磁石はなぜくっつくの?仕組みとくっつく素材を知って実験をしよう!

公開日: 2022/12/27

みなさんは磁石にものをくっつけて遊んだことがありますか?クリップやはさみなどの小さいものから、冷蔵庫や洗濯機などの大きなものまで、身の回りには磁石にくっつくものがたくさんあります。また、磁石同士を近づけると、くっついたり、逆に反発したりして面白いですよね。

磁石にくっつかないものもあります。ノートやえんぴつ、消しゴムはどうでしょう。なぜ磁石にはくっつくものとくっつかないものがあるのでしょうか。 この記事では、磁石の持つ力の仕組みや、磁石を使ってできる実験を紹介します。

目次
磁石はなぜくっつくの?
磁石にくっつくものとくっつかないもの
磁石を使った実験をしてみよう!
磁石のくっつく力は、内部にあるたくさんの「小さな磁石」が向きをそろえて生まれる

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磁石はなぜくっつくの?

磁石には、ものに触れなくても引きつけたり遠ざけたりする力があります。この力を「磁力」といいます。

磁石には、S極とN極という2つの極があります。2つの極を「磁極(じきょく)」といいますが、磁極に近いところほど強い磁力を発生させています。2本の棒磁石を近づけていくと、S極とN極は引き合い、S極同士、N極同士は互いに反発します。磁石が引き合ったり反発したりするのも磁力のはたらきです。

磁力は、あらゆる物質を作っている「原子」の中にある「電子」の動きによって生まれます。物質をどんどん細かくしていくと、それ以上は分けられないものになります。これが原子です。原子の大きさは1000万分の1ミリメートル程ととても小さいものですから、目で見ることはできません。

原子の構造をみると、真ん中に原子核があり、その周りを電子という小さな粒子が飛び回っています。太陽の周りを地球が回っているようにイメージするとわかりやすいかもしれません。

電子は電気を帯びていて、電子が動くと磁力が生まれます。原子核の周りを回っているだけでは弱い磁力にしかなりませんが、電子自身が回転(「スピン」といいます)すると強い磁力が生まれます。

身の回りにある磁石はほとんどが人の手で作られたものですが、自然界には磁力を持った石があります。磁鉄鉱(じてっこう)という鉱物で、天然磁石と呼ばれています。公園などの砂場で磁石にくっつく砂「砂鉄」は磁鉄鉱からできています。

ところで、磁鉄鉱の中には磁石になっているものとそうではないものがあります。実は、自然の中でできたばかりの磁鉄鉱は磁石の性質を持たないのです。磁鉄鉱が磁石になるのは、地表に雷が落ちたときに電流が流れ、その電流が作る磁力の影響を受けたため、と考えられています。

磁石にくっつくものとくっつかないもの

磁石にくっつくものは、クリップやはさみなど、身の回りにたくさんあります。一方、ノートやえんぴつ、消しゴムなど、くっつかないものもたくさんありますね。同じはさみでも、刃の部分には磁石がくっつくのに、持ち手の部分(ハンドル)は磁石にくっつかない、というように、同じものでも場所によってくっつき方が違うこともあります。

ここでは、なぜ磁石にくっつくものとくっつかないものがあるのか、どんなものが磁石にくっつく(くっつかない)のかを説明します。

・くっつく力が強いもの

くっつく力が強いものの代表は鉄です。鉄でできたものは磁石によくくっつきます。身近にある中で磁石にくっつくものは、たいてい鉄が使われています。鉄のように、磁石にくっつく力が強いもののことを強磁性体といいます。

鉄の中には小さな磁石がいくつもあります。小さな磁石は、ふだんはばらばらの向きに並んでいて、磁石のようなくっつく力はありません。

鉄に磁石を近づけると、鉄の中の小さな磁石の並び方に変化が起きます。それまでばらばらの向きだった小さな磁石が、近づけた磁石の磁力に沿って同じ向きに並びます。例えば、磁石のN極を近づけると、近づけた側の鉄がS極になり、鉄と磁石が引きつけ合うようになるのです。磁石を離すと、鉄の中の小さな磁石の向きが再びばらばらになって、磁力はなくなります。

強磁性体には鉄のほかにもコバルトやニッケルなどがあります。これらの金属は磁石を作る原料になります。

・くっつかないもの

磁石にくっつかないのは、鉄のような強磁性体以外のものです。ですから、磁石にくっつかないものはたくさんあります。鉄と同じ金属でも金や銀、銅、アルミ(アルミニウム)、クロム、チタンなどは磁石にくっつきません。紙や木、プラスチック、水などもくっつかないものです。

でも、くっつかないものに磁力が全くないわけではありません。ただ磁力がとても弱いので、磁石にくっつくほどの力がないのです。

磁石にくっつかなくても磁力があるものを確かめる方法があります。
アクリル、プラスチック、アルミ、銅などの磁石にくっつかない素材の板を斜めに置いて、ネオジム磁石のような強力な磁石をその上ですべらせると、素材によってすべる速さが変わります。これは、磁石が動いているときに磁力がはたらいて電流を発生させるためです。

アクリルやプラスチックにはほとんど磁力がありませんが、アルミや銅などの金属は電気を通しやすい性質があるので磁力の影響を受けます。磁石がすべる速さの違いから、磁石がはたらく力を目で見ることができます。

くっつく力が弱いもの

複数の素材からできているものの中には、くっつく力が弱いものがあります。
鉄のようにくっつく力の強いものと、くっつかないものが混ざってできたものは、それぞれの素材の割合によってくっつく強さが変わります。例えばステンレスは200以上の種類がある合金鋼ですが、混ぜる金属の種類や割合によって、磁石にくっついたりくっつかなかったりします。

意外なものでは、お札も磁石にくっつきます。ただし、とても強力な磁石を使わないとくっつかないので、ふだんの生活の中で気がつく機会はなさそうですね。
お札は紙でできています。紙は磁石にくっつきませんが、お札の場合、偽造防止のために使われている特殊インクが磁石にくっつくのです。ネオジム磁石をいくつもつなげて、磁力を強力にしたものをお札に近づけると、お札が引き寄せられる様子を見ることができます。

また、磁石にくっつくものでも、形によってくっつく力が弱くなることがあります。例えば鉄でできたものでも、磁石をくっつける面がでこぼこしていたり、円柱のように曲がったりしているものはくっつく力が弱まります。

磁石を使った実験をしてみよう!

磁石を使って実験をしてみましょう。今回は、身近な素材でできる実験を3つ紹介します。

・シート型磁石と砂鉄を使って絵を描いてみよう

磁石に反応する砂鉄を使って絵を描いてみる実験を試してみましょう。

《必要なもの》
・ シート型磁石(マグネットシート)
・ 砂鉄
・ 画用紙
・ クレヨン、色えんぴつなど
・ はさみ(シート型磁石を切るときに使います)
・ セロテープなど(シート型磁石をはるときに使います)

《手順》
1.画用紙にクレヨンなどで絵を描きます。
2.画用紙を裏返し、絵の中の黒くしたい部分にあたるようにシート型磁石を切ってはります。
3.画用紙を表に返して、砂鉄をふりかけます。
4.画用紙を立てて、ふりかけた砂鉄を落とします。
5.黒くしたい部分に砂鉄が集まって絵が完成したら成功です。絵を描き加えたり、シート型磁石の位置や大きさを変えたりしていろいろな絵を作ってみましょう。

・磁石を使ってモーターを作ってみよう

磁気のエネルギーを使って、モーターを作ってみましょう。

《必要なもの》
・ 銅線(直径0.9ミリメートル)
・ ネオジム磁石(直径13ミリメートル)4個ぐらい (100円均一ショップなどで購入可能)
・ 単三アルカリ乾電池
・ スティックのり(銅線をまくために使います)
・ ビニールテープ
・ ラジオペンチ
・ カッターナイフ

《手順》
1.銅線のコイルを作ります。スティックのりのケースに、銅線をぐるぐると5回ぐらいまきつけるとできます。
2.銅線に軸(じく)を作ります。ラジオペンチで一方の先を折り曲げましょう。
3.電池に貼る「軸止め」を作ります。ビニールテープを4、5枚重ねて、カッターナイフで四角い小さな穴をあけます。穴の大きさは1.5ミリメートル×3ミリメートルぐらいです。ビニールテープは5ミリメートル×6ミリメートルぐらいのサイズに切ります。
4. 3で作った軸止め(穴をあけたビニールテープ)を乾電池のプラス側(出っ張りがある方)に貼ります。
5.ネオジム磁石を重ねて乾電池のマイナス側にくっつけます。
6.ネオジム磁石側を下にして電池を立てて、銅線のコイルをかぶせます。電池のプラス側にコイルの軸を乗せます。マイナス側のコイルの径を少し小さくします。
7.銅線を磁石に少し接触させて、回転したら成功です。

うまく回転しないときは、磁石と銅線の接触具合を変えて調節してみてください。また、ネオジム磁石の数を変えて、回転する様子の違いを観察してみましょう。

(注意)
ネオジム磁石は磁力が強いので取り扱いに注意しましょう
電池は発熱や破裂の危険があるので、必ずアルカリ電池を使いましょう

・磁石を使って一円玉を動かしてみよう

磁気の力を利用して、一円玉を動かす実験をしてみましょう。

《必要なもの》
・ 一円玉
・ 水を入れた容器(一円玉を浮かべます)
・ 磁石

《手順》
1.一円玉を水に浮かべます。
2.一円玉に磁石を近づけて動かします。
3.一円玉の動きを観察しましょう。

一円玉に磁石を近づけて動かすと、磁石の動く方向に一円玉が動きます。磁石を動かす向きやスピードを変えながら試してみましょう。強力な磁石を使うと一円玉の動きがわかりやすくなります。

水がなくても同じような実験ができます。テーブルなどの平らな面に一円玉を立てて、磁石を近づけたり遠ざけたりしてみましょう。

磁石のくっつく力は、内部にあるたくさんの「小さな磁石」が向きをそろえて生まれる

磁石のくっつく力は、内部にある小さな磁石が同じ方向に並ぶことで生まれる、ということがわかりました。磁力は直接目に見えないのでイメージしにくいですが、磁石を使った実験は身の回りにあるものでできるので、ぜひやってみてください。

磁石はいろいろな製品に使われ、暮らしの中で役に立っています。どこで使われているのか探したり、どのように使われているかを調べてみたりするのも面白いですよ。

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