豊臣秀吉は何した人？農民から天下人までの道のりや人柄エピソード

「鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス」 これは、後の時代につくられた、豊臣秀吉（とよとみ ひでよし）の性格を表す有名な句です。 歴史の授業で名前は知っていても、「実際、どんなことをした人なの？」と疑問に思う人もいるかもしれません。秀吉は身分の低い家に生まれながら、知恵と行動力で多くの大名をまとめた天下人（てんかびと）です。 戦国の乱れた世の中で、どうやって秀吉は人々をまとめ、大きな力を手にしていったのでしょうか。その道のりを一緒にたどってみましょう。

豊臣秀吉はどんな人？

天下統一を成し遂げた秀吉ですが、その出発点はとても低い身分でした。
ここでは秀吉の生い立ちや信長との出会い、そして人々を引きつける性格について見ていきます。

貧しい家に生まれた少年時代

豊臣秀吉は、戦国時代の1537年ごろに尾張国（おわりのくに：今の愛知県西部）で生まれました。幼いころの名前は「日吉丸（ひよしまる）」といいます。

父は木下弥右衛門（きのした やえもん）と呼ばれ、低い身分の兵士である足軽（あしがる）※だったとも、農民だったとも伝わっています。いずれにしても生活は苦しく、父を早くに亡くしたこともあり、子ども時代は苦労が多かったといわれています。

※足軽（あしがる）：戦国時代の位の低い兵士のこと。普段は農業などをして生活し、戦のときだけ兵士になる人も多くいた。

織田信長との出会いと出世街道

成長した日吉丸は「木下藤吉郎（きのした とうきちろう）」と名を改めます。そして勢力を広げていた織田信長（おだ のぶなが）に仕えることになりました。

最初は草履（ぞうり）を管理するなど下働きでしたが、持ち前の明るさと行動力で信長の信頼をつかみます。たった一夜で城を築いたと伝わる「墨俣一夜城（すのまたいちやじょう）」の話は有名です。

やがて藤吉郎は「羽柴秀吉（はしば ひでよし）」と名を変え、信長の家臣として数々の戦で功績をあげていきました。

人の心をつかむのが上手な秀吉の性格

秀吉が特に優れていたのは、人との関わり方です。身分の低い者や敵だった武将にも気さくに接し、うまく味方に引き入れるのが得意でした。

妻の「ねね（後の北政所：きたのまんどころ）」は、まだ身分が低かったころから秀吉を支え続けた存在です。秀吉は天下人になってからもねねを大切にし、政治の相談を文に書いて送ることもありました。

豊臣秀吉は何をした人？政策や有名なできごとを見てみよう

秀吉は信長の死後、勢力を広げ、国内をまとめるための仕組みづくりを進めました。ここでは代表的なできごとを紹介します。

本能寺の変と「中国大返し」

1582年、信長が家臣の明智光秀（あけち みつひで）に討たれる「本能寺の変」が起こります。遠くで戦っていた秀吉はすぐに敵と和解し、短期間で京都へ引き返しました。これを「中国大返し」といいます。
この素早い行動で秀吉は明智光秀を打ち破り、信長に代わって大きな存在感を示しました。

天下統一

明智光秀を打ち破った後、秀吉はライバルの武将を次々に倒し、徳川家康（とくがわ いえやす）とも和解しました。

1590年には、関東の北条氏を降伏させる「小田原征伐」に成功します。これによって、本州・四国・九州の大部分を支配下におき、戦国時代を終わらせました。このことを「天下統一」と呼びます。

国のルールを整えた「太閤検地」と「刀狩」

天下人となった秀吉は、戦で乱れた社会をまとめるために新しいルールを作りました。

・太閤検地（たいこうけんち）
全国の田畑の広さや収穫量を調べ、同じ基準で年貢（ねんぐ：税金のこと）を集められるようにしました。豊臣政権の経済を支える仕組みです。

・刀狩（かたながり）
農民から刀や鉄砲などの武器を取り上げた政策です。これにより一揆（いっき：反乱）を防ぎ、「武士は戦い、農民は農業」と役割を分けることを進めました。

巨大なシンボル「大坂城の築城」

秀吉は、自分が天下人であることを世の中に示すために現在の大阪に巨大で豪華な「大坂城」を築きました。
天守閣（てんしゅかく）※は金色に輝き、城の中も豪華な飾りでいっぱいだったそうです。この城は、秀吉の権力の象徴であると同時に、政治や経済の中心地として大いに栄えました。

※天守閣（てんしゅかく）：城の中心にある、ひときわ高くて立派な建物のこと。

海外との関わり方を変えた「バテレン追放令」と「朝鮮出兵」

秀吉の目は内政だけでなく、海の向こうにも向きました。
当時広がっていたキリスト教の取り締まりを強めるため、外国の宣教師に帰国するよう命じる「バテレン追放令」を出します。

そして晩年の大きなできごとが「朝鮮出兵」です。秀吉は、明（当時の中国）を従えようと考え、朝鮮半島に大軍を送ったと伝わっています。しかしながら、成果は上がらず、多くの犠牲者を出し、秀吉の死により終わりを迎えました。

もっと知りたい！豊臣秀吉にまつわるエピソード

秀吉の人物像は、数々の逸話（いつわ）からも見えてきます。ここでは有名な3つのエピソードを紹介します。

信長の草履を懐で温めた話

まだ身分が低かった藤吉郎のころ、彼は信長の草履（ぞうり）を管理する係をしていました。ある寒い冬の日、信長が外に出ようとして草履に足を入れると、いつもより温かく感じました。不思議に思った信長が理由をたずねると、藤吉郎が自分の懐（ふところ）で冷たい草履を温めていたことが分かったのです。主君を思う細やかな気配りに、信長はとても感心したといわれています。

派手で豪華！金色の茶室と盛大な花見

秀吉は、人々を「あっ！」とおどろかせる派手な演出が大好きでした。なんと、壁や天井、お茶の道具まで、すべてが金色の茶室を造らせたことがあります。しかもこの茶室、分解してどこにでも持ち運べる組み立て式だったというからおどろきです。また、京都の醍醐寺（だいごじ）というお寺に、全国から千人以上もの人々を招いて盛大な花見を開いたことも有名です。

シンボルマーク「千成びょうたん」の由来

戦国武将は、戦場で自分の居場所を知らせるために「馬印（うまじるし）」という大きな旗印をかかげていました。秀吉の馬印は、たくさんのひょうたんを束ねた「千成びょうたん」で有名です。

一説には、秀吉が戦で城を一つ落とすたびに、腰につけたひょうたんを一つずつ増やしていったことがあり、それが「千成びょうたん」という馬印につながったといわれています。次々にひょうたんが増えていく様子は、まるで秀吉自身の出世物語のようですね。

豊臣秀吉から現代の私たちが学べること

豊臣秀吉は、低い身分から天下人へと出世した、日本史の中でも珍しい人物です。
その成功は、優れた知恵や行動力だけでなく、多くの人々をひきつけ、味方にする才能にも支えられていました。

秀吉は戦国時代を終わらせ、社会の仕組みを整えるという大きな功績を残しました。その一方で、朝鮮出兵という大きな失敗も経験しています。彼の人生に見られる成功と失敗の両方から、私たちは多くのことを学ぶことができます。

「どうすれば、みんなの心を一つにできるだろう？」
「大きな目標を達成するために、今できることは何だろう？」

秀吉が築いた大坂城や、盛大な花見を開いた京都の醍醐寺は、今も歴史を伝える場所として多くの人が訪れます。休日に家族や友達と足を運び、彼が生きた時代に思いをはせてみるのはいかがでしょうか。
現地を歩いてみると、教科書だけでは気づけない、歴史の空気を感じられるかもしれません。