT教育とは?
2021年度は小学校でのICT技術の活用が急速に進みました。保護者参観をオンラインで実施する学校もあり、最早教育ICTは学校現場で必要不可欠になっています。まずはICT教育とはどのようなものかをご紹介します。
ICTとは?
そもそもICTは「Information and Communication Technology」の略で、日本語では情報通信技術と訳されます。ICTには広い意味がありますが、現在では主にインターネットを介して行うメールのやり取りや情報の共有などが挙げられます。ITにコミュニケーションという言葉が加わっているため、情報発信、情報のやり取りのニュアンスが強いです。
小学校でのICT教育とは?
2021年度は「教育のICT元年」と言われています。文部科学省により「学校のICT環境設備」と「ICTを活用した学習活動の充実」が掲げられ、小学校の現場で大きな変化がありました。小学生に対し、1人1台タブレット端末が配布され、新型コロナウイルス感染症拡大もあり、オンライン授業が盛んに行われています。2019年には従来の紙の教科書に加え、必要に応じて学習用デジタル教科書も併用できるようになりました。教科書を拡大して映したり、書き込んだ画面を共有したりできるほか、機械音声、動画やアニメーションなど、学びの助けになる機能が使用できます。電子黒板の使用も始まっており、教師もデジタルツールを使いこなす技術を求められています。
ICT教育の目的
ICT教育の導入には巨額の予算が必要であり、教育現場にも大きな変革が求められますが、文部科学省はICT教育を強く推進しています。そこにはどのような狙いがあるのでしょうか。ICT教育の目的を2つご紹介します。
学びの機動力が高める
1人1台タブレット端末を持ち、活用することで、学びの機動力を高める目的があります。例えば、自分の考えや他の生徒と共有して、比較検討して学び合い、デジタルツールを使って表現力豊かなプレゼンテーションが行えます。また、興味や関心を持った事柄について、その場ですぐに検索して、情報をまとめることも可能です。
児童に合わせて学びやすくする
デジタル教科書やタブレット端末を活用は、教師の業務の効率化も1つの目的です。それにより、教師は教材研究や個々の生徒に向き合う時間を確保しやすくなります。また、何が得意で何が苦手なのか、生徒の学習記録データを学校や家庭で共有できます。それにより、児童に合わせたきめ細かい支援につなげます。
ICT教育推進の課題とは?
2020年度より全面実施された新しい学習指導要領の中にICTの活用が盛り込まれ、ICT教育は本格的に始動しています。しかし、日本のICT教育はスタートしたばかりで、まだまだ不十分なのが現状です。ここでは、ICT教育推進の課題について見ていきます。
タブレット端末1人1台を実現
タブレット端末を小学生1人につき1台配布することが実現しました。学校でのインターネット環境も整備され、多くの児童が毎日のようにタブレット端末を使用して学習しています。オンライン授業も盛んに行われ、コロナ禍での学習の遅れにも対応しています。デジタル教科書については、「視覚障害、発達障害等で通常の紙の教科書を使用して学習することが困難な児童生徒」は、全ての教育課程においてデジタル教科書の使用も可能です。
教育資源の不足、学校格差
2020年より小学校ではICT教育の一環としてプログラミング教育が必修化されましたが、全ての学校で十分に学べる状態ではありません。プログラミング教育は教科として独立しているわけではなく、既存の教科の中で学びますが、ITの専門家が学校に派遣されることもないのです。ICT教育は、各校の裁量に任されているため、教師のICTへの理解度、熟練度によって内容が異なってしまいがちです。
ICT教育のメリット・デメリット
ICTは小学校の教育現場にどのような影響をもたらすのか、メリットとデメリットをご紹介します。
ICT活用のメリット
ICT活用の大きなメリットは、児童が教室にいなくても授業に参加できる点です。先生の話を聞くだけではなく、意見を出したり、プレゼンテーションをしたりと主体的な学びも可能です。近年、不登校の児童生徒が増加し、オンライン授業への保護者からの期待も大きいです。また、幼い時からICTを活用する術を知ることで、子供たちの興味や可能性を広げられます。
ICT活用のデメリット
ICT機器の使い過ぎによる健康への影響、視力低下が心配されています。インターネットを日常的に使用するほどネットリテラシーを身につけていないと、トラブルに見舞われる可能性もあります。情報を広く伝える便利な技術を適切に使えるように指導していく必要もあります。
ICT教育のために家庭でできることの具体例
小学校のICT教育は試行錯誤の段階と言えます。ICTを活用する能力を育てるために、学校だけではなく、家庭でも子供たちにICTを学ぶ機会を増やしたい場合、どうすればよいのでしょうか。家庭でも手軽にできる取り組みをご紹介します。
インターネットでの情報収集
インターネット上には膨大な量の情報があり、子供たちも正しい情報を選び活用する能力が必要です。例えば、子供が社会の授業である地域について学習したら、インターネットでもより詳しい情報を探してみるよう促し、その際は子供に検索の方法を教えてあげましょう。また、子供がインターネットを安全に活用できるようにするために、ネットリテラシーについても指導しておくのがおすすめです。
プログラミングで遊ぶ
現在は、プログラミングやロボットの教室は多数ありますが、教室へ通わなくても遊び感覚で学べる子供用のプログラミングアプリもあります。子供が親しみやすいビジュアルで、分かりやすい動画の解説もありますから、1人でも学習を進められるでしょう。
オンラインスクールやワークショップで学ぶ
ICTはコミュニケーションの要素が大きいため、画面の向こうにいる相手ともスムーズにやり取りできるように、オンラインスクールやワークショップを体験するのもよいでしょう。オンラインでのやり取りは対面とは異なるので、そこでのルールを認識し、慣れる必要があります。
学校と家庭が連動して学びを支える
学校や学年によって取り組み方が異なるため、場合によっては、せっかくタブレット端末があるのに授業でほとんど使われている様子がないなど不満を感じる保護者も少なくないでしょう。そのため、学校とともに家庭でもデジタルツールを使った学びを取り入れていく必要があります。デジタルツールへの好奇心が強い子供は多いため、子供たちの興味を刺激し、才能を伸ばす学びの可能性が広がっています。