ありの行列はなぜできるの?ありの働きぶりを観察してみよう

身近な疑問

ワンダー 3

公開日2025.08.25

道ばたで、ありたちが一列に並んで歩く「ありの行列」を見たことはありますか?小さな体でせっせとエサを運ぶありたちは、一体どこへ向かっているのでしょう。まるでだれかが指示しているかのように同じ道を進む様子は、とても不思議ですよね。この記事では、ありの行列ができる理由とその仕組みについて、分かりやすく説明します。ありたちの世界の秘密を一緒に探ってみましょう。

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行列の主役「あり」ってどんな虫?

ありの行列の不思議に迫る前に、まずは主役である「あり」がどんな生き物なのかを知っておきましょう。

ありの体のつくり

ありは、カブトムシやチョウと同じ「昆虫」の仲間です。昆虫の特徴は体が「頭」「胸」「腹」の3つの部分に分かれていて、胸から6本の足が生えていることです。頭についている2本の触覚(しょっかく)は、においをかいだり、物にさわって形を確かめたり、仲間とあいさつをしたりと、たくさんの役割を持つ優れたセンサーです。

ありの役割分担

1つの巣にいるありたちは人間と同じように社会をつくり、それぞれが自分の役目をしっかり果たしています。

*女王あり:巣の中心的な存在で、卵を産むことに専念するありです。
*働きあり:エサを集めたり、巣をつくったり、敵から巣を守ったりします。私たちが行列で見かけるのは、この働きありです。
*オスあり:女王ありと一緒に子孫を残します。

ありの社会ではそれぞれが役目を持っており、協力し合って暮らしています。

ありの行列ができる仕組みを見てみよう

では、本題のありの行列のなぞを解き明かしていきましょう。
実は、そのカギを握っているのは「におい」です。

フェロモンがつくるにおいの道

ありの行列は「フェロモン」という特別な物質によってつくられています。フェロモンとは、動物が体の中から出して、仲間に情報を伝えるために使う特別な「におい」のことです。
ありは、エサを見つけると、おしりの先からこのフェロモンを出し、少しずつ地面につけながら歩きます。すると、目には見えない「においの道」ができあがります。
後から来る仲間たちは、かすかなにおいを触覚で、たどりながら進むことで道に迷わず同じ場所へ向かうことができるのです。

エサ発見から行列ができるまでの流れ

フェロモンを使ってどのように行列ができていくのでしょうか。

1.まず、巣から出発した1匹の「偵察(ていさつ)」係の働きありが、エサを見つけます。
2.偵察ありは、巣に戻るまでの道に「フェロモン」をつけて帰ります。
3.巣にいた仲間たちは、そのフェロモンのにおいをたどり、エサの場所へと向かいます。
4.エサを見つけたありたちも、帰り道にフェロモンをつけていきます。

この行き来が繰り返されることで「においの道」はどんどん濃くなっていきます。こうして、エサと巣を結ぶ効率の良いルートが完成し、たくさんのありが並ぶ「行列」ができあがるのです。

ウィルソン博士の発見とは

ありの行列の仕組みを詳しく研究したのが、アメリカの生物学者エドワード・オズボーン・ウィルソン博士です。
ウィルソン博士は、ありの出すフェロモンが仲間と情報を伝え合う「言葉」のような役割をしていることを発見しました。この発見により、ありたちがつくる社会の仕組みが明らかになり、「社会性昆虫(しゃかいせいこんちゅう)」という新しい研究分野が生まれるきっかけになりました。

博士の研究の内容は、一部の国語の教科書でも紹介されています。
このお話は身近な生き物への探求心がいかに大切かを教えてくれます。

ありの種類による行列の違い

実は全てのありが同じような行列をつくるわけではありません。
ありの種類によって、行列の様子はさまざまです。

*クロオオアリ:公園や庭でよく見かけるありです。エサを見つけると、巣まで続く長くてはっきりとした行列をつくります。

*アミメアリ:女王ありがおらず、働きありだけで集団をつくるめずらしいありです。決まった巣を持たずに、集団で移動しながら狩りをするため、幅の広いじゅうたんのような行列をつくることがあります。

身近で見かけるありの種類を調べてみるのも面白いでしょう。
種類によって行列の長さや進む速さが違うので、観察するときにはぜひ注目してみてください。

ありの行列を観察してみよう

ありの行列の仕組みがわかったら、実際に自分の目で確かめてみたくなりますよね。
科学者のような気持ちで、観察に挑戦してみましょう。

観察場所の探し方

ありの行列は、公園、神社の境内、学校の校庭、家の庭など、土や緑がある場所なら意外と身近なところで見つかります。特に雨が上がった晴れの日には、エサを探すありたちが活発に動き回るので観察のチャンスです。

用意するものと気をつけること

観察を始める前に道具を準備しておくと、より詳しく調べることができます。保護者の方と一緒に、安全に気をつけながら観察しましょう。


【用意するもの】
*虫めがね(ルーペ):ありの体のつくりや、運んでいるものを細かく見られます。
*ノート・えんぴつ:気づいたことや時間を記録する「観察ノート」をつくりましょう。
*時計やストップウォッチ:ありの進む速さなどをはかるときに使います。
*カメラ(スマートフォンなど):行列の様子を写真や動画で記録しておくと、後でまとめるときに便利です。

【安全のための注意点】
*ありにさわらない:ありは、巣を守るためにかみついたり、おしりから蟻酸(ぎさん)という液体を出して攻撃したりすることがあります。むやみにさわらないようにしましょう。

*巣をこわさない:ありたちの家である巣をこわさないように、そっと観察しましょう。

*周りの安全を確認する:観察に夢中になって、車や自転車、歩いている人にぶつからないように周りをよく見て行動しましょう。

おすすめの観察方法

準備ができたら、さっそく観察をスタートしましょう。
観察のヒントをいくつか紹介します。

*行列の全体を観察する:まずは行列の長さや幅、どれくらいの数のありが歩いているかを観察します。

*1匹のありを観察する:行列の中の1匹に注目し、虫めがねでじっくり追いかけてみましょう。
何を運んでいるのか、仲間とすれ違うときに触角で何をしているかを観察しましょう。

*簡単な実験をしてみる:行列の進む先に、小さな落ち葉や小石をそっと置いてみましょう。
ありたちはどうするでしょうか?乗りこえるか、よけて通るか、それとも困ってしまうのか?ありたちの行動を記録してみましょう。

観察結果のまとめ方

観察でわかったことや気づいたことは、観察ノートやレポートにまとめましょう。自分の考えや感想も一緒に書くことで、学習がより深まります。

【記録のポイント】
*観察した日とき、天気、場所
*行列の様子(長さ、ありの数、運んでいたものなど)
*気づいたこと、不思議に思ったこと
*実験の結果と、その理由についての自分の考え
*観察全体の感想

「観察してわかった事実」とそれに対する「自分の考え」を分けて書くと、他の人にも伝わりやすいレポートになりますよ。

ありの行列の不思議を学んで、身近な自然に目を向けよう

この記事では、ありの行列が「フェロモン」という「においの道しるべ」でつくられていることを解説しました。
ウィルソン博士が、ありの行列を見て「なぜだろう?」と疑問に思ったことからすごい発見をしたように、科学の発見の多くは「これって、どうして?」という身近な疑問から始まります。

この記事を読んで、みなさんのありを見る目が、少し変わったのではないでしょうか?
ありの観察は、夏休みの自由研究にもぴったりです。
なぜなら、ありは公園や庭などすぐに見つけられる場所で観察でき、「何を運んでいるのかな?」「行列のじゃまをしたらどうなるのだろう?」といった疑問を見つけやすいからです。
ぜひ、観察ノートを片手に、身近な自然の中にかくされた科学の不思議を探してみてくださいね。

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