ペンギンは鳥なのになぜ飛べない?飛ばなくなった理由とは

公開日: 2023/03/30

上手に泳ぐペンギンを見て「なぜペンギンは飛べないのに鳥の仲間なのだろう?」と、思ったことはありませんか。大昔、ペンギンの祖先はほかの鳥と同じように、空を飛んでいたといわれています。しかし、進化の過程でペンギンは飛ぶことをやめて、海を泳ぐのに向いている現在の体つきになったようです。なぜペンギンは飛べない鳥になったのか、その理由やペンギンの特異な生態を解説します。

目次
飛べない鳥、ペンギンの体はほかの鳥類とは違う構造になっている!
ペンギンが鳥だけど飛べない理由!なぜ飛ばなくなったのか
飛ばない代わりに泳ぎが得意になった!
飛べないほかの鳥類
ペンギンは環境に適用して泳ぐことを選んだ鳥!

飛べない鳥、ペンギンの体はほかの鳥類とは違う構造になっている!

ペンギンの仲間は全部で18種類いますが、そのなかに飛べるものはいません。しかし、ペンギンの祖先は、現在のカモのように、空を飛んだり水面に浮かんだりしながら、海中のエサを捕っていたのではないかと考えられています。自然環境を生き抜くうえで、ペンギンは鳥類の特徴を残しながら、泳ぐことに特化した体に進化したのでしょう。

・体は重く翼は小さい

ペンギンをよく見てみると、ほかの鳥と比較して体が大きく翼は小さいことがわかるでしょう。実は体重も、ほかの鳥類よりもペンギンのほうが重くなっています。一般的に、鳥は骨が細く空洞になっていて、体重が軽いのが特徴です。軽い体と大きな翼で、空を飛べる仕組みになっています。

一方、ペンギンは海中を泳げるように骨が丈夫で、中身がしっかり詰まっています。また、泳ぐのに邪魔な大きな翼は、ヒレのような形のフリッパーになりました。大きくて重い体は飛ぶのに向いていませんが、泳ぐときは力を発揮できます。

・かつて飛んでいた証拠も残っている

現在のペンギンの姿を見ると鳥の仲間だと思えないかもしれませんが、体の構造に鳥類である証拠が残っています。空を飛んでいる鳥と同じように、胸筋を支える「竜骨突起(りゅうこつとっき)」や尾羽を支える「尾椎骨(びついこつ)」がペンギンにも付いています。

また、小脳が高度に発達している点も、ほかの鳥類と同じです。空を飛ぶ鳥は小脳を飛行の調整に使っていますが、ペンギンは泳ぐ能力の調整に使用しています。

ペンギンが鳥だけど飛べない理由!なぜ飛ばなくなったのか

ペンギンが飛べない鳥になった理由は、ペンギンの生息環境にあると考えられています。ペンギンが飛ぶ能力を失い、泳ぐ能力を身につけた理由を確認してみましょう。

・陸上でペンギンを襲う敵がほとんどいないから

ペンギンが生息している南半球には陸地が少なく、陸上でペンギンを襲う敵がほとんどいません。陸上でペンギンを襲う数少ない天敵はアザラシです。しかし、ペンギンが海の中に逃げてしまえば、アザラシは追ってくることができません。このように、ペンギンはほかの鳥と違って、敵から逃れるために空を飛ぶ必要がなくなりました。

鳥は難なく飛んでいるように見えますが、重力に逆らって飛ぶためにはかなりのエネルギーが必要です。無駄なエネルギーを使わないで済むなら、そのほうが動物にとって都合がよいのでしょう。ペンギンは飛ぶことをやめて、エネルギーを節約できるように進化したともいえます。

・ペンギンのエサは海中にあるから

ペンギンのエサは、オキアミやイワシ、イカなど海の生き物。海の中にはエサが豊富にあるので、空を飛ぶよりも海の中に潜れるほうがペンギンのエサ探しには有利です。このため、ペンギンは飛ぶ能力よりも上手に泳ぐ能力を身につけたのでしょう

飛ばない代わりに泳ぎが得意になった!

飛ぶのをやめたペンギンは、泳ぐのにふさわしい体になり、上手に泳ぐ能力を身につけました。見た目がかわいいペンギンからは想像ができないほど、泳ぐ能力が優れています。

・オリンピック選手よりもペンギンは速く泳げる!

イルカやアザラシと同じように、ペンギンは流線形をしています。流線形とは水の抵抗が少なくて済む、速く泳ぐのにぴったりの形状です。通常ペンギンは時速7~8キロメートルで泳ぎますが、エサを捕ったり敵から逃げたりするときは時速12キロメートルを出すこともあります。ちなみに、オリンピックに出場する自由形の選手は、時速7~8キロメートルでクロールを泳ぐのが一般的です。つまり、ペンギンが本気を出せば、オリンピックの金メダリストよりも速く泳げるといえるでしょう。

・100メートル以上潜水できるペンギンも多い!

ペンギンは速く泳ぐだけでなく、深く潜ることも得意です。潜水能力についてはまだ解明されていないことが多いのですが、ペンギンは筋肉や肺の前後についた袋に空気を取り込めるので、長時間水中に潜れるといわれています。100メートル以上潜れるペンギンも多く、深く潜れるコウテイペンギンには、564メートル潜水した記録があるほどです。

飛べないほかの鳥類

進化の過程で飛行能力を失った鳥は、ペンギン以外にもいます。ペンギンのように泳ぐ能力を身につけたものや走る能力に特化したものなど、進化の仕方はさまざまです。飛べない鳥の代表例をご紹介しましょう。

・ダチョウ

アフリカのサバンナに生息するダチョウは、現存する鳥類のなかで最大の鳥です。オスの成鳥では体高230センチメートル、体重135キログラムになるほどです。ダチョウの卵は世界で1番大きな卵として有名で、ニワトリの卵の約25倍の重さがあります。サバンナで生き抜くために、速く走る能力を身につける代わりに、飛ぶことができなくなりました。

・エミュー

オーストラリア大陸に生息するエミューは、オーストラリアの国鳥として知られています。ダチョウと同様に走ることに特化した結果、飛翔能力を失いました。エミューは、ダチョウに続いて2番目に大きな鳥で「オーストラリア版のダチョウ」とも呼ばれています。

・キーウィ

ニュージーランドの国鳥キーウィは、ニュージーランドにしか生息していない固有種です。ニュージーランドはもともと天敵となるほ乳類がほとんどいない島でした。鳥たちは襲われることがないので、飛ぶ必要がなくなりました。こうして、ニュージーランド固有の鳥たちの羽は退化したといわれています。しかし、ニュージーランドにヨーロッパ人が入植すると、入植者たちが持ち込んだイヌやネコによって、飛べない鳥たちはどんどん捕食されました。なかには、絶滅に追い込まれた鳥もいます。キーウィも個体数が激減したため、絶滅危惧種として保護の対象となっています。

ペンギンは環境に適用して泳ぐことを選んだ鳥!

ペンギンはもともとほかの鳥と同じように空を飛んでいました。しかし、ペンギンの生息環境では飛ぶ必要がなくなったため、より効率よくエサを捕ったり敵から逃れたりできるように、泳ぐ能力を高めていきました。進化の結果、鳥類特有の構造は残しながら、速く泳いだり深く潜ったりできる体になったのでしょう。

ペンギン以外にも環境に適用した結果、飛べなくなった鳥は多数います。しかし、飛べなくなったことにより新しい天敵に対応できず、絶滅したケースもあります。ペンギンの進化の過程や生態については、すべてが解明されているわけではありません。今後の研究によってペンギンの生態がもっとわかるはずなので、動物の進化についてのニュースに注目してくださいね。

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