音楽特別講義「グラミー賞受賞者が教える! 曲作り」第11回

公開日: 2020/07/31

グラミー賞受賞者サダハル・ヤギ(SADAHARU YAGI)さんが、前回に続き登場! 音楽特別講義『おウチで、仲良く、音楽作り』の第11回です。(構成・文:アッシュ・ヌクイ)

前回は、カレーライスの歌を作ってみよう、ということで録音した曲を聞き比べてみて最高の曲を選んで仕上げをしてみました。今回は、世界へ向けて音楽を作ること、についてお話をします。

音楽特別講義第11回「世界に轟かせようキミの音」

目次
これまで録音したみんなの曲
音楽は自由に生まれてくる
世界のトップアーティストが向かう先

これまで録音したみんなの曲

ここまでたくさんの曲を録音してきたね!
(お父さまお母さまにご協力いただきまして誠にありがとうございました!)

トラック1. 4分33秒、耳を澄ませて
トラック2. 5万年前から好き
トラック3. ドレミじゃない音 
トラック4. カレーライスをシャカシャカトントン
トラック5. カレーライス「だ・い・す・き」
トラック6. カレーライスに叫ぶ
トラック7. カレーライスの隠し味
トラック8. カレーライスの歌(テイク1)
トラック9. カレーライスの歌 (テイク2)
トラック10. カレーライスの歌(完成版)
全10曲

全て、今しか録れない今だけのキミの曲だから、とても素敵で大事なものだ。

音楽は自由に生まれてくる

音楽特別講義『おウチで、仲良く、音楽作り』ということで、「楽しく」自由に音楽に向き合ってきました。自由といえば、僕が尊敬するミュージシャンで、ジミ・ヘンドリックスという伝説のアーティストがいます。お父さんが5ドルで買ってきた古いギターを、誰に教わることなく、(左利きのジミは)右利きのギターを逆向きにして、夢中でかき鳴らしました。自由に。
独学だったから、誰かが「その弾き方可笑しいよ、それ違うんじゃね?」って指摘されてギターを始めた訳でもない。むしろ、ギターの向きそれ間違ってるよ、って指摘されても気にせず演奏しまくってたかもしれない。もはや、誰かが間違いだって言うことが間違いなくらい、ジミの音がすごかったんだろうね。

今の時代だったら、「そんなやり方は正しくないよ。理論と違うよ」と言われてしまっていたかもしれない。現代は、そんな風に音楽を止めてしまう子供もいるかもしれない。いわゆる「正しい」やり方しか教わらず、それ以外は間違い、だと教わってしまう世界だったら、ジミ・ヘンドリックスの音楽はこの世界になかったかもしれない。そんな風に想像すると寒気がするほどゾッとしてしまう。それって、ものすごく悲しいことだよね。感動がない世界なんて。

音楽を目指す子供たちは、これから、嫌という程、理論も知ることになる。だけど、理論を知らない今こそが、才能を光らせるもっともチャンスな時でもあるんだ。誰も生んだことのない音楽は、みんなが正しい、と思うものからは残念ながら生まれてはこない。

僕たちは、自由に思うがままに、奏でたよね。
そうして、生まれてくる音楽が、本当に心を揺さぶるものになるんだ。

僕は大人になってしまって、いろんな音楽を、理論を、知って、音楽の良し悪しもわかる。
でも、もう理論も無茶苦茶なんだけど、自由自在で、原始的に心を揺さぶる音楽を生むことはもうできないかもしれない。そのくらいその音楽に到達するのは難しいものなんだ。

成長する環境に進むほど、子供達は、恥ずかしい、って思ってしまう。もしくは、恥ずかしい、と言われてしまう。そう言われても気にしない心がアーティストには必要にもなってくるんだけど、そう思う、思われてしまう前に、自由に生まれてくる音楽は、本当に素晴らしい輝きを秘めているから、それを護っていきたくて音楽特別講義をはじめました。

世界のトップアーティストが向かう先

世界のトップアーティストたちは、今どこへ向かっているのだろうか。理論も技術も歴史も全てをマスターしてしまったアーティストは、どこに向かっているか、といえば、実は「みんなのいる場所」なんだ。それは、音楽と出会った時間。一番遠くに行ってしまった人たちにとっては、一番最初に生まれたところ、が一番遠くなんだ。そう考えると、今、みんなが生きているこの時間は、いつか、一番遠い場所になる。だから、今、知っておきたい、音楽への向き合い方があるんだ。

今、世界中で、お外も自由に行けない時間を過ごしてる人がたくさんいる。でも、音楽を自由につくることは、誰も止めることができないよ!

Profile:
SADAHARU YAGI (サダハル・ヤギ)
ロサンゼルスを拠点に活動するレコーディングエンジニア/プロデューサー。日本人として史上初となる3度のグラミー・アワードを獲得。ロックやブルース、ゴスペル、ラテン・ポップなど、幅広いジャンルの音楽を手がける。

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