水で実験!表面張力の働きとは?親子で取り組みたい自由研究

公開日: 2019/08/09

コップに水を注いで満タンにすると、コップの表面に水が盛り上がります。また、朝早く起きて庭や道端の草花を見ると、葉っぱに丸い水滴がついていますね。これらは「表面張力」によるものです。表面張力という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、その仕組みについては知っていますか?今回は、表面張力の仕組みや、身の回りで見られる表面張力がどのようにして起きるのか、科学実験のやり方などを説明します。

目次
表面張力とは
表面張力を利用している身近なもの
表面張力の働きを水で実験してみよう!
水で手軽にできる自由研究で科学に興味を持つきっかけに

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表面張力とは

表面張力の意味

異なる物質同士が隣り合っているとき、その境目のことを「界面」といいます。「液体の表面をなるべく小さくしようとして表面に働く力」のことを「界面張力」といい、特に水と気体の間で起きる界面張力を「表面張力」と呼びます。

表面張力の原理

一般的に、分子と分子の間には引き合う力(分子間力)が存在していて、お互いに離れないように引っ張り合っています。水が凍っているときは、分子と分子が規則正しく整列して密度が高い状態なので、分子同士の距離が近く、お互いを引き合う力も十分に強く働いています。ところが、温度が高くなってくると水分子は激しく運動をし始め、移動しながら分子同士のすき間を広げていきます。すると、水分子は自由に動き回れるようになるため、水として形を変えることができるようになります。これが液体の状態ですね。

このとき、水の中の水分子はどのような動きをしているのでしょうか?
まず、水分子同士がたくさんくっつき合っているところをイメージしてみましょう。内側の水分子は、自分の周りにもたくさんの水分子がいて、お互いに引っ張り合っているため安定しています。例えば、綱引きをしていたとして、同じ力で反対方向に向かって引き合っているとき、綱の中心は移動しません。この状態と同じで、水の内側の分子はお互いに引っ張り合って作用する力が等しいため、移動せずに安定しています。
では、水の表面はどうなっているでしょうか?一番表面にいる水分子の外側にはほかの水分子がいません。そのため、隣同士か水の内側にいる水分子に引っ張られる力だけが働くことになります。外側に引っ張る力はありませんので、内側だけに引っ張られることになり、内側へ内側へと移動しようとして不安定な状態になります。

また、液体は不安定な状態からより安定した状態になろうとする性質もあるため、水分子は安定している水滴の内側の方へ移動しようとして、小さく縮んでいきます。水の体積は変わりませんので、表面積を一番小さな形にしようとして水分子が移動していくと、もっとも小さい表面積となるのが球形なのです。だから、水滴は球のような形をしているのですね。
ちなみに、重力の影響がない宇宙空間で水滴を作ると、表面張力のために完全な球形となります。

水滴が球形にならない現象とは

水は、どんな条件でも球形になるわけではありません。例えば、布や紙の上に水滴を垂らすと球形にならずに吸い込まれてしまいます。また、液体の種類によっても表面張力の強さには違いがあります。

このように液体が球形になりやすい、なりにくいという違いを「濡れ」という言葉で表し、球形になりやすい状態を「濡れにくい」「はじく」、球形になりにくい状態を「濡れやすい」「はじかない」などと表現します。

この「濡れ」の程度を客観的に判断するために、「接触角」を使います。例えば、お皿の上やフッ素樹脂加工されたフライパンの上に同じ量の水を垂らすと、お皿の上の水滴は広がり、フライパンの上の水滴は球形に近くなります。この水滴を横から見たときに、固体表面(この場合にはお皿とフライパン)を基準として水滴の輪郭が交差する角度を接触角といいます。お皿の水滴は盛り上がりが緩やかで角度は小さく、フライパンの水滴は盛り上がりが急で角度は大きいですね。このように、接触角が小さいときは「濡れやすい」、大きいときは「濡れにくい」と判断します。

表面張力を利用している身近なもの

シャボン玉

ストローの先に水滴をつけてふいてもふくらみませんが、水に洗剤を入れるとシャボン玉になります。これは、洗剤に含まれている界面活性剤が水の表面張力を弱めるためです。それでも液体には表面張力が働いているので、どんな形のストローでシャボン玉を作っても必ず球形になります。

石鹸やシャンプー

身体や洋服についた汚れを落とすとき、水だけではなかなか落ちないのに石鹸やシャンプーを使うとよく落ちるのはなぜでしょうか?水だけで濡らした場合、表面張力のために水がしみこみにくく、汚れの上を流れるだけになってしまいます。石鹸やシャンプーに含まれる界面活性剤が表面張力を弱め、しみこみやすくして汚れを落としてくれるのです。

アメンボ

池の表面をスイスイ移動するアメンボを見たことがありますか?アメンボが沈まずに移動できるのも表面張力のためです。アメンボの足には油分を持った毛が生えています。水と油は交じりませんから、アメンボの足は水をはじき濡れることはありません。アメンボが水面に乗ると、アメンボの体重の分だけ水面は沈みますが、表面張力の働く水分子は元の形に戻ろうとしてアメンボを上に押し上げます。こうしてアメンボは水面に浮いていられるというわけなのです。

撥水加工

撥水加工をしてある物体の上では、水は水滴となってしみこみません。これは、表面張力を強くする加工を施すことによって、水をはじきやすくしているのです。また、表面張力は液体の種類や添加物によっても変わります。そのため、撥水加工をしてある布であったとしても、水ははじくけれどジュースはしみてしまうということもあります。

表面張力の働きを水で実験してみよう!

準備するもの

ペットボトル
ふるい

たらい

実験の手順

1.ペットボトルに水を入れる
2.ペットボトルの口にふるいを乗せる
3.たらいの上で(2)の状態のままペットボトルを逆さまにする

「ペットボトルの水がこぼれる!」と思ったら、こぼれませんでしたよね。なぜでしょうか?

ペットボトルを逆さまにすると、中の水は重力に従って下の方に向かって落ちてきます。このとき、ふるいの網目の部分では表面張力が水をペットボトルの中に引っ張り上げようとします。また、私たちの周りにある空気は、その重さによって地球上のものを押す力があります。これを「大気圧」といい、上からだけではなくどの方向からも押しています。ペットボトルも下から大気圧に押されています。

つまり、ペットボトルから落ちようとする水の重さよりも、上に引っ張り上げる表面張力と下から押す大気圧をあわせた力の方が大きくなったので、水はこぼれ落ちなかったのです。

自由研究をするときには、ペットボトルではなくコップにしたらどうなるか、水の量を変えたり、水ではなくジュースやエタノールなどの液体に変えたりしたらどうなるかなど、パターンを変えて比べてみてもよいでしょう。

参考動画

この実験の手順などを動画で確認することができます。実験の前に確認しておくとスムーズに進めることができるのでオススメです。

水で手軽にできる自由研究で科学に興味を持つきっかけに

水とご家庭にある道具だけで立派な自由研究になる表面張力の実験。普段何気なく使っている「水」にそんな力があるなんてお子さんもびっくりするでしょう。身近なものや現象には、科学に興味を持つきっかけになるようなことがたくさんあります。まずは取り組んでみて、なぜなのだろう、と調べることが大切です。夏休みにぜひ親子で取り組んでみてくださいね。

参照:
宇宙航空研究開発機構 宇宙研究センター 『表面張力の不思議を体験しよう! -表面張力のおもしろ実験-』
http://www.yac-j.com/labo/list/pdf/5.Experiment/5-16.pdf

大阪教育大学 実践学校教育講座 『水の力~表面張力~』
https://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~masako/exp/jolly/jolly.htm


日本ガイシ株式会社 『過程でできる科学実験シリーズ NGKサイエンスサイト 【表面張力】水面のふしぎな力』
https://site.ngk.co.jp/lab/no96/

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