ゴリラが胸を叩くのは争いを避けるため?胸を叩いて音が鳴る仕組

公開日: 2023/08/31

ゴリラの真似をするとき、多くの人が胸を叩いて威嚇するポーズを取るでしょう。その様子と筋肉ムキムキな姿から、ゴリラは攻撃的だと思っている人がいるかもしれません。しかし、実際にはゴリラは温和で繊細な性格の動物だといわれています。そこで、ゴリラの生態や胸を叩いて音が鳴る仕組みや胸を叩く理由などを解説します。

目次
お肉を食べないのに筋肉ムキムキ!ゴリラってどんな動物?
怒っているからじゃなかった!ゴリラが胸を叩く理由
ゴリラのドラミングはどんな音?胸を叩いて音が鳴る仕組み
ゴリラは胸を叩くことで自己主張をする!

お肉を食べないのに筋肉ムキムキ!ゴリラってどんな動物?

ゴリラは、筋肉ムキムキで胸を叩いているところを想像するかもしれません。その様子から、凶暴な動物という印象を持っている人もいるでしょう。しかし、実際のゴリラの生態は、イメージとは違うはずです。ゴリラがどんな動物なのかを解説します。

・ゴリラの種類

ゴリラの種類は、大まかに分けると「ニシゴリラ」と「ヒガシゴリラ」の2つです。2種類のゴリラがさらに2種類に分類されるので、合計で4種類が生息しています。どのゴリラも、環境破壊や密猟によって生息数は減少していて、絶滅危惧種に指定されています。

【ニシゴリラ】
 ニシローランドゴリラ
 クロスリバーゴリラ

【ヒガシゴリラ】
 マウンテンゴリラ
 ヒガシローランドゴリラ

この4種類のなかで、最も生息数が多いのがニシローランドゴリラです。ニシローランドゴリラの学名は「ゴリラ=ゴリラ=ゴリラ」といいます。「ゴリラ科ゴリラ属ゴリラ種」との意味で、昔からゴリラの研究といえばニシローランドゴリラを対象としていました。日本の動物園にいるゴリラは、すべてニシローランドゴリラです。

・ゴリラの生態

日本の動物園で会えるニシローランドゴリラは、マウンテンゴリラの次に大きなゴリラです。生態は次の通りとなっています。

 生息地:中央アフリカ、カメルーンなどの山林・低地の湿地
 体重:オスは140~200キログラム程度、メスは100キログラム程度
 性格:温和で繊細
 特徴:茶灰色がかった黒い短毛。オスは成人になると、背中から腰にかけて「シルバーバッグ」と呼ばれる銀色の毛が生える。

・ゴリラの家族構成

ゴリラは、一頭の成人オスに複数の成人メスとその子どもたちが1つの群れを作って生活するのが基本です。成人オスは単独で暮らす場合もありますが、成人オスが複数いる群れもあります。エサを食べるときも寝るときも、群れで一緒に行動します。

・ゴリラの好物

ゴリラの好物は、甘い果物です。ニシローランドゴリラが多く生息する地域は熱帯雨林で、さまざまな果物が実ります。大好物の果物を取るために、ゴリラは上手に木登りをします。基本的には植物食で、果物以外に食べるものは葉っぱや木の根などです。しかし、アリやシロアリを食べるゴリラもいて、人間と同じ雑食なことがわかっています。

・ゴリラが筋肉ムキムキなのはなぜ?

ゴリラは基本的に植物ばかり食べているのに、筋肉ムキムキの体つきです。これは、ゴリラの腸内にいる細菌や微生物の影響と考えられています。ゴリラの腸内には、草からアミノ酸を合成できる細菌や微生物がたくさん存在しています。アミノ酸はたんぱく質の元なので、筋肉を作るのに役立つ成分です。この腸内微生物の影響で、ゴリラは植物食でも筋肉ムキムキになります。

怒っているからじゃなかった!ゴリラが胸を叩く理由

ゴリラが胸を叩くことを「ドラミング」といいます。ドラミングは、英語で「太鼓」の意味のある「ドラム」に由来する言葉です。

・なぜゴリラは怒ると胸を叩くというイメージがついたの?

ゴリラのドラミングは、大きな音が響き渡り迫力があるため、攻撃的に見えるかもしれません。しかも、1933年にアメリカ合衆国で公開された映画「キングコング」によって、ゴリラが凶暴な動物なイメージが定着しました。この映画では、外見がゴリラに似ているキングコングが、怒って胸を叩いたあと人間を攻撃する様子が描かれていたからです。

・ゴリラがドラミングをする本当の理由

ゴリラの研究が進むと、ドラミングは自己主張やコミュニケーションの手段だとわかってきました。ゴリラは次のような理由で、ドラミングを行います。

 かまってほしい気持ちを伝えたい
 自分の存在を知らせる
 興奮や不満が強くなった
 緊張を解消する

このように、遊びたいときや気持ちを落ち着けたいときなどにゴリラはドラミングを行います。ドラミングによって自分の体格や力を周囲の群れに伝えることもできるため、事前に争いを避けるのに有効な行為ともいえます。

ゴリラのドラミングはどんな音?胸を叩いて音が鳴る仕組み

ゴリラがドラミングすると「ポコポコ」と、小太鼓を叩いたような澄んだ音が鳴ります。静かなジャングルでは2kmほど響くほど、大きな音です。
ゴリラのオスは成長とともに、喉袋が発達していきます。成人オスの喉袋は胸に達する大きさです。喉袋はドラミングの共鳴袋となります。共鳴袋を膨らまして胸を叩くと、大きな音を出すことができるのです。
ゴリラのドラミングを想像すると、手をグーにして胸を叩いているイメージがあるかもしれません。しかし、実際には、ゴリラは手をパーにして開いた状態で胸を叩きます。手を開いたほうが、音がよく響くからです。

ゴリラの家族でドラミングをするのはお父さんだけ?

ゴリラの家族でドラミングするのは、成人オスだけではありません。年齢や性別に関係なくゴリラはドラミングをします。しかし、メスや子どもには発達した共鳴袋がないので、成人オスのように大きな音を出せません。子どものゴリラは胸の叩き方も下手ですが、遊びの一環としてドラミングの真似をすることがあります。

ゴリラは胸を叩くことで自己主張をする!

植物を多く食べるゴリラは、温和で繊細な性格です。胸を叩いて威嚇する、攻撃的な動物の印象を持っている人もいるかもしれませんが、それは映画によって定着したイメージでしょう。ゴリラのドラミング(胸叩きの行為)には、自己主張や感情を沈める目的があります。自分の存在を相手に知らせることで、争いを未然に防ぐことにもつながります。
環境破壊や密猟によって、生息数が減少し絶滅危惧種に指定されているゴリラ。次の6つの動物園では、ニシローランドゴリラに会うことができます。
 千葉市動物公園(千葉県)
 東京都恩賜上野動物園(東京都)
 浜松市動物園(静岡県)
 東山動植物園(愛知県)
 日本モンキーセンター(愛知県)
 京都市動物園(京都府)
実際にゴリラを見ると、平和な動物だとわかるはずです。お休みの日は、ゴリラたちに会いに行ってみてはいかがでしょうか?

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