氷に塩をかけると何が起こる?仕組みと挑戦したい2つの実験

公開日: 2022/10/31

みなさんは氷に塩をかけたことがあるでしょうか。普段はあまりやることがないかもしれませんが、たとえば夏の暑い時期、クーラーボックスに氷と飲み物を入れて持ち運ぶことがあります。

もしこのようなクーラーボックスを見かけたら、中に塩をふりかけてみてください。実は、氷に塩をかけると温度が下がって、飲み物を短時間で冷やすことができるのです。これには、氷と塩がそれぞれ持っている性質が関係しています。

今回は、氷に塩をかけると温度が下がる理由や、この現象を生かして身の回りで行われている習慣、ぜひ挑戦してみたい2つの科学実験のやり方などを解説します。

目次
氷に塩をかけるとどうなる?
氷に塩をかけると温度が下がる理由
氷と塩を使ってアイスクリームを作ってみよう
塩を使って氷を糸で釣ってみよう
身近なものから科学に興味を持とう

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氷に塩をかけるとどうなる?

氷に塩をかけると、氷が溶けやすくなります。実はここで、氷が溶けるために必要なエネルギーが氷から奪われ、結果として氷がよりはやく溶ける現象が起きているのです。この現象には、「融解熱(ゆうかいねつ)」と「凝固点(ぎょうこてん)」、「溶解熱(ようかいねつ)」といった要素が密接にかかわっています。

氷に塩をかけると温度が下がる理由

氷に塩をかけると温度下がるのには当然理由があります。ここでは、「融解熱)」と「凝固点」、「溶解熱」の3つの原理と共にその理由を説明します。

・融解熱の原理

そもそも氷には、溶ける(融解する)ときに周囲の熱を奪う(吸熱する)性質があり、これは「融解熱」と呼ばれています。たとえば、口の中で氷を溶かしたときに口の中が冷たくなるのは、融解熱によって口の中の熱が奪われるためです。

氷は通常、0℃で徐々に溶けはじめますが、塩は、氷の溶ける速度を早めるという性質を持っています。氷が早く溶けるということは、まわりの熱を奪う速度もそれだけ速くなるということです。すると、氷が溶けたあとの塩水が0℃よりも低い温度になってしまうという現象が起きます。

・凝固点の原理

ここで「水が0℃より低くなるのはおかしい」と疑問に思った人も多いのではないでしょうか。これには先ほど紹介した「凝固点」が関係しています。凝固点は融点ともいい、物体が液体から固体、もしくは固体から液体に変わるときの温度を指します。水が氷に変わり、氷が水に変わるのは通常0℃です。

ところが、塩水が凍るのは0℃より低いマイナス温度のときなのです。気温が0℃を下回っても海水が完全に凍りつかないのは、この性質が関係しています。海水は-1.8℃程度で凍り始め、濃度の濃い食塩水が凍るのはなんと-5℃よりも下がることもあるのです。このように、液体に物質を溶かすことで凝固点が溶かす前の液体の温度より低くなる現象を「凝固点降下」と呼びます。

凝固点が水よりも低い塩水の性質をうまく利用した風習があります。北国では、雪が降ったときに地面に塩をまきます。その理由は「水が凍る温度を下げることによって、路面の凍結を防ぐため」なのです。まさに凝固点の性質を応用した仕組みだといえるでしょう。

・溶解熱の原理

氷に塩をかけると温度が下がる理由はもうひとつあります。それは「溶解熱」です。溶解熱とは、「個体が液体に溶けるときに発生する熱量」です。ここでいう「熱量」は、液体の温度を下げることも、上げることもあります。食塩が氷に溶けるときには、熱量が氷の熱を奪って吸熱します。なお、食塩以外の個体が液体に溶ける場合には、逆に熱を与えて発熱することもあるので、一緒に覚えておくとよいでしょう。

この溶解熱により、氷に塩をかけて塩が溶けようとするときに吸熱することから、融解熱と相まって2種類の熱でさらに温度が下がっていくわけです。

・「原子」「分子」とは?凝固点との関係

みなさんは「原子」や「分子」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。世の中のあらゆる物質は原子でできています。水も氷も食塩も、人間の体も原子からできているのです。原子には「水素」や「酸素」、「炭素」などがあります。

さらに、いくつかの原子がまとまってできたものを「分子」と呼び、たとえば水分子は水素原子がふたつと酸素原子がひとつ組み合わさってできています。分子が並んでできたものが物質なのですが、水と氷では分子の並び方が異なり、液体がかたまって個体になった氷では、水と比べて分子が規則正しく並んでいます。

逆に、分子が整列しにくくなっている状態では、水はなかなか氷になれません。水に食塩をくわえると水の分子が塩の分子によって規則正しく並べなくなり、氷になるまで時間がかかります。これが、凝固点降下が起きる理由です。

氷と塩を使ってアイスクリームを作ってみよう

氷に塩をかけて温度が下がる性質を利用して、アイスクリームを作ってみましょう。

《用意するもの》
・ 生クリーム200ミリリットル
・ グラニュー糖30グラム
・ バニラエッセンス少々
・ 氷1キロ
・ 塩300グラム
・ ボウル(大小2種類)

・泡立て器
《作り方》
1. 大きいほうのボウルに、氷と塩を入れます。
2. 小さいほうのボウルには、生クリームとグラニュー糖、バニラエッセンスを入れます。
3. 大きいほうのボウルに小さいほうのボウルを重ねて、2の材料を泡立て器で混ぜます。

大きいほうのボウルに入れた氷と塩によって、小さいほうのボウルに入れた材料が、まるで冷凍庫に入れたときのように冷えていきます。これが徐々にかたまって、やがてアイスクリームができるという仕組みです。夏休みの自由研究テーマにする場合は、生クリームのかわりにジュースやヨーグルトを使ったらどうなるか(その場合、グラニュー糖とバニラエッセンスは使いません)などの応用例にもチャレンジしてみましょう。

塩を使って氷を糸で釣ってみよう

簡単にできる実験をもうひとつご紹介します。糸を使って、氷を釣る実験です。

《用意するもの》
・氷
・塩
・コップ
・糸(コップの高さより長いものがよいでしょう)

《実験の手順》
1. コップに冷たい水を張り、氷を浮かべます。
2. 氷の上に糸をたらします。この段階では、糸で氷は釣れないはずです。
3. 糸を氷にたらしたまま、氷に塩をふりかけます。
4. そのまま30秒おきます。
5. ゆっくりと糸を引き上げてみましょう。

氷の上に塩をかけると温度が下がることを詳しく学ぶことができる実験です。まず、氷に塩をかけてその部分の氷が溶けると、「融解熱」でまわりの熱が奪われ、温度が下がります。また、塩が水に溶けて「溶解熱」の性質によって温度がさらに下がるのです。すると、氷水を吸った糸が凍って氷にくっつき、氷が釣れるようになります。

身近なものから科学に興味を持とう

普段から何気なく目にしている氷に塩をかけるだけでこれほど不思議な現象が起きるとは、ほとんどの人が知らなかったのではないでしょうか。今回の実験に限らず、生活の中で「どうしてこうなるんだろう?」という疑問を持ってみることは、科学を好きになる最初の一歩です。日常的にアンテナを張りめぐらせてみてくださいね。

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