昔は田んぼや川でよく見かけたタガメやメダカですが、最近は「あまり見かけないな」と思ったことはありませんか? 今、日本に生息するたくさんの生き物たちが、静かに姿を消そうとしています。 この記事では、「絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)」とは何か、どんな生き物がいるのかを説明します。 日本に古くから生息する生き物たちを守るため、わたしたちにできることについて一緒に考えていきましょう。
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この記事のもくじ
はじめに知っておこう!「絶滅危惧種」とはどういう意味?
「絶滅危惧種」という言葉を聞いたことはあっても、くわしい意味を知らない人も多いかもしれません。ここでは、まず基本となる言葉の意味や、生き物たちの危機レベルを示す「レッドリスト」について説明します。
「絶滅」とは子孫も含めて地球上から完全にいなくなること
「絶滅」とは、ある生き物の種が地球上から一匹残らずいなくなってしまうことです。かつて、日本に生息していたニホンオオカミのように、一度絶滅してしまった生き物にわたしたちはもう二度と会うことはできません。
そして「絶滅危惧種」とは、今すぐに絶滅するわけではないものの、生息数が大きく減っていたり、生きていくための環境が悪化したりして「このままでは絶滅してしまう可能性が高い」と判断された生き物のことです。つまり、種の存続がとても危険な状態といえるでしょう。
絶滅の危険度を示す「レッドリスト」
絶滅の危険度は生き物の種類によって異なります。
その危険度の高さを示すものさしが「レッドリスト」です。
日本版のレッドリストは環境省が科学的な調査にもとづいて作成するリストです。
これは生き物たちの現状を客観的なデータで評価し、ランク分けをしています。
特に危険度が高いとされる区分は、以下の通りです。
絶滅危惧IA類(CR):ごく近い将来、野生では絶滅する危険性がきわめて高い。
絶滅危惧IB類(EN):IA類ほどではないが、近い将来、野生で絶滅する危険性が高い。
絶滅危惧II類(VU):生息数が減るなど、絶滅へ向かう危険性が増大している。
このリストは、保護活動を進めるための重要な資料となっています。
日本の絶滅危惧種【代表的な生き物たち】
豊かな自然に恵まれた日本には、世界でもその地域にしかいない「固有種(こゆうしゅ)」が多く生息しています。しかし、その中には絶滅の危機に瀕している生き物も少なくありません。
【哺乳類】イリオモテヤマネコ、アマミノクロウサギ、ラッコなど
沖縄県の西表島(いりおもてじま)だけに生息するイリオモテヤマネコは、国の特別天然記念物です。環境省などの発表によると、交通事故や生息地の減少により、その数はわずか100頭ほどだと考えられています。
沖縄の美しい海に生息するジュゴンも、餌場となる藻場(もば:海草がたくさん生えている場所)の減少などが原因で、環境省のレッドリストでは「絶滅危惧IA類」という、きわめて絶滅の危険性が高い区分に分類され、深刻な状況です。
【出典】 「イリオモテヤマネコ10ヶ年保全計画の策定について(お知らせ)」 (環境省)
URL: https://kyushu.env.go.jp/okinawa/press_00005.html
【鳥類】トキ、ライチョウ、シマフクロウ、コウノトリなど
トキは、日本の野生では一度絶滅してしまいました。しかし、中国から譲り受けた個体を人の手で育てる人工繁殖(じんこうはんしょく)を行い、新潟県の佐渡島で自然に返す放鳥(ほうちょう)を続けた結果、再び日本の大空を舞う姿が見られるようになりました。これは、保護活動が実を結んだ希望の例です。
一方で、涼しい高山に生息するライチョウは、地球温暖化の影響で生息地が狭まり、数を減らしています。また、世界最大級のフクロウであるシマフクロウも、巣作りに必要な大木が減ったことで絶滅が心配されています。
両生類・魚類・昆虫・植物も
絶滅の危機にあるのは、大きな動物だけではありません。
世界最大級の両生類であるオオサンショウウオは、ダム開発などで川の環境が変化したことに加え、海外から持ち込まれた近縁種(きんえんしゅ:血縁の近い種類)と交雑し、日本純粋の種が減ってしまう問題も起きています。
ほかにも、きれいな水辺に生息する昆虫のタガメや、ラン科に属する植物の一種であるアツモリソウなど、昆虫や植物にも絶滅危惧種はたくさんいます。これら多様な生き物すべてが、日本の豊かな生態系を支える大切な一員なのです。
なぜ?生き物たちが絶滅の危機に瀕する「4つの原因」
多くの生き物たちが絶滅の危機に追いやられてしまう背景には、わたしたちの暮らしと深く関わるいくつかの原因が複雑に絡み合っています。
【原因1】開発による、すみかの破壊
生き物たちが絶滅の危機に瀕する原因の一つが、わたしたち人間の活動による「生息地の破壊」です。森林を切り開いて街や農地を作ったり、道路やダムを建設したりすることで、動物たちが餌を探し、子どもを育てる場所が失われてしまうこともあります。
【原因2】人間による過剰な捕獲・採取
食用や毛皮などの製品利用やペットにするなどの目的で、野生動物を必要以上に捕獲することも大きな原因です。これを「乱獲(らんかく)」といい、過去にはラッコなどが毛皮目的で激減しました。
現在、多くの野生動物の捕獲は「ワシントン条約」などで規制されています。しかし、違法な取引は後を絶たず、世界の野生動物たちを脅かしているのです。
【原因3】外来種による捕食や影響
もともとは、その地域にいなかったのに人間の手で海外などから持ち込まれた生き物を外来種(がいらいしゅ)と呼びます。ペットだったアライグマや、釣りのために放されたブラックバスなどが野生化し、日本に元々いた在来種(ざいらいしゅ)を食べたり、すみかや餌を奪ったりして生態系のバランスを崩しています。
【原因4】地球温暖化などの環境の変化
地球全体の大きな環境の変化も、生き物たちを追い詰めています。地球温暖化による気温の上昇は、ライチョウのような涼しい場所を好む生き物の生息地を奪います。また、プラスチックごみによる海洋汚染がウミガメなど海の生き物を傷つける原因にもなっているのです。
日本の絶滅危惧種を守るためにできること
絶滅危惧種の問題はとても大きく、自分に何ができるのだろうと感じるかもしれません。しかし、未来の自然を守るために、わたしたち一人ひとりにもできることがあります。
まずは「知る」ことから始めよう
最初の一歩は、関心を持ち「知る」ことです。図書館の図鑑や環境省の公式サイトで、自分の住む地域(都道府県)にどんな絶滅危惧種が生息しているのかを調べてみましょう。動物園や水族館の中には、絶滅危惧種の保護や繁殖に力を入れている施設もあります。生き物たちの現状を学ぶことが、大切な行動の始まりです。
環境にやさしい商品を選ぼう
普段の買い物で、少しだけ環境に配慮した商品を選ぶことも、生き物たちのすみかである自然を守ることにつながります。例えば、以下のような「認証マーク」の付いた商品を探してみましょう。
FSC認証マーク:環境や社会に配慮して、適切に管理された森林の木材から作られた紙製品などの印。
RSPO認証マーク:熱帯雨林の環境などに配慮して生産されたパーム油(お菓子や洗剤の原料)の印。
身近な「自然を守る」活動に参加しよう
地域で行われている自然保護活動に参加してみるのも、素晴らしい体験です。
川や海岸の清掃活動、植林、自然観察会など、親子で参加できる活動もたくさんあります。すぐに活動へ参加するのが難しくても、「ごみをポイ捨てしない」「地域の自然や生き物を大切に思う」といった心がけが、自然環境を守る大きな力につながります。
日本の絶滅危惧種を守るには小さな行動から!
この記事では、日本の絶滅危惧種の現状について、その背景にある原因、わたしたち一人ひとりができることについて説明しました。人間の活動によって、多くの生き物が絶滅の危機に追い込まれているという現実は、非常に深刻で重い課題です。
しかし、未来はわたしたちの手で変えることができます。
まず「知ること」から始め、日々の暮らしの中で少しずつ「選ぶこと」を意識し、自分にできる「行動」を積み重ねていくことが大切です。その小さな一歩が、日本の豊かな自然や多様な生き物たちの未来を守る大きな力となるでしょう。



































