空手のルールは流派で違う!?形と組手それぞれのルール
公開日: 2023/10/04
世界中で多くの愛好家がいる空手。しかし多数の流派があるため、少しルールがわかりにくいかもしれません。 この記事では、流派の特徴や違いを説明しつつ、オリンピックなどの世界大会で採用されている空手のルールについて解説します。形や組手の試合形式や勝敗の決め方、反則事項などもご紹介するので、ぜひご覧ください。
- 目次
- 空手ってどんなスポーツなの?
- 技の正確さやスピードを競う!形試合のルール
- 上段蹴りは一本!中段蹴りは技あり!組手試合のルール
- 何度も注意されたら負けちゃう!組手試合の反則って?
- 多くの流派やルールがあるが、目指すところは同じ「空手道」!
空手ってどんなスポーツなの?
まずは空手の由来や、流派の違い、空手の強豪国などをご紹介します。
・空手は沖縄の武術から広まったスポーツ!
空手は、正式には空手道といいます。護身術であるとともに、自己鍛錬の手段としても用いられています。空手の起源は、琉球王朝時代(1429年~1879年)の沖縄で生まれた「手(ティー)」という武術。そこから少しずつ変化し、手(ティー)→唐手(トゥーディー)→唐手(からて)→空手→空手道となりました。空手の試合には「形」と「組手」の2種類があります。形は攻撃技と防御技を組み合わせた演武を採点して勝敗を決める方式で、組手は2人の選手が1対1で互いに技をかけ合いポイントを競う方式です。これらはのちほど詳しくご説明します。
・世界中に広がった空手!どこの国が強いの?
日本発祥の空手は、海外普及の努力が実って、世界のKARATEとなりました。今ではプレミアリーグという国際大会も毎年開催されています。2020年の東京オリンピックでは、初めてオリンピック種目に採用され、ますます飛躍するきっかけとなりました。ここからは、世界の空手人口や、空手の強豪国、日本のレベルをご紹介します。〈世界の空手競技人口〉世界空手連盟には、およそ200 もの国内競技連盟が加盟しています。世界の国の数は196 なので、世界中の国や地域で親しまれていることがわかると思います。また、世界の競技人口は約6000万 人。選手登録をしていない愛好者も含めると、1億3000万人 ともいわれています。これは日本の人口と同じくらい の数字です。
・空手の強豪国
空手の強豪国として挙げられるのは、ロシア、ブルガリア、フランス、ブラジルなど。どこも空手が盛んな地域で、強豪選手も輩出しています。空手発祥の国である日本も強豪国のひとつです。〈世界における日本のレベル〉空手の世界ランキングでは、男女ともに日本人選手が上位に位置しています 。東京オリンピックでは、男女合わせて8つの種目がありました。その中で日本の選手は金銀銅それぞれ1つずつ獲得し 、最多のメダル数を記録しました。
・流派によってルールも変わる?伝統空手と実践空手の違い
現在では空手は大きく2つに分かれます。全日本空手道連盟(JKF)が採用している「伝統空手」と、伝統空手から派生した「実践空手」で、以下のような違いがあります。〈伝統空手〉形の鍛錬や礼節を重視しています。組手の試合でも技は寸止め(ノンコンタクト)であり、相手に直接打撃を与えるのは反則です。大きく分けると剛柔流、糸東流、松濤館流、和道流の4つ流派があります。〈実践空手〉直接打撃が認められており、実戦での攻防を重視しています。フルコンタクト空手ともいいます。極真空手は実践空手のことを指しています。流派や試合の運営団体によってルールが異なる部分がありますが、この記事では、世界空手連盟(WKF)も採用している、全日本空手道連盟のルールに沿って解説いたします。
技の正確さやスピードを競う!形試合のルール
まずは形試合の基本ルールや形の種類、採点のポイントなどをご紹介します。
・形試合の基本ルール
8メートル四方の競技場内で1人ずつ演武を行います。それをエリア外にいる7人の審判員が10点満点で採点を行い、勝敗を決めます。形は、仮想の敵に対して攻撃技と防御技を一連の流れで組み合わせた動き。選手は競技場に入場後、一礼をしてから形名を宣言し、演技を開始します。
・形試合で使える形
形試合で使う形は、世界空手連盟が認定している102種類の中から選択します。それらは「指定形」と「得意形(自由形)」の2つに分かれ、さらに指定形は「第一指定形」と「第二指定形」の2つに分かれます。
予選は指定形、勝ち進むと得意形を用いるよう決められている大会が多くあります。同じ大会で同じ形を使えないため、選手は複数の形を身につけて臨みます。得意な技を早い段階で使うか、最後まで残しておくかは選手の腕の見せどころです。
・形試合の採点基準
形試合では、7名の審判のうち上下各2人を除いた3人の合計点が得点となります。同点の場合は違う形で再演を行います。採点基準には、テクニカルパフォーマンス(技術面)とアスレチックパフォーマンス(運動能力面)の2つがあります。〈テクニカルポイント〉採点の70%を占めます。その項目は、立ち方、正確な呼吸法、タイミング、流れるような動き、空間の把握、極め、技の7つです。〈アスレチックポイント〉採点の30%を占めます。こちらの項目は、力強さ、スピード、バランスの3つです。
上段蹴りは一本!中段蹴りは技あり!組手試合のルール
次に組手試合のルールをご紹介します。
・組手試合の基本ルール
組手は、8メートル四方の競技場内で、2人の選手が1対1で戦って勝者を決めます。組手試合は接触の可能性があるため、男女それぞれ体重別に3階級に分かれています。審判は全部で5名。試合の進行や反則行為の判定を行う主審が1名と、得点や場外の判定を行う副審が4名です。試合時間内に既定のポイント差がついたとき、または試合終了時にポイントの多い選手が勝利です。同点の場合は先取したほうが勝利、共に0ポイント場合は審判5人による多数決で判定します。大人と子供では、体力面などを考慮して、試合時間や勝利に必要なポイントが異なります。大会によって違いはありますが、男子女子問わず大人は、試合時間が3分で8ポイント差をつければ勝利、小学生は試合時間が1分半で4ポイント差をつければ勝利です。
・組手試合で使える技とポイント
組手試合で使える技は「突き」「打ち」「蹴り」の3種類。攻撃できる部位も決められており、「上段」は頭・顔・首、「中段」はお腹・胸を指しています。「寸止めでなければ相手を倒せていた」といえる効果的な攻撃に対して、技の難易度に応じて次のようにポイントが決められています。
何度も注意されたら負けちゃう!組手試合の反則って?
組手試合の反則は、内容別で2つのカテゴリーに分かれていて、それぞれのカテゴリーで反則を犯した回数や内容に応じてペナルティが与えられます。
・カテゴリー別の反則内容
カテゴリー1は、主に危険な技や行為に関する反則、カテゴリー2は主にスポーツマンシップに反する反則です。それぞれ具体例をご紹介します。〈カテゴリー1〉・技をコントロールできていない過度な接触をする・腕、足、甲、そけい部、喉、関節などの禁止部位に攻撃をする・平手や貫手で攻撃をする・回転軸が腰より上の危険な投げ(背負い投げなど)をする〈カテゴリー2〉・負傷の装いや誇張・自己防衛ができていない(無防備)・攻撃を仕掛けない(不活動)・逃げたり場外に出たりして相手の得点機会を奪う・相手を掴んだり押したりする・相手に話しかける・相手や審判に無礼な行いをするカテゴリー1の反則を犯した場合は、主審が両手の肘を伸ばしてバツ印を作ります。カテゴリー2の場合は、反則側の肘を45度に曲げて人差し指を立てます。何の反則かわからなかったときは、主審のジェスチャーにも注目してみてください。
・ペナルティの段階と内容
反則を犯すと与えられるペナルティには5段階あり、軽い方から、忠告→警告→反則注意→反則→失格と名前が付けられています。1回目の「忠告」にはペナルティはなし。2回目の「警告」は相手に1ポイント、3回目の「反則注意」では相手に2ポイントが与えられます。「反則」が宣言されると、相手選手の勝利が決まります。特に悪質な反則に対しては、いきなり「反則」が出たり、「失格」によって競技への出場資格を失ったりする場合もあります。
多くの流派やルールがあるが、目指すところは同じ「空手道」!
今回は世界空手連盟に則った、形と組手のルールをご紹介しました。オリンピックなどの国際試合や、インターハイなどの国内の大規模な大会を観戦するときは、ぜひ参考にしてください。空手には数多くの流派が存在し、そのルールも千差万別です。しかし「空手を通じて自分を磨く、道を極める」といった考えはどの空手も同じ。技だけではなく精神も同時に磨きながら、高みを目指している選手たちの様子を、ぜひ楽しんでください。