毎年秋になると、ニュースでノーベル賞が大きな話題になりますね。 けれども、「種類はいくつあるの?」「どんな人がもらえるの?」と聞かれると、くわしくは知らない人も多いかもしれません。 日本のノーベル賞受賞者(個人)はこれまで30人(アメリカ国籍を取得した人も含む)にのぼります。 この記事では、物理学賞から経済学賞まで6種類ある賞の特徴や、私たちの生活にもつながる日本人受賞者の功績、そして豆知識までノーベル賞について、わかりやすく紹介します。
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まずは、ノーベル賞がどうやって始まったのかを見ていきましょう。
アルフレッド・ノーベルの遺言から始まった賞
ノーベル賞は、スウェーデン出身の発明家で化学者だったアルフレッド・ノーベル(1833-1896)という人物の遺言(ゆいごん)によって始まりました。
彼のたくさんの遺産をもとに「人類のためにとても役立つことをした人」へ贈る賞として、1901年にスタートしたのです。
最初は物理学、化学、生理学・医学、文学、平和の5つの分野でした。
その後、1968年にスウェーデンの銀行が経済学賞を創設し、今では全部で6種類になっています。
ノーベル賞が創設された背景
アルフレッド・ノーベルは、工事現場などで安全に使える爆薬「ダイナマイト」を発明した人物です。この発明で、彼はヨーロッパでも指折りの大金持ちになりました。
しかし、ダイナマイトは戦争の道具としても使われ、多くの人の命をうばうことにもなりました。自分の発明が兵器として使われることに心を痛めていたノーベルは、「自分の財産は、人類の平和や進歩のために役立ててほしい」と考え、この賞を作ることを思いついたといわれています。
選考から授賞までの流れ
ノーベル賞は、自分から「賞がほしい!」と応募することはできません。世界中の大学の先生や過去の受賞者といった専門家からの「推薦」によって、候補者が決まります。だれが候補になっているかは、50年間も秘密にされるルールです。
毎年10月のはじめに各賞の受賞者が発表され、12月10日ノーベルの命日に授賞式が行われます。平和賞だけはノルウェーのオスロで、他の5つの賞はスウェーデンのストックホルムで開かれるのが伝統です。受賞者には、賞状、金メダル、そして賞金が贈られます。
ノーベル賞の種類と特徴
それでは、6種類のノーベル賞が、それぞれどんな功績に贈られるのかを見ていきましょう。
物理学賞
物質を構成する基本的な仕組みや、広い宇宙の成り立ちなど、世界の根本的なナゾを解き明かす発見や発明に贈られます。日本人は12名(アメリカ国籍を取得した人も含む)がこの賞を受賞しています。
日本人で初めてノーベル賞を受賞したのは、物理学者の湯川秀樹(ゆかわ ひでき)博士です。原子の中心にある原子核の中で、プラスの電気を持つ陽子どうしがバラバラにならないように結びつけている「中間子」という粒子の存在を論理的に予言し、1949年に受賞しました。
化学賞
新しい物質を作り出したり、化学反応の仕組みを解き明かしたりして、私たちの生活を豊かにする研究に贈られます。
身近な例が2019年に受賞した吉野彰(よしの あきら)博士です。吉野博士は、スマートフォンやノートパソコンに欠かせない「リチウムイオン電池」を開発しました。軽くて何度も充電できるこの電池のおかげで、私たちの生活はとても便利になりました。
生理学・医学賞
生命の不思議な仕組みを解き明かしたり、病気の原因や新しい治療法を見つけたりして、人々の健康と命を守る研究に贈られます。
2012年に受賞した山中伸弥(やまなか しんや)博士は、人間の皮膚などの細胞から心臓や神経など、体のあらゆる部分に変化できる「iPS細胞」を作り出すことに成功しました。この発見は、これまで治せなかった病気やケガの治療(再生医療)につながるものとして世界中から期待されています。
文学賞
特定の一つの作品ではなく、その作家がこれまでに発表してきた作品全体が評価されて贈られます。
日本では、1968年に「雪国」などで美しい日本の自然や人の心を表現した川端康成(かわばたやすなり)氏が受賞しました。また、1994年には戦後の社会と人間のあり方を深く問い続けた大江健三郎(おおえけんざぶろう)氏が受賞しています。
平和賞
国と国との友好を深めたり、戦争をなくすために努力したり、平和のために大きく貢献した個人や団体に贈られます。
1974年、日本の総理大臣だった佐藤栄作氏が受賞しました。「非核三原則(核兵器をもたず、つくらず、もちこませず)」を掲げ、平和のために努力したことが評価されたのです。
2017年にはICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)が受賞しました。この団体には多くの日本人も参加しており、核兵器の非人道性を訴え続けた活動が評価されました。
経済学賞
正式には「アルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞」といい、ノーベルの遺言にはなかった賞です。人々のお金の使い方や社会における景気の動きなどを分析し、経済の分野で重要な貢献をした研究者に贈られます。これまで、この賞を受賞した日本人はいません。
2025年、新たに2人の日本人がノーベル賞を受賞!
2025年10月、うれしいニュースが発表されました。新たに2人の日本人がノーベル賞に選ばれたのです。
【生理学・医学賞】坂口志文(さかぐち しもん)博士
坂口博士は、免疫が暴走しないように働く制御性T細胞を発見し、自分の体をまちがって攻撃しないように保つしくみを解き明かしました。
この功績により、米国のメアリー・E・ブランコウ氏、フレッド・ラムズデル氏と共同受賞しました。
この発見は、自己免疫疾患の新しい治療法やがん免疫療法の開発に役立つと期待されています。
【化学賞】北川進(きたがわ すすむ)博士
北川博士は、金属有機構造体(MOF)という、細かい穴がたくさんある多孔性材料(たこうせいざいりょう)を開発し、リチャード・ロブソン氏、オマー・ヤギー氏とともに受賞しました。MOFは「スポンジ」のように目に見えないガスをとらえてためておくことができ、二酸化炭素の回収、空気や水の浄化、エネルギーの貯蔵など、環境問題の解決に役立つ技術として注目されています。
ノーベル賞に関する豆知識
最後に、ノーベル賞にまつわる豆知識をいくつか紹介します。
賞ごとに違うメダルのデザイン
受賞者に贈られる金メダルは、賞ごとにデザインが少しずつ違います。
メダルの表面には創設者アルフレッド・ノーベルの横顔が刻まれていますが、平和賞と経済学賞の肖像は、他の賞とは少し違うデザインになっています。
裏面のデザインは賞ごとに異なり、例えば物理学賞と化学賞のメダルには「科学の女神が、自然の女神の顔をおおう布をそっと持ち上げる姿」が描かれています。科学の力で自然の秘密が明らかになる瞬間を表現しているそうです。
ノーベル賞の最年少受賞者は?
歴代で最も若い受賞者は、2014年に平和賞を受賞したパキスタン出身のマララ・ユスフザイさんです。受賞した当時、彼女はまだ17歳でした。マララさんは、女性や子どもが教育を受ける権利を命がけで世界に訴えました。その勇気ある行動が認められました。
ノーベル賞を辞退した人はいるの?
こんなに名誉な賞ですが、過去には受賞を「いりません」と断った人もいます。
例えば、1964年に文学賞に選ばれたフランスの作家ジャン=ポール・サルトルは、「いかなる組織からも栄誉を受けない」という信念から辞退しました。また、1973年にはベトナム和平交渉の功績で平和賞に選ばれたベトナムの政治家レ・ドゥク・トが、「国内にまだ平和が訪れていない」という理由で辞退しています。
ノーベル賞の種類を知れば、世界のニュースがもっと身近になる
この記事では、ノーベル賞の6つの種類と、その背景にある物語について紹介しました。ノーベル賞は、ダイナマイトの発明者アルフレッド・ノーベルが残した「人類の進歩と平和」への願いから始まった世界でも権威ある賞です。その種類は物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、文学賞、平和賞、経済学賞の6つに分かれています。
多くの日本人受賞者たちの功績が、現代の私たちの生活や科学技術の発展に深く結びついていることも感じられたのではないでしょうか。
ノーベル賞の種類や歴史を知ると、毎年秋に発表される受賞者のニュースが、もっと身近に感じられるはずです。ぜひ、今年の受賞者がどんな功績で世界に貢献したのか、注目してみてくださいね。



































