アクティブラーニングとは?家庭で子どもと実践するときのポイント
公開日: 2020/01/15
「アクティブラーニング」という言葉を聞いたことがある人もいることでしょう。アクティブラーニングとは、学校の授業において、講義を一方的に受けるのではなく、生徒が能動的・主体的に関わることにより、学習内容の深い理解を目指すものです。文部科学省により推進され、すでに多くの小・中・高校において実践がスタートしています。この記事では、アクティブラーニングの概要、学校への導入事例、およびアクティブラーニングを家庭で実践する際のポイントについてご紹介します。
アクティブラーニングとは?
それでは最初に、アクティブラーニングとはどのようなことなのか、その定義や、文部科学省がアクティブラーニングを推進する理由、アクティブラーニングの内容と子どもへの効果を見てみましょう。
アクティブラーニングの定義
アクティブラーニング(Active Learning)の、「アクティブ」とは「能動的」、「ラーニング」は「学習」の意味となります。一般に「能動的学習」と訳されます。アクティブラーニングの定義は、文部科学省によれば以下のものとされています。
「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブラーニングの方法である」出典:文部科学省『平成24年8月28日中央審議会答申 用語集』https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2012/10/04/1325048_3.pdf
これまでの学校での授業は、先生が一方的に講義する形式が一般的でした。それにたいしてアクティブラーニングは、学生たちが能動的、主体的に授業に参加し、グループ・ディスカッションやディベート、グループ・ワークなどを行います。それにより、知識の習得にとどまらず、認知力や倫理力、社会的能力、教養などを養うことを目的としています。
文部科学省もアクティブラーニングを推進
アクティブラーニングは、2012年に、文部科学省の中央教育審議会が、答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」において、大学教育への導入を提唱したことがきっかけで注目を集めるようになりました。つづいて2014年、やはり中央審議会の答申において、高等教育への導入も提唱されます。さらに、文部科学大臣が、アクティブラーニングの小・中学校への導入を諮問。その結果、2017年の学習指導要領は、「主体的・対話的で深い学び」との表現で、アクティブラーニングが盛り込まれたものとなっています。このように文部科学省がアクティブラーニングを推進する理由として、時代が大きく変化したことがあげられます。戦後の高度成長期において、日本は、工業製品の普及品を大量生産することにより大きな発展を遂げました。普及品の大量生産をするためには、すでにある海外の製品を十分に理解したうえで、それをいかに安く、そして早く作れるかが勝負となります。しかし、近年では、普及品の大量生産については、労働賃金の安い中国やインドなどに追い抜かれ、さらには引き離されている状況です。日本がこれから、さらなる発展をしていくためには、日本固有の付加価値を有する新たな製品やサービス、システムを「創出」していくことが求められている状況です。そのような時代においては、新たな創出を担うことができる「人材」の育成が不可欠です。そのような人材育成のための手段として、アクティブラーニングは位置づけられ、推進されているところです。
アクティブラーニングの内容と子どもへの効果
アクティブラーニングの具体的な内容として、グループ・ディスカッションやディベート、グループ・トークなどが代表的なものとしてあげられます。また、生徒である子どもたちへの効果として、以下のようなものがあるとされています。・これまで持っていた知識や経験に、考えを関連づけることができるようになる・パターンや重要な原理を探せるようになる・根拠をもち、それを結論に関連づけることができるようになる・論理や議論を注意深く、そして批判的に検討することができるようになる・学びながら成長していることを自覚的に理解することができるようになる
教育機関でのアクティブラーニングの導入事例
小・中・高校の教育機関で、アクティブラーニングがどのように導入されているのか、その具体的な事例を見てみましょう。
小学校での事例
・由利本荘市立西目小学校 1年国語「くらべよう しらせよう」*導入の目的・背景生徒の学習意欲が熟成されることを目的に、アクティブラーニングを導入している。*実施内容動物の赤ちゃんについて説明されている文章や図鑑などを読み、大事な言葉や文を書き抜き、「赤ちゃんずかん」としてまとめていく。
・岐阜大学教育学部附属小学校 5年音楽「世界の音楽 こんにちは」*導入の目的・背景「仲間と共に、新しい価値を創り出す児童の育成~主体的・協働的な学びと自己の学びを省察する児童」として、アクティブラーニングを研究・実践している。*実施内容各国の音楽を聴いたあと、グループに分かれて木琴で、自分たちのイメージに合ったオリジナルの旋律を作る。
中学校での事例
・彦根市立中央中学校 1年数学「文字の式」*導入の目的・背景年間3回の全校授業研究会を行うなどして、学習方法の改善についての取り組みを行っている。*実施内容一次式計算問題の解答の間違いにたいし、間違いを起こさないためのアドバイスを、グループで対話しながら考える。
・三次市立塩町中学校 2年外国語「素敵な塩町中、動画で紹介」*導入の目的・背景「情報活用能力」や「将来設計能力」「人間関係形成力」など、育成を目指す9つの資質・能力を定めて授業改善に取り組む小中一貫教育校。*実施内容インドの学校間交流校に向け、グループごとに学校紹介ビデオを企画・制作する。
高校での事例
・福岡県立北筑高等学校 1年理科「第1篇:生命の科学 第2章:微生物とその利用」*導入の目的・背景素直で明るい生徒の良さを生かしつつ、思考力、判断力と表現力を向上させ、自分の考えを論理的に説明できるようにするために、アクティブラーニングを取り入れた。*実施内容導入で「質問づくり」をすることにより、教科への興味・関心を喚起し、その後のグループ学習や発表により、他者に論理的に説明できる力を育成する。
・徳島県立城ノ内高等学校 3年地理歴史「歴史を論述する~地域から歴史を考え、歴史から地域を考える~」*導入の目的・背景「高い志をもって社会の平和と発展に貢献できる人材の育成」を目指す中高一貫教育校。*実施内容学校所在地の歴史をテーマとし、グループごとに資料を調べ、模造紙にまとめてプレゼンテーションする。
アクティブラーニングを家庭で実施するときのポイント
アクティブラーニングは、家庭でも実践することができます。実践するときのポイントについて見てみましょう。
勉強する理由や目的を子どもと一緒に考える
アクティブラーニングにおいては、学習内容についての動機を喚起し、子どもの学習意欲を高めることが重要とされています。家庭では、勉強する理由や目的を子どもと一緒に考えることが、動機づけにたいして有効でしょう。
勉強後には子どもと会話する時間を設ける
習得した知識を実際に活用し、問題の解決を試みることが、アクティブラーニングの効果を高めるとされています。そのためには家庭では、学校での勉強や宿題が終わったら、勉強の内容について子どもと会話する時間を設けることが重要だといえるでしょう。
子どもが自分の意見を持てるようにサポートする
アクティブラーニングは、自分が獲得した説明モデルの妥当性と有効性を批評的に評価することが一つの目標とされています。家庭では、子どもが自分の意見を持てるよう、サポートすることが必要になるでしょう。
家庭でアクティブラーニングを実践し、能動的に学習する子どもを育てよう
アクティブラーニングの学校教育への導入は、大きな教育改革であるといえます。単に知識を受動的に記憶する子どもではなく、学習に能動的に関わることにより、深く考え、自分の意見を持てるようになる子どもを育成することが問われています。その際に、家庭の役割は、決して小さくはないでしょう。子どもと一緒に親も学びながら、日本のこれからの発展に関わっていきましょう。
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