人はなぜ夢をみるの?脳の働きから睡眠のなぞを知ろう!
公開日: 2023/07/29
人はなぜ夢を見るのでしょうか?夢という身近な現象に対するこのシンプルな疑問には、現在でも明確な結論が出ていません。夢の不思議を解明しようと多くの学者達がこの問題に取り組んでおり、神経科学や心理学といった幅広い分野で研究が行われています。
この記事では、これまでの研究で明らかになった夢と睡眠中の脳活動の関係や、夢の内容に影響を与える要因を解説します。
睡眠時に人はなぜ夢を見るの?
そもそもなぜ人は寝ている間に夢を見るのでしょうか。その疑問について迫っていきます。
・なぜ見るのかわかっていない部分が多い
人が夢を見る理由については、多くの研究に基づいていくつかの説が提唱されています。代表的な説は、起きているときに体験したことを脳の中で整理し、記憶を整えているというものです。この説によれば、確認のために呼び起こされた記憶が夢の内容になっている可能性があります。例えば、勉強に使ったノートやプリントの内容を改めて確認しながら、テストに向けて内容を整理しているようなイメージが近いかもしれません。
その他の説として、20世紀の著名な精神分析学者、精神科医であるフロイトが提唱した「夢はその人の願望の表れである」というものがあります。フロイトの考えでは、夢には普段隠れている部分も含めた人の意識が反映されており、夢の内容を分析することでその人を深く理解できるとされています。
・「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」が関係しているとされる
人の夢について分かっている重要なポイントの一つは、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類の睡眠が夢と関係している点です。人間を含む哺乳類は、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の脳と体の状態が異なる2つの睡眠を使い分けて、脳と体の休息を行っています。この2つの睡眠と夢の関係を調べた結果、睡眠中の脳の活動が夢に深く関わっていることが分かってきました。
・「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の違い
「レム睡眠」は、英語のRapid Eye Movement(急速眼球運動)の頭文字REMから名づけられました。その名の通り、レム睡眠中は眼球が急速に動きます。レム睡眠中の脳の活動は活発で、寝ている間も脳は何らかの情報処理をしていると考えられています。ただし、脳の活動に合わせて体が動いてしまわないように、この時は運動に関わる情報の伝達が抑えられています。入眠と運動機能をブロックするタイミングがずれると、脳は活発に活動している覚醒状態なのに体が動かせない状態=金縛りになってしまうことがあります。
反対に、「ノンレム睡眠」は、Non-Rapid Eye Movementから名づけられたもので、急速眼球運動が観察されない睡眠です。ノンレム睡眠中は脳の活動が比較的落ち着いていて、このタイミングで脳が休息をとっていると考えられています。
睡眠中は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」が交互に現れるサイクルが繰り返されます。1サイクルにかかる時間は90分~120分ぐらいと言われています。
寝ている時間のどのタイミングで夢を見ている?
睡眠中のどのタイミングで夢を見るのか知っていますでしょうか。その疑問に迫っていきます。
・「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」のいずれの睡眠周期でも夢は見る
実は、人は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」のどちらのタイミングでも夢を見ます。ただし、レム睡眠中の方がノンレム睡眠中よりも夢を見る頻度が高く、レム睡眠が夢と密接に関係していることが示されています。
ノンレム睡眠中の夢は単純な内容が多くなりますが、これには脳の活動が抑えられていることが影響していると考えられています。一方、レム睡眠時のように脳が活発に働いている状態では、稀に夢の中で夢であることに気が付くこともあります。この現象は「明晰夢」と呼ばれ、人によっては夢の内容を意識的にコントロールできることもあるようです。
・起きた後に夢を覚えていることが多いのは「レム睡眠」のときの夢
「レム睡眠」のタイミングで見ていた夢は、起きた後にどのような夢を見ていたかを思い出しやすい性質があり、反対にノンレム睡眠中に見た夢は記憶に残りにくく、夢を見ていたことを実感しにくいようです。
この違いが生まれる理由は、脳の活動の差に加えて、睡眠から目覚めるタイミングも関係しています。「レム睡眠」は比較的浅い眠りで、起きる直前に現れやすいため、起きた後も記憶が残っているケースが多くなります。反対に「ノンレム睡眠」は深い眠りなので自然に目が覚めることは少なく、目覚まし時計など外的刺激によって無理矢理起こされることになります。このようなケースでは、外的刺激に意識が向いてしまい、夢の内容を忘れやすくなる可能性があります。
良い夢を見たい!良い夢を見る方法はあるの?
意図的に良い夢を見たいと思ったことがある人もいるのではないでしょうか。その疑問に迫っていきます。
・良い夢を見るイメージをしてから眠る
夢の内容がどのように決まるのかについて、明確なメカニズムは分かっていませんが、一つ明らかなことは、脳が過去に経験した記憶がベースになっていることです。つまり、脳の中にもともと蓄積されていた情報が何らかの形で現れたものが夢として知覚されます。
良い夢を見るためには、脳の中に快適な情報を多く増やすことが効果的だと言われています。友達とどこかに遊びに行って楽しい思い出ができた日には、その思い出に似た楽しい夢を見やすくなります。夜眠る前に良い夢につながる楽しいことをたくさんイメージすれば、夢に出てくる記憶も楽しいものの比率が大きくなり、結果として良い夢を見る可能性も大きくなります。
・ストレスをため込まないようにする
良い夢を見る方法を反対に考えると、悪いことを考えていると悪夢を見やすくなるといえます。嫌な経験をした直後には、夢の中でもそれを思い出してしまうことが頻繁に起こります。悪い夢を見ないようにするために、普段の生活でストレスをため込まないように気を付けることが効果的です。嫌な事があった日は、夜眠る前に好きな音楽を聴いたり、趣味に時間を割いたりするようにしてストレス発散を心がけましょう。
・快適な睡眠環境を作る
夢の内容には睡眠時の心身の状態が大きな影響を与えます。例えば、暑すぎる、または逆に寒すぎる環境で寝てしまうと、夢の内容にもそれらが反映されやすくなります。部屋の温度や暗さ、枕や布団などの寝具を自分にとって快適な状態に保つことは、夢の内容も快適なものにするという観点でも重要です。
夢と上手に付き合って夢を楽しもう
人間が見る夢には、いまだに未解明の謎が残されています。特に、夢を見ることにどんな役割があるのかについては、今後の研究の余地が多く残されています。
一方で、夢を見ている時の脳や体の状態や、夢の内容に影響する要因は明らかにされつつあります。現在では、心と身体の状態を適切にコントロールできれば、悪い夢を見にくく、良い夢を見やすくなる状態を作り出すことは十分可能だと考えられています。今夜眠る前には、良い夢を見られるようにポジティブな想像を膨らませてみてはいかがでしょうか。
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