てこの装置を作って実験!小さな力で大きなものを動かす仕組みとは?

公開日: 2019/08/09

爪切りやはさみ、スコップ。日常的に見かけたり使ったりするこれらの道具には、ある共通の仕組みが利用されています。それが、「てこの原理」です。この仕組みを利用している道具は身近にたくさんあり、私たちは気が付かないうちに使っているのです。今回は、この「てこ」を使った装置を作って実験する方法をご紹介します。てこの仕組みとはどんなものなのか、仕組みを利用してどんなことができるのか、実験を通して確認していきましょう。

目次
「てこ」ってなんのこと?
身近にある「てこの原理」を利用した道具
てこのつり合いを調べる実験の方法
参考動画
てこの実験を通じてお子さんの視点を広げるチャンスに

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「てこ」ってなんのこと?

「てこ」とは

固い棒状のものを使って、より小さな力で大きなものや重たいものを持ち上げる仕組みのことをいいます。この仕組みを使えば、重たい車でも人の力で簡単に持ち上げることができます。

てこの原理

てこは1本の棒ですが、その中には次の3つの点があります。

支点…てこを支えて棒が傾くときに中心になる点
力点…てこに力を加える点
作用点…てこの力が働く点

わかりやすいように、「てこの原理」を使って重たい岩を持ち上げる様子をイメージしてみましょう。出てくるものは岩と石と棒です。岩から少し離して小さめの石を置いて棒を岩の下に差し込んだら、石を支えにして棒を押し下げ、岩を持ち上げます。このとき、岩を持ち上げるために棒を押した場所を力点、棒を支えるために置いた石を支点、てこの力で持ち上がる岩が作用点です。

このように、力点に力をかけると支点を中心として棒は回転し、作用点にあるものを動かします。これが「てこの原理」です。

てこの原理とつり合い

小学校の理科では、てこの働きとともに「つり合い」についても学習します。天秤の左右の重さを変えたり、支点からのおもりの位置を変えたりして実験した記憶のある人も多いでしょう。つり合いは、てこの原理を理解する上でのポイントになりますので、もう少し詳しく説明しましょう。

てこがつり合っているとき、てこの回転は静止しています。なぜ静止しているのかというと、支点を中心として回転する力の大きさが等しいからです。この状態を式で表すと、次のようになります。

(作用点の重さ)×(支点から作用点の長さ)=(力点に加えた力)×(支点から力点の長さ)

ここで、先ほどの岩を持ち上げるためのてこの仕組みをもう一度イメージしてみましょう。岩が持ち上がって静止しているときは、支点を中心とした回転する力の大きさが等しいということになります。式で確認してみると、作用点である岩を力点に軽い力を加えただけで持ち上げられたことから、支点から作用点の長さより支点から力点の長さの方が長いことがわかります。

てこを使った実験でわかること

てこを使った実験を通して、次のようなことを理解することが目標です。実験をする際には、何を、どう変えると、結果がどうなるか予想をしながら進めましょう。

水平につり合った棒の支点から等間隔でおもりをつけてつり合ったとき、左右の重さが同じであること。
支点から作用点や力点までの距離を変えるとバランスをとるために必要なおもりの重さが変わること。
棒のバランスを水平に保つためには、力点、支点、作用点の関係に規則性があること。

身近にある「てこの原理」を利用した道具

てこの原理の仕組みを使っている道具には、必ず力点、支点、作用点があります。また、この3つの点は必ずしも同じ順番に並んでいません。身近な道具の中から、てこの原理を使っている道具を見つけて、3つの点がどこにあるのか考えてまとめてみても、立派な自由研究になりますよ。いくつか例を挙げてみます。

はさみ

指を引っ掛けて動かす部分が力点、はさみの中心部分が支点、紙をはさんで切る部分が作用点です。力点→支点→作用点と並んでいるので、岩を持ち上げるためのてこの仕組みと同じです。支点から作用点までは短い距離の方が、力が大きくなるため、紙を切るときはより支点に近い部分で切ると楽に切ることができます。

スコップ

手で持つ柄の部分が力点、地面に刺して地表で支えるスコップの背の部分が支点、スコップの先の土を持ち上げる部分が作用点です。これもはさみと同じで、岩を持ち上げるためのてこの仕組みと同じですね。

ピンセットや毛抜き

手でつまむ部分が力点、ピンセットや毛抜きのV字の閉じている部分が支点、物をつまむ方が作用点です。支点→力点→作用点という並び順になっています。このように、てこの原理の3つの点は必ずしも同じ順番に並んでいるわけではありません。

栓抜き

栓抜きは、手で握る柄の部分が力点、栓に引っ掛けて持ち上げる部分が作用点です。支点は少しわかりにくいのですが、柄を持ち上げていったときに最後に栓を押さえるようにして触る部分になります。

自転車のギア

自転車のギアもてこの原理を利用した仕組みです。ギアチェンジのできる自転車の場合には、ギアを切り替えるとチェーンのかかるギアの大きさが変わります。坂道を登るときは、大きなギアと小さなギアのどちらにすると楽でしょうか?自転車は、ペダルが力点、ペダルの軸の中心が支点、ギアにチェーンがかかっているところが作用点です。小さなギアにすると、支点から作用点までの距離が短くなり、力点にかける力は小さく済むため、坂道などでも楽に登ることができるのです。

爪切り

爪切りはちょっとだけ複雑になります。爪切りを横から見てみましょう。すると、ピンセットと栓抜きを合体させたような形をしていることがわかります。つまり、栓抜きの仕組みで作用点になる部分が、ピンセットの力点になるように二つを組み合わせた仕組みになっているのです。このように、一つの道具でもてこの原理が複数組み合わさっている場合もあります。

てこのつり合いを調べる実験の方法

・必要な道具
厚紙
はさみ
定規
ボールペン
カッター
ペットボトル(1.5~2リットル程度)
千枚通し

竹ひご
目玉クリップ
タコ糸
ダブルクリップ

実験の手順

まずは実験用のてこ装置を手作りし、実験をしていきましょう。


(てこの棒を作る)
1.厚紙をタテ3cmヨコ38cmに細長く切る
2.(1)で切った紙の端から19cmの場所(紙の長辺の中心)にボールペンで目盛りとなるしるしをつける
3.(2)でしるしをつけた場所から3cmごとにしるしをつけて、両端は1cmずつ残す
4.しるしには中心から順番に1~6まで番号を振り、少しだけ厚紙に切り込みを入る

(てこの台を作る)
5.ペットボトルの前と後ろに、それぞれ底から24cmの位置にしるしをつける
6.しるしをつけた部分を千枚通しで穴をあける
7.ペットボトルの半分くらいの水を入れる
8.(6)であけた穴に竹ひごを通す

(てこを組み立てる)
9.てこの棒の真ん中を目玉クリップではさみ、目玉クリップの穴に竹ひごを通す(棒がまっすぐになるようにクリップではさむ場所を調整する)

(おもりを作る)
10.15cm程度に切ったタコ糸をダブルクリップに結びつける(必要な分だけ作る)

(実験1)てこをつり合わせてみよう
てこの棒の、左右の目盛り1にクリップのおもりを1個ずつつけてみると、棒がまっすぐにつり合います。左右で同じように目盛りの位置を変えても、棒はつり合います。これは支点からおもりまでの距離が同じためです。

(実験2)片方のおもりの場所を変えてみよう
左右どちらかのおもりの、目盛りの位置を変えてみましょう。例えば、右の目盛りが3だった場合に左の目盛りを1にすると、棒は右に傾きます。今度は左の目盛りを5にすると、棒は左に傾きます。これは、てこの左右のおもりが同じ重さだったとき、回転する力の大きさは支点からの距離が長い方が大きくなるためです。

(実験3)片方のおもりの数を変えてみよう
右の棒にはおもり2個、左の棒にはおもり1個をそれぞれ目盛り3の位置につけます。すると、棒は右に傾きます。おもりの多い方が、てこの回転する力が大きくなるためです。

(実験4)もう一度おもりの位置を変えてみよう
右の棒にはおもり2個を目盛り3につけたまま、左の棒につけたおもり1個を目盛り6に移動してみましょう。すると、棒はつり合うようになります。おもりの数が違っていても、支点からの距離を変えることによって、てこの回転する力が等しくなったためです。

参考動画

次の動画では、ここでご紹介した実験の手順を確認することができます。先に動画を見てから実験をすると、イメージがしやすく、スムーズに作業を行うことができますよ。

てこの実験を通じてお子さんの視点を広げるチャンスに

科学実験を通じ、今まで意識していなかった身近な道具を新たな視点で見ることで、ものの見方や考え方の幅を広げることにつながります。てこの実験にはさまざまな実験方法があるので、複数の実験を行って結果をまとめると、充実した自由研究になります。また、身近なものに利用されている「てこの原理」について調べてみてもよいでしょう。ぜひ取り組んでみてください。

参照:
NHK for School てこのはたらき
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/outline.cgi?das_id=D0005110253_00000

佐賀県教育センター 小6てこ指導案
http://www.saga-ed.jp/chouken/rikasaport/2223kenkyu/documents/sidoan6-3.pdf

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