海の水はなぜしょっぱいの?豆知識と海水を使った3つの実験

公開日: 2022/11/30

海水浴などで思わず海水を飲んでしまい、海水の塩辛さや苦さにびっくりしたことはありませんか。海の水は、なぜしょっぱいのでしょうか。またどのくらいの塩分が含まれているのでしょうか。

目次
海の水はなぜしょっぱいの?
海水の塩分濃度はどれくらい?
海水の塩分濃度は変化しない?
海水を使った実験をしよう!
海はさまざまな分野につながる研究テーマ

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海の水はなぜしょっぱいの?

海の水には、食塩の成分である塩化ナトリウムが溶けています。では、なぜ海水には塩化ナトリウムが溶けているのでしょうか。

その答えは、海の成り立ちにあるといわれています。いまから約46億年前、誕生してまもない地球には直径数キロメートルほどの微惑星が次々と衝突し、地表はどろどろの熱いマグマでおおわれていました。非常に高温であるため水は蒸発し、水蒸気として上空に存在していました。

その後、微惑星の衝突が減ってくると、地表の温度もだんだん下がり始めます。数百万年かけて地表の温度が100度くらいになると、それまで水蒸気として存在していた水が雨となって地表に降り注ぎました。雨は約1000年ものあいだ降り続け、その結果地球に海が誕生したのです。

当時の大気には塩素ガスが含まれており、雨はその塩素ガスを溶かして塩酸の雨となって降りました。そのため、生まれてすぐの海は酸性でした。大昔の海の水は今のようにしょっぱいのではなく、酸っぱかったのです。

その後長い時間をかけて、酸性の海は岩石に含まれるナトリウムで中和されていきました。つまり塩化ナトリウムが生成されて、現在のしょっぱい海水になったのです。

海水の塩分濃度はどれくらい?

海水の塩分濃度は、約3.4パーセント です。みそ汁の塩分濃度は0.8~0.9パーセントなので、海の水がかなりしょっぱいことがわかるでしょう。もっとも、どこの海も同じ濃度というわけではなく、海域によって3.1~3.8パーセント程度の幅のばらつきがあります。たとえば、暑い海域では水分の蒸発が多いため塩分濃度は濃くなり、河口近くでは淡水が流れ込むために塩分濃度は低くなります。また北極や南極で氷ができるときは海水の真水だけが凍るので、塩分濃度が上がります。反対に氷が溶けると濃度は下がります。

あるいは、海の上を吹く風も塩分濃度に影響を与えます。北太平洋では塩分濃度が平均3.41パーセントであるのに対し、同じ緯度の北大西洋の塩分濃度は平均3.54パーセントです。この濃度の差は東から西へ吹く「貿易風」が原因です。貿易風は大西洋で発生し、大西洋上の水蒸気を含んだ湿った空気を北太平洋へ運んで雨を降らせます。その結果、北大西洋の塩分濃度は高く、北太平洋の塩分濃度は低くなるのです。

「塩分」といっても食塩だけでできているのではなく、いろいろな成分が含まれています。 塩分の濃度が海域によってばらつきがあるのに対し、塩分の組成はどこの海域でもほぼ同じであることが、調査の結果わかっています。塩分の成分のうち一番比率が大きいのは塩化ナトリウムで77.9パーセント、次が塩化マグネシウム(豆腐を作るときの「にがり」の成分)で9.6パーセント、そのほかの成分は硫酸マグネシウムが6.1パーセント、硫酸カルシウムが4.0パーセント、塩化カリウムが2.1パーセントなどです。

海水の塩分濃度は変化しない?

海の水の塩分濃度は、短い期間で大きく変化することはなく、一定に保たれています。塩分濃度を決定するのは水の量と塩の量です。塩分濃度が変化しないのは、海に出入りする水の量と塩の量が釣り合っているためです。

まず水の量を考えると、海の水は1年間で約425兆トン蒸発します。その一方で、雨として約385兆トン、川から約40兆トン流入しています。つまり、海から出ていく水の量と入ってくる水の量は、差し引きゼロなのです。

塩の量はどうでしょうか。川の水は、岩石に含まれるナトリウムなど塩の成分を溶かし出し、海に運びます。そのほか、海底火山の爆発やマグマの噴出、風によっても塩が海に運ばれてきます。しかし、海の塩分は増え続けているわけではありません。生物に取り込まれたり、沈殿して海の底に堆積したり、あるいは乾いて結晶化したりして、海水から出ていく塩があります。その結果、海水の塩の量も一定に保たれているので、塩分濃度は変わらないのです。

海水を使った実験をしよう!

・真水と海水で浮くものと沈むものを比べてみよう

海で泳ぐとき、プールよりも泳ぎやすいと感じたことはありませんか。真水と海水で、物の浮き沈みがどう変わるか調べてみましょう。また、中東には「死海」という塩分濃度が約30パーセントの海があります。塩分濃度が高いと、物の浮き沈みはどう変化するのかも調べてみましょう。

《必要なもの》
・ 海水(海水が用意できない場合は、3.4パーセントの食塩水)
・ 水
・ 食塩
・ 水槽
・ 野菜、果物、金属製のもの、プラスチックのものなど浮き沈みを調べたいもの

《手順》
1. 水槽に水を入れ、用意した物を入れて、浮き沈みを調べます。
2. 次に水槽の水を海水(または食塩水)に入れ替え、同じように物の浮き沈みを調べます。
3. 海水に食塩を加えて、海水で沈んだ物がどうなるか見てみましょう。加えた食塩の量を量っておき、物が浮いたときの濃度を調べましょう。

《実験をするときの注意点》
※風呂場などぬれてもよい場所で行いましょう。

・海水を凍らせてみよう

冬の寒い日に、水たまりやバケツの水が凍っているのを見たことがあるでしょう。しかし南極や北極はもっと寒いはずなのに、なぜ海は凍らないのでしょうか。海水が凍るのかどうか、調べてみましょう。

《必要なもの》
• 海水(または3.4パーセントの食塩水)
• 水
• プラコップ2個.

《手順》
1. プラコップに海水と水をそれぞれ同じ量入れます。
2. 冷凍庫で1時間ほど冷やし、変化を調べましょう。凍りにくいときは、冷凍庫に入れる時間を長くして、30分ごとに観察してみましょう。
3. 海水はなぜ凍りにくいのでしょうか。調べてみましょう。
《実験をするときの注意点》
※冷凍庫の温度が上がってしまうので、何度も開け閉めしないようにしましょう。

・海水から塩を作ってみよう

スーパーなどで売られている日本の塩の多くは、工場で海水から作られたものですが、身近なものを使うことで、家でも海水から塩をつくることができます。

《必要なもの》
・ 海水2リットル(2リットルの海水から約50グラムの塩が取れます)
・ なべ
・ コーヒードリッパー
・ コーヒーフィルター
・ 割りばし
・ 木べら

《手順》
1. コーヒードリッパーにコーヒーフィルターをセットし、海水をろ過して海水の中のごみを取り除きます。
2. なべに海水を200ミリリットル入れ、割りばしを立てて、水面の位置に印をつけておきます。
3. 海水をなべにすべて入れて、強火にかけます。印をつけた割りばしで確認し、10分の1くらいの量になるまで煮詰めます。ときどき木べらでかき混ぜましょう。
4. 火を止めて、煮詰まった海水をコーヒーフィルターでもう一度ろ過し、石膏(せっこう)分などを取り除きます。
5. なべの内側に白っぽい汚れ(せっこう分)がついていたら、洗っておきます。
6. ろ過した海水をなべに戻して、今度は中火で煮詰めます。
7. 結晶が出てきたら弱火にして、木べらでかき混ぜながら煮詰めます。完全に水分がなくなる前に火を止め、コーヒーフィルターで水分を切って完成です。

《実験をするときの注意点》
※煮詰めた海水は非常に熱いのでやけどしないよう気をつけましょう。また煮詰まった海水がはねることがあるので注意してください。

※完全に水分がなくなるまで煮詰めると、塩以外の成分も一緒に結晶化して苦みが出るので、注意しましょう。

海はさまざまな分野につながる研究テーマ

なぜ海の水はしょっぱいのか、その秘密は海の誕生にありました。海の水について考えることが、地球の誕生や歴史を振り返るきっかけになるとよいですね。また、海水の浮力や凝固点降下など、海は物理や化学、生物といったさまざまな分野につながるテーマです。興味を持ったことはどんどん調べてみましょう。

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