小学校でプログラミング教育が必修化!2020年に向けて準備することは?
公開日: 2019/03/01
2012年より公立中学校ではプログラミング教育が必修化となっていますが、2020年からは小学校でもプログラミング教育が必修化されます。 「小学生からプログラミングはちょっと早いのでは?」と感じるかもしれませんが、海外では既に多くの小学校でプログラミング学習が導入されており、日本は現状遅れているといっても過言ではありません。 幼いうちからプログラミングを学習させる背景には、2020年問題への対策という大きな目的もあり、プログラミング教育によって将来の日本経済の衰退を防ぐことも期待されているのです。 そこで今回は、プログラミング教育の目的やメリット、そして2020年の必修化に向けた準備についてご紹介します。
- 目次
- 小学校でプログラミング教育が必修化される背景と目的
- プログラミングを学ぶメリット
- プログラミング教育の必修化に向けて親が準備しておくこと
- プログラミングが身につく自由研究例
- プログラミングの必修化は親の協力が必要不可欠
小学校でプログラミング教育が必修化される背景と目的
プログラミング教育が必要とされる背景には、第4次産業革命やグローバル社会への対応といったさまざまな目的があります。その中でも特に大きな目的となるのが「2020年問題への対策」と「プログラミング思考力の育成」で、小学校段階におけるプログラミング教育は非常に重要だと考えられているのです。
2020年問題の対策
2020年といえば東京オリンピックを思い浮かべる人も多いですが、オリンピックの開催とともに日本経済は大きく変わると予測されています。まず影響を受けると考えられるのが不動産業。これまでオリンピック開催に向けて好調が続いていましたが、オリンピック終了とともに下落していくと予想されます。また、既に影響が出始めている少子高齢化が深刻化し、2020年以降は労働人口が減少すると懸念されています。こういったさまざまな問題の中、特に問題視されているのがIT人材の不足です。経済産業省によると、IT人材不足は2020年で37万人、2030年で79万人にのぼるだろうと予測されており、特にビッグデータや人工知能、IoT、ロボット等を扱うエンジニア不足は深刻になると考えられます。そのため、将来の優秀なIT人材を育成する目的で、プログラミング教育が必修化されることになったのです。
プログラミング的思考力の育成
プログラミング教育では、プログラミングスキルを身につけるだけではなく、小学生段階における「プログラミング的思考力」を育成するという目的もあります。プログラミング的思考力とは、コンピュータやプログラミング技術を利用し、概念に基づいて問題解決を行うという考え方のことです。たとえば、コンピュータで処理する対象を細かく分類して実行しやすくしたり、処理をしやすくするために繰り返しや条件分岐を用いたりして、正確かつ効率的に作業を行っていきます。プログラミング教育ではこういった考え方が必要不可欠となることから、学習を通してプログラミング的思考力が自然に身につくと考えられています。すると学校生活の中だけではなく、社会問題や身の回りの出来事など、現実社会の問題解決に役立てることもできます。小学校のプログラミング教育はプログラミング技術の習得が目的ではなく、プログラミングの考え方や体験が主な目的です。新たに「プログラミング」という教科が新設されるわけではありません。
プログラミングを学ぶメリット
プログラミング学習では実にさまざまなメリットを得ることができます。もちろん、アプリやシステムが開発できるようになること自体もメリットといえますが、目には見えない思考力の部分でも得られるものが多く、結果として人間関係や将来性を豊かにできると期待されています。ここでは、プログラミング教育によって得られるメリットをみていきましょう。
論理的思考能力が培われる
論理的思考能力とは、道筋を立てて物事を考えたり、それを相手にわかりやすく説明したりできる能力のことをいいます。プログラミングをする際は、目的通りに動作させるための手順や処理を行わなければなりません。また、正しいコードを考えたり、処理漏れがないか常に確認したりしながら進める必要があります。そのため、プログラミングを学ぶことによっておのずと論理的思考力が身につくのです。論理的思考能力が身についていると、難しい問題も順を追ってスムーズに解決できるほか、自分の言いたいことをうまく言語化できるようにもなります。ビジネスシーンだけでなく、生活面でも大いに役立つでしょう。
問題解決能力が身につく
問題解決能力とは、今ある情報をもとに最善な手段で目標達成ができる能力のことをいい、これもプログラミングには欠かせない要素です。プログラミングでは、きちんと筋道を立てて考えた方法でプログラミングをしても、思ったように動作しないことが多々あります。そんなときは自分で原因を突き止め、トラブルを解消するという作業を、何度も粘り強く繰り返さなければなりません。そのため、プログラミングを学ぶことで問題解決能力が身につくのです。問題解決能力を身につけると、プログラミングをする際だけでなく、実生活で何か問題が起きた場合でもいち早く問題を見つけ出し、柔軟に対応できるようになるでしょう。
想像力・自己実現能力が育まれる
プログラミングは、「こんなサービスがあったらいいな」「こういうゲームをつくってみたい!」など、頭に思い描いたものや自分のアイデアを実現できるというのが大きな魅力です。そのため、プログラミング教育は子供たちの自由な想像力を大きく伸ばすことに繋がります。また、プログラミングの技術を覚えることによって必然的に創作の幅も広がりますから、自己実現能力を高めることも可能です。想像力や自己実現能力は、大人になってから身につけるよりも、幼いうちから訓練をするほうが効果的だとされています。子供は大人には考えつかないようなアイデアを考えることもありますから、ぜひとも積極的に習得したい能力ですね。
進学や就職で有利になる可能性が高い
近年では、エンジニアの人材不足に伴い、エンジニア職の求人倍率が高くなってきています。また、2020年以降はプログラマ不足がより深刻化すると予測されていることから、プログラミングができる人材が重宝されるといえるでしょう。そのため、子供のうちからプログラミングを習得しておけば、高校や大学受験で大きくアピールできるほか、幅広い範囲から就職先を選ぶことも可能です。また、報酬面でも好待遇が期待できます。
プログラミング教育の必修化に向けて親が準備しておくこと
私たち大人は、プログラミングに対して難しいというイメージを持っているかもしれません。ですが頭の柔らかい子供たちは何のためらいもなく、どんどん知識を吸収することができます。とはいえプログラミングに興味が持てなければ学習を重ねてもなかなか進歩せず、プログラミングの技術どころかプログラミング思考力も身につけることができません。そのため、プログラミングの必修化に向けてご両親も準備をしておくことが大切なのです。
プログラミングができる学習環境を整える
プログラミング教育の準備として、まずは子供が快適に学習できるよう、環境を整えてあげる必要があります。具体的には、専用のパソコンやデスクを用意してあげてください。Webサイトやアプリを使って自分で学習することが可能になります。また、ゲーム感覚でプログラミングを学べる子供用のソフトなどもあるので、子供が好きそうなものもあらかじめチェックしておくとよいでしょう。
プログラミングを学ぶメリットを子供に伝える
子供がプログラミングに興味を示すよう、プログラミングを学ぶメリットを子供に教えてあげましょう。もちろん、子供に「論理的思考力が身につく」「問題解決力が養われる」と言っても理解できませんので、子供にもわかる言葉で簡潔に伝えることがポイントです。たとえば、「○○ができるようになる」「××が作れる」といった具体例を用いることで、子供でもプログラミングを学ぶメリットを理解し、意欲的に学習するようになるでしょう。
プログラミングについて親も予習しておく
知識や技術を身につける際には、学校以外での家庭学習が非常に大切です。その際、わからないことがあれば子供は両親に質問してくると考えられるので、親もプログラミング学習で使う用語や意味を多少は理解しておく必要があります。さらに簡単なプログラミングができれば、学校の授業とは別に技術的なことも子供に教えることができますね。
プログラミングが身につく自由研究例
近年では、夏休みの自由研究としてプログラミングを活用したアニメーションやゲームをを作る子供も増えてきています。一般的に、プログラミングを勉強し始めて最初につまずくのが環境構築やタイピングミスだといわれていますが、Scratch(スクラッチ)という子供向けプログラミング言語では環境構築がほとんど必要なく、マウスだけでプログラミングすることができます。ここでは、Scratchを利用した自由研究教材をいくつか紹介しましょう。
プログラミングゲーム
ゲームのジャンルやストーリー、ルール、素材などを細かく決め、まずは実際のゲーム画面を紙に書きます。紙に描いた絵をパソコンに取り込んで着色し、あとは自分で決めたストーリーやルールをプログラミングで組み込んでいけば、取り込んだ絵が動き出し、プログラミングゲームの完成です。
ロボットプログラミング
ロボットプログラミングでは、一から開発するのではなく初心者向けのプログラミングキットを使って作成していきます。プログラミングキットは、ブロックで簡単に組み立てられるものや、ドライバーを使った本格的なものまでさまざま。これらはいずれも初心者が取り組みやすいように工夫されているため、子供でも挫折せずに取り組むことが可能です。
プログラミングの必修化は親の協力が必要不可欠
プログラミング教育の必修化に備え、子供をプログラミング教室に通わせる家庭も増えています。しかし小学校の段階ではプログラミング技術の習得が主な目的ではなく、あくまでもプログラミング的思考を身につけることに重きを置いています。つまり、小学校の段階では“いかにプログラミングに興味を持たせるか”というのが重要なのです。そのためには、子供だけに準備をさせるのではなく、ご両親も準備をしておくことが大切です。文部科学省のホームページには、学習指導要領や小学校段階のプログラミング教育についてわかりやすく解説した「小学校プログラミング教育の手引」も掲載されていますので、ぜひプログラミング教育の準備や実践に役立ててみましょう。