銀杏はなぜくさいの?原因と手や服についたにおいを落とす方法

身近な疑問

ワンダー 6

公開日2025.09.01

秋が深まると、鮮やかな黄色に染まったイチョウ並木がきれいですよね。しかし、足元に落ちている実「銀杏(ぎんなん)」をうっかり踏んでしまい、あの「強烈なにおい」に顔をしかめた経験はありませんか? この記事では、銀杏のにおいの原因から手や服についてしまった時の対処法、さらには美味しい食べ方まで幅広く紹介します。読み終える頃には、ただ「くさい」だけではない銀杏の奥深い魅力に気づくはずです。

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なぜ銀杏はくさいの?においの正体

秋の風物詩でもある銀杏ですが、どうしてあんなに独特なにおいがするのでしょうか。
ここでは、気になるにおいの正体とイチョウが持つ驚きの生存戦略について説明します。

においの原因!果肉部分に含まれる成分

銀杏の強烈なにおいは、外側のオレンジ色の果肉部分に含まれる2つの成分が主な原因です。

・酪酸(らくさん)
バターが腐った時や、蒸れた靴下のようなにおいの元になる成分。多くの人が不快に感じる、ツンとしたにおいです。

・エナント酸
古い油のような、独特の酸っぱいにおいを持つ成分です。

これらが混ざり合うことで、あの忘れられない銀杏特有のにおいが生まれるのです。

銀杏がくさい理由は生存戦略?

イチョウは、恐竜が生きていた時代から存在する「生きた化石」とも呼ばれる植物です。この強烈なにおいには、子孫を残すための戦略が隠されていると考えられています。

説①:天敵を遠ざけるため
においを放つことで、種子をかじってしまうネズミなどの小動物を追い払っているという説です。

説②:今は亡きパートナーを求めているため
少しロマンチックな説ですが、大昔、このにおいを好んで果肉を食べて遠くまで種子を運んでくれる動物がいたと言われます。その動物は絶滅してしまいましたが、パートナーを惹きつけていたにおいだけが、今も残っているのかもしれません。

わたしたちが食べる「仁(じん)」の部分はくさくない

「あんなにくさいのに本当に食べられるの?」と心配になるかもしれませんが、わたしたちが普段食べているのは、においの元である果肉と硬い殻を取り除いた中心部にある「仁(じん)」と呼ばれる部分のため大丈夫です。この「仁」には、においの成分がほとんど含まれていないため、美味しく食べることができます。

【豆知識】街路樹に銀杏がならないワケ

銀杏が実るのはイチョウの木の中でも「雌株(めかぶ)」だけです。そのため、街路樹として植えられているイチョウは、においを防ぐため基本的に実のならない「雄株(おかぶ)」が選ばれているのです。

【シーン別】手や服についた銀杏のにおいを落とす方法

気をつけていても、うっかり銀杏に触れたり踏んでしまったりすることはありますよね。ここでは、手や靴、服についてしまった強烈なにおいを和らげる方法を紹介します。

【作業前の注意点】
銀杏の果肉には、肌がかぶれる原因となる「ギンコール酸」が含まれています。
素手で触ると炎症を起こすことがあるため、作業の際は必ずゴム手袋などを着用してください。

手についてしまった場合

におい成分は油に溶けやすい性質を持っています。
いきなり水で洗うと、においが広がりやすいので以下の手順を試してみてください。

1.食用油をなじませる:サラダ油などを手に取り、におい成分を油で浮かせるイメージでよくなじませます。

2.石鹸で洗い流す:油ごと石鹸でしっかりと洗い流します。

特ににおいが残りやすい爪の間は、使い古しの歯ブラシなどで優しくこすると効果的です。

靴で踏んでしまった場合

ティッシュペーパーや木の枝で、靴底についた果肉をできる限り取り除きます。その後、以下の方法で洗浄しましょう。

・ブラシに中性洗剤(食器用洗剤など)をつけ、靴底をこすり洗いします。
・においが残る場合は、靴底に重曹を振りかけ、数時間置いてから水で洗い流しましょう。
・消毒用アルコールを吹きかけて拭き取るのも、消臭に有効です。

スニーカーなど丸洗いできる靴なら、重曹を溶かした水にしばらくつけ置きするのもおすすめです。

服やカバンについてしまった場合

まず固形物を取り除き、油汚れに強い食器用洗剤などを汚れた部分に直接つけて優しくもみ洗いします。その後、他の洗濯物とは分けて洗濯してください。
重曹を溶かしたぬるま湯でのつけ置き洗いや、消毒用アルコールで軽く拭き取る方法も効果的ですが、素材によっては変色や傷みの原因になることもあるため、必ず裏側など目立たない部分で試してから行いましょう。どうしてもにおいが取れない場合や、大切な衣類は無理せずクリーニング店に相談するのが安心です。

銀杏のおいしい食べ方

少し手のかかる下処理をすれば、銀杏はもちもちとした食感がおいしい秋の味覚に変わります。
【注意】火を扱うときや道具を使うときは、危ないので必ずおうちの人(保護者)と一緒に行いましょう。

銀杏を食べるための準備

STEP1.果肉を取り除き、きれいに洗浄する
かぶれる可能性があるため、必ずゴム手袋を着用してください。バケツに水を張り、銀杏を数日間つけておくと果肉が腐って取れやすくなります(ただし強いにおいが出るため、ベランダなど置き場所を選びましょう)。果肉を取り除いたら、流水でしっかり洗います。

STEP2.天日干しでしっかりと乾燥させる
洗った殻付きの銀杏は、新聞紙などの上に広げ、風通しの良い場所で数日間しっかりと乾燥させます。

STEP3.フライパンやレンジで加熱して殻をむく
食べる際は、必ず加熱が必要です。ペンチなどで殻にヒビを入れた銀杏をオーブンシートに包んで、電子レンジ(500W)で30~40秒ほど加熱するのが簡単です。フライパンで塩と共に炒るのも香ばしくておすすめです。熱いうちに殻と薄皮をむきましょう。

すぐに食べない場合の保存方法

すぐに食べきれない場合、殻付きのままなら紙袋などに入れて冷蔵庫の野菜室で2週間~1カ月ほど保存可能です。長めに保存したい場合は加熱して殻と薄皮をむいた状態で冷凍保存するのがおすすめです。使うときは凍ったまま料理に加えられて便利です。

食べ過ぎは注意!中毒の危険性と一日の適量

おいしい銀杏ですが食べ過ぎは禁物です。
銀杏には「メチルピリドキシン」という物質が含まれており、これが体内のビタミンB6の働きを阻害します。一度にたくさん食べると、嘔吐(おうと)やけいれんなどの中毒症状を引き起こすことがあり、特に子どもは影響を受けやすいため注意が必要です。

大人は1日に6~7粒程度まで、子どもはさらに少なく1~2粒にとどめ、特に5歳未満のお子さんには与えない方が安心です。

銀杏を拾うときの注意点

安全に銀杏拾いを楽しむために、いくつか注意点があります。

まず先述したように、銀杏の果肉に直接触れると肌がかぶれることがあるため、拾うときや処理をするときは必ずゴム手袋を着用してください。また、夢中になると周りが見えなくなりがちです。車が通る道路など、危険な場所で拾うのは絶対にやめましょう。

そして大切なのが、拾う場所のルールです。公園内の木や街路樹は公共物であり、地面に落ちている実でも勝手に持ち帰ることが法律や条例で禁止されている場合があります。「落ちているから大丈夫」と自己判断せず、事前に銀杏拾いが許可されている場所かを確認しましょう。

くさい銀杏も原因と対策がわかれば大丈夫!秋の味覚を楽しもう

この記事では銀杏のにおいの正体が化学的な理由によること、そして、そのにおいがイチョウという「生きた化石」の生存戦略の一部であることを紹介しました。

これまでただくさいと避けていた銀杏の違った一面が知れたのではないでしょうか。
においやかぶれの対処法も、科学的な理由がわかれば納得しやすいものです。この記事をきっかけに、「イチョウの葉はなぜ黄色くなるの?」など、親子で自然の不思議を探求する秋を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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