あくびはなぜ出るの?解明されていないあくびの仕組み

公開日: 2023/04/27

朝目覚めた時や夜眠くなってきた時に、無意識に「あくび」が出ることがあります。大きく口を開けるこの「あくび」は、一見すると何のためにしているのかよくわからない行動です。
長い時間のなかで進化してきた生物が「あくび」をする機能をもっている以上、あくびには何らかの役割がある可能性があります。この記事では、あくびが起こる仕組みやその効果に関するいろいろな説を紹介します。

目次
あくびが出る仕組み
あくびは親しい人ほどうつりやすい?
なぜあくびをすると涙や鼻水が出るの?
あくびがもたらすリラックス効果
あくびは人間の生活を良くするテクニック

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あくびが出る仕組み

実は、あくびが出る仕組みは現在でも完全には解明されていません。それでも、世界中の科学者があくびの研究に取り組んできた結果、いくつかの有力な説が提案されています。

・脳の酸素不足を知らせる役割

人間が生きていくためには、呼吸で取り入れた酸素を全身に送ることが必要です。酸素が不足すると、人間の体を構成する細胞機能の維持ができなくなってしまいます。

そのような問題を避けるために、あくびには脳の酸素不足を知らせる役割があるのではないか、という説があります。この説と関係が深い現象として、脳の細胞に酸素を送る血管の病気とあくびの関係が挙げられます。脳のなかの血管が破れてしまう脳出血という病気や、脳内の血管が詰まってしまう脳梗塞という病気の前兆(病気の深刻な症状が出る前のサイン)として、眠くないのにあくびが出ることもあるようです。

ただ、実験ではこの説を確認できる結果が出ていないので、この説だけであくびのメカニズムを説明することは難しいようです。

・意識をはっきりさせる役割

あくびには意識をはっきりさせる働きがあるのではないか、という説もあります。あくびをしている人の脳の活動を調べると、覚醒時(脳が目覚めて活動的な状態)の脳の活動パターンが観察されます。例えば、睡眠不足や疲労、退屈が原因で眠気を感じた時に、脳を覚醒状態にするためのきっかけがあくびなのかもしれません。

人間以外の動物もあくびをすることから考えると、捕食者から攻撃される危険がある場合にできる目覚まし法の1つとしてあくびが進化してきた可能性もあります。授業中にあくびが出てしまうのも、この働きによって脳を覚醒させたいという体からのメッセージではないでしょうか。

・脳の温度調節の役割

健康な人の体温はおよそ36℃ぐらいに保たれています。この温度から大きくずれてしまうと、体が十分に機能しなくなってしまいます。特に脳は思考や体全体の調節を担当する重要な器官なので、その温度を適切に保つことが大切です。
脳の温度を調節するためには、脳につながる顔や首回りの血管が利用できます。あくびによって鼻や喉の空気を冷たくて新鮮なものと入れ替えることで、脳に流れる血液を冷やしているという説が提唱されています。

この説を確かめるために周囲の温度を変えたり、首の周りを温めたり冷やしたりする実験を行ったところ、人間は暖かい場合の方がよりあくびが出やすいことがわかりました。暖かい部屋で過ごしていると、ついあくびが出てしまいそうになるのも納得できます。

あくびは親しい人ほどうつりやすい?

あくびはうつる(伝染する)と言われています。実際に、目の前で誰かがあくびをしたときに、自分もあくびをしたくなった経験がある人は多いでしょう。

・解明されていないあくびがうつる仕組み

しかし、「なぜあくびがうつるのか」については詳しくわかっていません。先ほど紹介した、脳の酸素不足や暖かさがあくびの原因だとすると、同じ場所にいる人はそれぞれ独立してあくびをしているとも考えることができます。実際に、気温が高いほどあくびがうつりやすいという実験結果も報告されています。

・共感する脳のはたらきによってあくびがうつるという説

あくびには温度調節のような機能だけでなく、コミュニケーション手段としての役割もあると考えられています。人間やサルなど高等な動物の脳の働きを調べた研究によると、他人(もしくは他のサル)のことを考える能力が高い動物で「あくびがうつる」傾向があるようです。自分とは違う誰かの存在を認識して、他の誰かに起こったことを自分に当てはめて考えるのは動物の脳の働きのなかでも特に高度な機能です。誰かがあくびをしたとき、その行動に共感して自分もあくびをする現象は、人間が特に高いコミュニケーション能力を持っていることを示しているのかもしれません。

なぜあくびをすると涙や鼻水が出るの?

大きなあくびをすると、涙や鼻水が出てしまうことがあります。ただ口を開けただけのように思えますが、なぜ涙や鼻水も出てしまうのでしょうか?

・顔の筋肉が涙腺も一緒に動かす

あくびをする時に大きく口を開けると、口周りの筋肉の動きと連動して顔全体の筋肉が使われます。この時、涙を貯めておく「涙のう」と呼ばれる袋が圧迫されるので、涙が目に流れていくことがあります。

・涙が多いと鼻水になる

涙は「涙腺」という場所で作られて目のなかに送られます。涙には目を保護する働きがあるので、常に十分な量が必要ですが多すぎても目からあふれてしまいます。そこで、さきほど紹介した「涙のう」に一旦涙を貯めたあと、鼻のなかに流れていく経路が用意されているのです。増え過ぎた涙は、この経路を通って鼻水として排出されます。あくびだけで鼻水がでることは少ないかもしれませんが、大泣きしたときに涙と鼻水が一緒に出てくることはよくあります。

あくびがもたらすリラックス効果

あくびは緊張やストレスを和らげるリラックス効果にも期待できます。腕や背筋を伸ばしながら大きく口を開けて深呼吸すると、気持ちも体もすっきりするでしょう。

あくびには脳の状態を切り替える効果があるとも言われています。朝起きて睡眠から活動状態に移る時や、夜眠くなって活動から睡眠に切り替える時にあくびが効果を発揮します。長時間勉強を続けて疲れてきたと感じた時は、意識的にあくびをして脳の状態をリフレッシュするのがおすすめです。

あくびは人間の生活を良くするテクニック

あくびは何のために行動なのか、現在のところ明確な答えは出ていません。しかし、あくびには人間にとって役に立つ機能があることは間違いありません。睡眠と覚醒を切り替えるきっかけとしてだけでなく、脳を良い状態に保ち、集中力を高めるためにも効果的です。

また、あくびのコミュニケーション機能も無視できません。自分があくびをした時に周囲の人もあくびをしてくれると、何か共感できたような気持ちになります。言葉を交わすのとは少し違う、人間関係を深める手段の1つと言えます。

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