塩の作り方と歴史|海水や塩水から自分で食塩を取り出してみよう!
公開日: 2024/02/28
私たちの食事に欠かすことのできない調味料である塩は、昔から世界各地でその生産方法が改良されてきました。この記事では、それらの伝統的な塩の作り方、現代の科学技術を活用した作り方を解説します。家庭でも実験できる簡単な塩の作り方も紹介しますので、ぜひ挑戦してみてください。
- 目次
- 塩の作り方って?世界で使われている塩の種類
- 日本では縄文時代には塩を作っていた?塩作りの歴史
- 塩作りが世界遺産に?塩で作られた礼拝堂にシャンデリアまである岩塩抗!
- お家で簡単にできる?海水や塩水から食塩を取り出してみよう!
- 塩をテーマに人類の工夫の歴史を学んでみよう
塩の作り方って?世界で使われている塩の種類
塩は世界中の食卓で日常的に使われている調味料です。その作り方にはさまざまな種類があり、できあがる塩にもそれぞれ特徴があります。
そもそも塩ってどんなもの?
塩の正体は、塩化ナトリウムです。塩化ナトリウムは、塩素とナトリウムという2種類の物質の組み合わせでできています。自然界に存在する塩には、塩化ナトリウムの結晶である岩塩や、海や湖の水に溶けているものがあります。
いろいろな塩の種類
①精製塩
精製塩とは、海水などから塩以外の成分を取り除いて作った塩のことです。海水など自然界に存在する塩は、他の成分と混ざった状態で存在しています。現代の科学技術を使うといろいろな成分の中から塩だけを効率的に集める(精製する)ことができます。汚れや不純物をほとんど除去できるため、衛生的で純度の高い塩が作られます。
②海塩
海塩とは、海水を蒸発させて作る塩のことです。海水にはナトリウム以外のミネラル(マグネシウムやカルシウムなど)が含まれているので、海塩の味は精製塩よりも複雑でまろやかです。主に海岸地域で行われる製法で、島国の日本では昔から盛んに海塩が生産されてきました。
③岩塩
岩塩とは、岩塩鉱床という塩化ナトリウムの結晶が集まっている場所で採掘される塩の塊のことです。日本では岩塩鉱床を見ることはありませんが、ヨーロッパなど世界各地で今でも岩塩の採掘が行われています。採掘された場所によって成分が微妙に異なるため、岩塩の種類ごとに特色ある味わいを楽しめます。
④湖塩
世界には塩分の濃度が高い湖が存在していて、塩の生産地となっています。有名なものでは、イスラエルの死海やボリビアのウユニ塩湖で生産された湖塩です。
日本では縄文時代には塩を作っていた?塩作りの歴史
日本の塩作りの歴史は古く、縄文時代にはすでに塩の生産が始まっていたと考えられています。その後、年代が進むほどに塩の製法の改良が進んできました。ここでは、日本の塩作りの歴史を、古代から現代まで順を追って紹介します。
塩を作るための基本的な手順には共通点が多く、水分を蒸発させて塩水を濃縮する工程が重要なポイントになっています。これは、水に溶ける塩の量には限界があり、限界量以上の塩は溶けた状態を保つことができずに結晶化する現象を利用しています。
古代
古代に行われていたと考えられている原始的な方法は、自然乾燥と土器を使い、加熱を組み合わせて水を蒸発させる手法です。日本はジメジメした湿度の高い気候なので、自然乾燥だけでは水を蒸発させることが難しく、加熱して蒸発させる方法が広まった可能性があります。
中世
中世になると塩田を使った塩の生産が広まりました。塩田とは、海水の水分を蒸発させて塩を取り出すために整備された場所のことです。揚げ浜式塩田と呼ばれる手法では、水を通しにくい粘土などを敷き詰めた区画に粒の細かい砂を敷きます。この砂の上に大量の海水をまき、天日干しにして乾燥させます。その後、砂に残った塩の成分を海水で洗い流すと濃い塩水が取れる仕組みです。最後に、濃い塩水を加熱して塩を結晶化させます。
江戸時代
揚げ浜式塩田を使う方法の場合、大量の海水をくみ上げて塩田にまく労力が大きな負担でした。そこで、江戸時代ごろには、潮の満ち引きを利用して塩田に海水を引き込む仕組みが整備されていたようです。この仕組みを使った塩田のことを入浜式塩田と呼びます。
近代
昭和の時代になると機械設備を取り入れた方法が一般的になりました。海水のくみ上げはポンプで行うようになり、乾燥過程を効率化する器具も開発され、塩の生産効率が大きく向上しました。
現代の塩作り
現代では、水に溶けている塩の成分(ナトリウムイオンと塩素イオン)を効率的に集める「イオン交換膜」を使った精製法が広く用いられています。この方法では自然乾燥のためのスペースが不要になり、天候にも左右されません。このような技術の発展によって、私たちはいつでも安定して塩を購入できるようになっています。
塩作りが世界遺産に?塩で作られた礼拝堂にシャンデリアまである岩塩抗!
食材として生産されてきた塩は、時に文化的な芸術作品や建築にも発展してきました。ヨーロッパのポーランドにあるヴィエリチカ(Wieliczka)岩塩抗は、世界遺産に登録されていて、多くの人が訪れる観光地にもなっています。
ヴィエリチカ岩塩抗
ポーランドのクラクフ近郊に位置する岩塩鉱山。13世紀から塩の採掘が行われていて、その坑道の長さは300キロメートル以上に達します。現在では岩塩の採掘は停止しているものの、坑道の一部が観光客向けに公開されています。見どころの一つは、岩塩を削って作られた美しい礼拝堂です。美しく装飾されたシャンデリアや祭壇、レリーフは岩塩を削り出して作ったものとは思えない精巧なでき栄えです。
お家で簡単にできる?海水や塩水から食塩を取り出してみよう!
自宅でも簡単にできる食塩(塩化ナトリウム)の作り方を紹介します。お家にあるものを使って塩の結晶を取り出してみましょう。
用意するもの
●海水や塩水
近くに海がある場合は、ペットボトルに1~2リットル海水を汲みましょう。海水の採取は、立ち入りが許されている安全な場所で行ってください。危険な場所には近づかないようにしましょう。
海水が手に入らない時は、1リットルの水道水に40グラムぐらいの食塩を溶かした塩水を代わりに使用できます。
●コーヒー用のフィルター
海水や塩水をろ過するのに使います。フィルターは対応するコーヒードリッパーにセットすると安全に使用できます。
●フライパンや鍋
加熱して水を蒸発させるために使います。火を使う時は周囲に燃えやすいものを置かないようにしましょう。
塩の結晶の作り方
1. 海水をコーヒーフィルターでろ過して、不純物を取り除きます。
※水道水に塩を溶かした塩水を使う場合はこの手順を省略しても問題ありません。
2. ろ過した塩水をフライパンや鍋に入れて加熱します。ふたをせずに沸騰した状態を保ち続けると少しずつ水が蒸発していきます。ヘラなどでかき混ぜながら、最初に入れた塩水の量が10分の1ぐらいになるまで煮詰めます。
3. 濃くなった塩水をろ過する
海水を煮詰めると、塩化ナトリウム以外の成分も結晶になってきます。海水の量が10分の1ぐらいになったタイミングでフィルターを通すと、硫酸カルシウムの結晶が除去できます。加熱した塩水でやけどしないように、冷ましてからフィルターに移すと安全です。鍋に白いカスが残っている場合は、ここで一旦洗い流しておきましょう。
※水道水に塩を溶かしたものを使う場合はこの手順を省略しても問題ありません。
4. さらに加熱して水分を飛ばす
ろ過した塩水をなべに戻して、さらに加熱します。水分が飛んで結晶が見えてきたら、かきまぜながら弱火でじっくりと煮詰めましょう。海水の水分が完全になくなってしまうと、“にがり”(塩化マグネシウム)の成分が結晶化するので、水分が完全になくなる直前にフィルターに移すのが純度の高い塩化ナトリウムの結晶を作るコツです。
フィルターを通らずに残った白い結晶を集めたら、自家製の塩(塩化ナトリウム)の完成です。
塩の結晶を取り出す実験の注意点
火を使う実験は、大人の人と相談して安全を確認してから始めてください。実験に使うフライパンや鍋には海水の成分が付着する可能性があるので、実験に使っても良いか確認するようにしましょう。
精製された結晶には、塩化ナトリウム以外の不純物が含まれている可能性があります。市販の食塩とは違って安全性が確認されていないので、食用には使わないようにしてください。
塩をテーマに人類の工夫の歴史を学んでみよう
塩は昔から私たちの食事に欠かせない調味料で、その製法には興味深い歴史があります。同じ塩でも、地域や時代によって特色豊かなバリエーションがあることもわかりました。自宅で塩を作る実験を試してみると、昔の人たちの苦労や工夫の歴史が少し実感できるかもしれません。
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