石油のでき方は?よく採れる場所や日本に届くまでの流れ

公開日: 2023/06/30

石油は工場などで使われるもので、自分の生活からは遠いイメージがあるかもしれません。しかし、実は皆さんが普段使っているものの多くは、石油からできています。ゲーム機や自転車などの部品も、元をたどると石油に行きつくでしょう。そこで、石油のでき方や日本に届くまでの流れ、活用方法について解説します。

目次
そもそも石油とは
身近なものから意外なものまで!石油の活用法
石油のでき方
石油が採れる国はどこ?
日本で使われている石油が届く道のりは?
いつか石油はなくなるの?
石油の代わりになる新しい燃料
便利な石油はほとんど輸入品!環境のためにも再生可能エネルギーの開発が必要

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そもそも石油とは

私たちの生活に欠かせない石油ですが、そもそもどんなものなのかよくわからない人も多いでしょう。石油の特徴や成分について解説します。

・石油の特徴

石油は化石燃料の1つです。化石燃料には、3つの状態があります。石油は化石燃料のなかでも液体状のものを指します。気体状のものは天然ガス、固体状のものは石炭です。

・石油の成分

石油の主成分は炭化水素です。炭化水素とは、炭素と水素が結びついた化合物で水に溶けにくい特徴があります。石油の採れる産地や油田によって化合物内に含まれている元素の比率は異なりますが、酸素・水素・硫黄・窒素(ちっそ)・酸素・金属などによって構成されています。

身近なものから意外なものまで!石油の活用法

石油はさまざまなものに加工されて、暮らしのなかで役立っています。身近なものから意外なものまで、石油の活用方法をご紹介します。

・燃料

石油のもととなる原油には、いろいろなものが混ざっています。不純物を取り除いたり成分を分けたりするために、蒸留という工程が必要です。

原油に熱を加えると、それぞれの物質が違う温度で気体になります。このように、物質が気体になる温度、沸点を利用すると混合物からその物質だけを取り出すことが可能です。蒸留を経ると、ガソリンや灯油、軽油といった種類の違う燃料を取り出せます。

・化学製品の原料

原油を蒸留すると、化学製品の原材料となるナフサという油を得られます。

原油から作られたナフサを分解することで、エチレンやプロピレン、ブタジエンといった化学製品のもとになる誘導品が生まれます。化学製品とは幅広く、ゴムやプラスチック、洗剤や塗料の原料などに活用されています。

・ゴム製品の原料

スチレンやブタジエンゴムといった合成ゴムの原料は石油から作られます。ゴム製品というと、植物由来の天然ゴムからできていると思っている人は多いでしょう。しかし、石油由来の合成ゴムは天然ゴムに比べると、耐久性に優れていて性能が安定しています。このため、自動車・自転車用のタイヤや日用品向けに重用されています。

・プラスチック製品の原料

プラスチックの原料になるポリエチレンやポリプロピレンも石油から作られます。プラスチック製品は、身近なところで使っている人が多いのではないでしょうか?クリアファイルやシャープペンシルなどの文房具から、ゲーム機や自動車の部品まで、さまざまなものにプラスチック製品は使われています。これらのプラスチック製品は、すべて石油から生まれています。

・洗剤の原料

合成洗剤の原料となる高級アルコールやアルキルベンゼンなどは石油から作られます。洗濯用や食器洗い用などさまざまな用途で使われる洗剤には、油汚れを落とすために界面活性剤が含まれています。界面活性剤は石油由来の成分です。洗濯用洗剤には、約30~40%の界面活性剤が配合されています。

石油のでき方

石油や天然ガス、石炭といった化石燃料は、大昔の生物の死がいが長い期間かけて地層内でエネルギー資源に変わったものだといわれています。具体的には、次のような流れで化石燃料が作られたと考えられています。

1. 生物の死がいが海底や湖底に堆積する
2. 生物の死がいを含む層が何重にも重なって地層を作る
3. バクテリアによって地層内の死がいが分解され、「ケロジェン」と呼ばれる有機化合物に変化する
4. ケロジェンが地熱と圧力によって、石油や天然ガスに変化する
5. 石油や天然ガスはが地層内のすき間からわき出し、たまりやすい場所に集まる

このようにして、油田やガス田が作られます。太古の生物の死がいが化石燃料になるまでに要する時間は、数百万年から数千万年といわれています。

石油が採れる国はどこ?

石油が採れる地域といえば、中東のイメージがあるかもしれません。しかし、石油のもとになる原油が採れる国はほかにもあります。2020年に1日当たりの原油生産量が多かった国をご紹介します。

・中東

中東は世界で供給される原油の約3分の1が採れる地域です。中東のペルシャ湾岸の国で多くの原油が採れます。具体的には、サウジアラビア・イラク・アラブ首長国連邦(UAE)・イランなどが有名です。

・北アメリカ

北米のアメリカ合衆国とカナダでも、原油は多く採れます。2020年の1日当たりの原油生産量では、1位がアメリカ合衆国、4位がカナダでした。とくにアメリカ合衆国は2010年以降原油の生産量を大きく増やしています。アメリカ合衆国で原油の生産量が増えたのは、シェールオイルという地中深くにある地層内に眠っていた原油を採掘できるように、新しい技術開発が進んだことが要因です。

・ロシア

ロシアも原油生産量が多い国です。2020年1日当たりの原油生産量のランキングでは3位になっています。ロシアで生産された原油は主にヨーロッパに輸出されていました。しかし、2022年3月から始まったロシアのウクライナ侵攻によって、EU諸国はロシアからの原油を輸入しないことを決めました。ウクライナ侵攻以降、ロシアは中国やインド向けに原油の輸出を増やしています。

・中国

東アジアでは、中国が原油生産量の多い国です。主に北東、北西の地域で原油が採掘されています。中国は原油消費量も多い国です。自国内での生産では足りないため、原油の輸入もしています。

日本で使われている石油が届く道のりは?

日本は石油がほとんど採れない国です。このため、日本で使用される石油の多くが、海外からの輸入されたものです。

石油が日本に運ばれるまでには、次のような工程を経ています。

1. 石油が採れそうな地層を探し、試しに掘ってみる
2. 石油を採取するために井戸を掘る
3. 採取した原油からガス・水・砂などを分離させる
4. 処理された原油は専用のタンカーで日本に運ばれる

日本に届いた原油は石油精製工場で処理されて、ガソリンやナフサ、重油といった油になります。そして、さまざまな製品の原料として化学工場などへ運ばれていきます。

・日本で使われている石油の大半は外国から来る

2023年4月に日本に輸入された原油量は1,369万klでした。輸入量の多い順に5カ国挙げると、以下の通りです。

 1位:アラブ首長国連邦(577万kl)
 2位:サウジアラビア(483万kl)
 3位:クウェート(122万kl)
 4位:カタール(85万kl)
 5位:アメリカ合衆国(29万kl)

このように、日本は中東からの輸入に原油を依存しています。

・日本で採れる石油もある!

日本は原油を海外からの輸入に依存していますが、国内でまったく採れないわけではありません。少量ですが、現在も採掘が続いている油田をご紹介します。
 北海道苫小牧市「勇払油ガス田」
 秋田県男鹿市「申川油田」
 新潟県胎内市「岩船沖油ガス田」

このように、日本国内でも石油や天然ガスが採れる場所があります。

いつか石油はなくなるの?

石油は限りある資源です。経済産業省が出した「令和3年度 エネルギーに関する年次報告」によると、2020年末時点の世界の石油埋蔵量から計算すると、石油はあと53.5年で枯渇するという結果でした。技術の進歩によって埋蔵されている石油が新しく発見されていますが、消費量が増えればもっと短い期間で枯渇する可能性もあります。

石油の代わりになる新しい燃料

いつかなくなるかもしれないだけでなく、石油には違う問題もあります。石油を燃やすと、たくさんの二酸化炭素が排出されることです。二酸化炭素が増えると、地球温暖化が進みます。環境のためにも、石油に代わる新しい燃料の開発が重要です。

・バイオ燃料

バイオ燃料とは、動物や植物から生まれる燃料のことです。バイオ燃料は生物が分解することで、安全に自然に戻ります。すでに活用されているバイオ燃料としては、以下のものがあります。
 トウモロコシやサトウキビから作られた「バイオエタノール」
 パーム油やナタネ油から作られた「バイオディーゼル」
 植物油や古紙から作られた「バイオジェット」
 生ごみや家畜のふん尿から作られた「バイオガス」

・合成燃料

合成燃料とは、二酸化炭素と水素を合成したものです。工場や発電所などから排出された二酸化炭素に水素を結びつけることで、ガソリンの代替品として使えるように研究開発が進められています。

将来的には、自動車はガソリンや軽油ではなく合成燃料で動くようになるかもしれません。

便利な石油はほとんど輸入品!環境のためにも再生可能エネルギーの開発が必要

石油は燃料やプラスチックなど身近にあるさまざまな製品の原料です。幅広い活用方法がある石油ですが、日本ではほとんど採れないので外国からの輸入に頼っています。このため、世界情勢が悪化すると、日本の石油化学産業は成り立たなくなるかもしれません。石油の使い過ぎは地球温暖化の原因にもなります。経済面や環境面を考えると、再生可能な新しい燃料の開発を急ぐ必要があるでしょう。

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