【理科実験】オレンジジュースでDNA抽出にチャレンジしよう!

公開日: 2019/08/09

「DNA検査」とか、「遺伝子検査」といった言葉を聞いたことがあるかもしれません。これらの検査によって、遺伝した体質などの情報を調べて、将来かかりやすい病気があるのかどうかなどを調べることもできるといわれています。今回の実験では、そのDNAを取り出してみましょう。「専門的な知識や機械が無いとできないのでは?」と思うかもしれませんが、実は家庭でも簡単に行えます。それでは、身近な材料と道具を使って、DNAを抽出する方法やDNAの基礎知識について解説していきます。

目次
DNAの基礎知識
DNAの抽出実験に必要なもの
オレンジジュースを使ったDNA抽出実験の手順
子供と一緒にDNA抽出実験を行うときのポイント
簡単な理科実験でDNAが見える触れる!わくわくしながら自由研究をしよう

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DNAの基礎知識

DNAとは

「DNA」は、「Deoxyribo Nucleic Acid」の頭文字をあわせたもので、日本語では「デオキシリボ核酸」といいます。どのような生物でも必ずDNAを持っていて、親から子へ受け継がれる遺伝情報が含まれています。「遺伝子」や「DNA」などは混同しやすいので、少し詳しく説明していきましょう。

DNAはどこにあるの?

私たちの身体は、細胞でできています。髪の毛や皮膚、骨や内臓、筋肉、血管など、役割は違っていても、それらも全て細胞で構成されており、ヒトの身体には約60兆個もの細胞があるといわれています。この細胞の中には、「核」と呼ばれる部分があり、その中には棒状の形をした「染色体」があります。

染色体の数は生物の種類によって違っていますが、ヒトの染色体の場合には、通常一つの細胞に46本の染色体が入っています。そのうちの44本は同じ染色体が2本ずつのセットになっていて「常染色体」と呼ばれています。残りの2本は「性染色体」と呼ばれていて、男性であればX染色体とY染色体が1本ずつ、女性であればX染色体が2本というように、性別によって違う染色体を持っています。

そして、この染色体を構成しているのがDNAなのです。

まとめると、「細胞の中の核には染色体があり、その染色体を構成しているのがDNA」ということになります。

DNAの構造

テレビなどで、二重のらせん状になった鎖の画像などを見たことはありませんか?DNAは、2本の鎖が絡み合うようにして長いひも状の形をしていて、一つの染色体の中にたたみ込まれています。これを伸ばすと、なんと約2mにもなるのです。

二重らせんになっている鎖は、「塩基」「糖(デオキシリボース)」「リン酸」と呼ばれる化合物が一つずつ結合している「ヌクレオチド」という物質が連なってできています。このヌクレオチドの中のリン酸と糖が他のヌクレオチドとも結合して長くなり、1本の鎖状になります。

また、ヌクレオチドの中の塩基には4種類あります。それぞれ「アデニン(A)」「チミン(T)」「グアニン(G)」「シトシン(C)」と呼ばれていて、一般的に「ATGC」と略されます。この塩基も、特定の塩基と結合しやすい性質を持っており、「AとT」、「GとC」の組み合わせでしか結合しません。さらに塩基は2本ある鎖のうち、相手の鎖の塩基としか結合しません。こうして2本の鎖がはしごのようにつながり、ねじれたようならせん状になっていくのです。
ちなみに、DNAの中で結合している「AT」と「GC」の組み合わせは同じ量だけ存在し、このことを「シャルガフの法則」といいます。

DNAの働き

DNAの二重らせんの鎖には、1本の鎖あたり約30憶個ものATGC塩基が並んでいます。ATGCがつながっている並び方(塩基配列)が遺伝情報を伝えるための暗号になっていて、生物の細胞を作るためのタンパク質についての指定をしているのです。そして、このような働きをしているDNAが「遺伝子」です。遺伝子によって、親の持つ形質の特徴や、体質などの子孫への継承が決まります。

では、全てのDNAが遺伝子なのかというと、そうではありません。遺伝子は、DNA全体の中の2%程度といわれていて、それ以外のDNAの役割については少しずつわかってきている段階です。

DNAの抽出実験に必要なもの

DNAはさまざまな生物から簡単に取り出すことができます。今回は、オレンジジュースからDNAを取り出す実験をしてみましょう。必要な道具は次のものになります。

・コップ
・オレンジジュース
・無水エタノール
・割り箸

オレンジジュースを使ったDNA抽出実験の手順

実験の手順

1.コップにオレンジジュースを注ぐ
2.(1)のオレンジジュースに割り箸を使って無水エタノールをゆっくり注ぐ
※2つの液体が混ざらないように注意すること
3.しばらく放置しながら、コップの中を観察する

しばらくすると、無水エタノールの方に白っぽいかたまりが浮き上がってくることがわかります。これがDNAです。DNAは水に溶けやすいのですが、エタノールには溶けにくいという性質を利用した実験になります。抽出できたDNAは触るとどうなのか、コップから出して乾燥させるとどうなるのか、などを試してみましょう。

この実験の参考動画がありますので、こちらを見てから実験をするとよいでしょう。お子さんも「動画と同じようにできるかな?」とわくわくしながら取り組むことができますよ。

応用編:固形物のDNAを抽出する方法

ブロッコリーや玉ねぎ、バナナなどの固形の材料を使ってもDNAの抽出が行えます。固形物で実験を行う場合は、固形物をすりつぶして抽出液を作り、ろ過してから無水エタノールで分離していきます。手順を簡単にご紹介しますので、実験のバリエーションを増やすときに参考にしてみてください。

1.最初にすり鉢とすりこぎを使って材料を細かくする
2.2~4%濃度の食塩水で作った抽出液(塩化ナトリウム水溶液)に細かくした材料を混ぜ、ゆっくりとかき混ぜる
3.(2)の抽出液をフィルターやガーゼでこす
4.(3)でこした液に、中性洗剤(抽出液が100㏄なら小さじ2杯程度が目安)を入れて混ぜる

ここまでできたら、オレンジジュースを使ったときと同じように無水エタノールを加えていきます。固形物の場合には、中性洗剤を入れることによって、界面活性剤が細胞核の膜を壊し、DNAを抽出しやすくなります。

さまざまな材料で抽出できたDNAの量を比べてみたり、無水エタノール以外でもDNAの抽出ができるのかを調べてみたりして、実験してもよいでしょう。どの材料の組み合わせが一番たくさんのDNAが取り出せるのか、それはなぜかということをまとめてもよいと思います。

子供と一緒にDNA抽出実験を行うときのポイント

・オレンジジュースと無水エタノールが混ざらないように丁寧に作業しましょう
・もしも2つの液体が混ざってしまったら、やり直しましょう
・無水エタノールは飲用ではありませんので、子供が誤って飲まないように注意しましょう
・無水エタノールは引火しやすいため、火の近くでは使わないようにしましょう
・無水エタノールは揮発性が高いため、直接手で触ったりせず、すぐに容器のふたをしましょう
・揮発した無水エタノールの成分が空気中に残ることがあるため、実験終了後は換気しましょう

簡単な理科実験でDNAが見える触れる!わくわくしながら自由研究をしよう

DNAというと、なんとなく難しく感じてしまうかもしれません。でも、目で見えて触れたりすることができれば、ぐっと身近なものに感じるはずです。実験を通して、DNAと遺伝子の違いを理解する手助けとなるでしょう。家族でお互いに似ているところなどを挙げながら、「ここの遺伝情報が伝わったのかな」と話し合ってみても楽しいでしょう。ぜひ夏休みの自由研究のテーマとして、検討してみてください。

参照:
NHK高校講座 生物基礎 『生物と遺伝子』
https://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/seibutsukiso/archive/resume008.html

国立研究開発法人産業技術総合研究所  未来の科学者のために 『遺伝子の正体』
https://www.aist.go.jp/science_town/scientist/scientist_01/scientist_01_01.html

プレシジョン・システム・サイエンス株式会社 『バイオ基礎講座 DNAから応用まで 遺伝子ってなんだろう?』
https://www.pss.co.jp/sc_bio/index.html

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