鯉のぼりの意味や由来はなに?それぞれの飾りが表していること
公開日: 2024/03/28
この記事では、5月5日に飾る「鯉のぼり」の意味や由来について解説します。最近では鯉のぼりを飾る家庭が少なくなっていますが、鯉のぼりに込められた願いや期待は今でも変わりません。鯉のぼりに関する歴史を学びながら、子どもたちに向けられた愛情を実感してみましょう。
鯉のぼりの意味はなんだろう?
鯉のぼりは、魚の鯉の形をした飾りを竿に掲げる独特な飾りです。現代の住宅事情に合わせて、ベランダで飾るタイプもたくさん用意されています。でも、なぜ魚なのか、なぜ鯉なのか、なぜ5月5日に飾るのか、考えてみてもなかなか想像ができないですよね。
鯉のぼりは男の子の健康や出世を願う行事
今と変わらず、日本には昔から子供たちが健康でたくましく成長してほしいと願う行事がたくさんありました。その中でも「鯉のぼり」は、特に男の子の健康と出世を祈るための飾りとして知られています。鯉のぼりの元になったのは、武士の家で男児が誕生したときに家紋のついた幟(のぼり、縦長の旗)を飾る江戸時代の風習のようです。この風習が町人に広まる時に、鯉をモチーフにした飾りが使われるようになったそうです。
鯉のぼりはなぜこどもの日にするの?由来や歴史
現在では、鯉のぼりは5月5日の「こどもの日」に飾るもの、というイメージがあります。このような形式になるまでには、どのような歴史があったのでしょうか?
こどもの日と端午の節句の関係
5月5日は国民の休日の一つである「こどもの日」ですが、他方で「端午の節句」の日でもあります。「こどもの日」と「端午の節句」にはそれぞれ全く違う意味が込められています。こどもの日は、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」日として、昭和23年に法律で定められました。対して端午の節句は、古代の中国で始まったと言われています。「午」は十二支の馬のことで、古いカレンダーである旧暦では5月に当たります。「端」は「はし」で「最初の」という意味なので、端午が5月の最初の午の日を指すようになりました。その後、午と五の発音が同じことから、5月5日のことを「端午」と呼ぶようになったそうです。日本でも、奈良時代には災いを避ける行事を端午の節句に行っていました。端午の節句には菖蒲(しょうぶ)を飾り、菖蒲を入れたお風呂(菖蒲湯)に入ります。この菖蒲が「尚武」(しょうぶ、武を重んじること)を連想させることから、武家では端午の節句が特に重要な意味を持っていました。このような理由で、次第に端午の節句が厄除けの意味だけでなく、男の子が立派に成長を願う日になっていったと考えられています。
鯉のぼりの由来
端午の節句に鯉を飾るのは、中国の故事(古くから伝わる言葉)に由来があります。皆さんは「登竜門」という言葉を聞いたことがありますか?登竜門とは、ここを突破すれば成功につながる関門の意味の言葉です。中国の黄河にある滝を登り切った鯉が竜になった伝説が元になっています。鯉が竜になるのですから、相当な成長ですよね。この鯉の滝登りにあやかって、男の子の健やかな成長への願いを鯉のぼりで表現するようになりました。
鯉のぼりは時代とともに変化している?
端午の節句の飾りとして鯉のぼりが使われ始めたのは江戸時代ですが、実は、現代までに鯉のぼりの飾り方は少しずつ変化しているそうです。江戸時代に鯉は1匹でしたが、現代では3種類の鯉を飾ることが多くなっています。ちなみに、有名な「こいのぼり」の歌詞には、真鯉(お父さん)と緋鯉(子どもたち)しか出てきません。この歌が作られたのは90年ほど前で、この当時は江戸時代と現代の中間の形式になっていたようです。
鯉のぼりの飾りごとの意味や由来
現代の鯉のぼりの定番は、3種類の鯉と矢車、吹き流しがセットになったものです。これらの飾りの一つ一つに皆の願いが込められています。
鯉のぼりの色は家族のイメージを表している
よく普及している鯉のぼりには、黒っぽい色の真鯉(まごい)、赤っぽい色の緋鯉(ひごい)、青などの小さい鯉のセットが含まれています。一番大きな真鯉はお父さんを表していて、中ぐらいの緋鯉はお母さんを表しています。小さい鯉は子どもたちを表しているので、この3種類のセットが典型的な家族をイメージさせる構成となっています。1匹だけの鯉のぼりだった江戸時代には、真鯉がこどもを意味していました。童謡のこいのぼりの時代では、お父さんとこどものペアを表しています。その後3種類に増えてお母さんが追加されたのは、時代とともに家族の考え方が変化してきたからです。現在は家族の形も多様化しているので、数や色や形にとらわれない新しいスタイルの鯉のぼりが増えていくのかもしれませんね。
吹き流しの色にも意味が込められている
吹き流しは、鯉のぼりの上につける五色の長い布の飾りです。この五色は「陰陽五行説」という古くからある考え方に基づいていて、世界を構成する「火・水・木・金・土」の5つの要素を表しています。この五色は神社などでも使われることがあり、悪いことを遠ざけたい願いが込められています。
矢車や回転球にも
矢車(やぐるま)とは、鯉のぼりのポールの上部に付ける風車のような飾りです。矢の羽の部分を円形に取り付けたデザインになっていて、魔除けの願いや成功を射止めるための願いが込められています。回転球(天球とも呼ぶ)は、ポールの先端、鯉のぼりの一番高いところに付ける飾りです。回転球は空に一番近いところにあって、天にいる神様に見つけてもらえるようにという意味が込められています。
のぼり旗の由来と意味
のぼり旗は長く伸びたポールに縦長の旗を付けたもので、現代では商店の呼び込みや、お相撲さんの応援にも使われています。武士にとっては、敵味方を判別するための印としての意味もあり、戦国時代にはそれぞれの武将が現代でいうところのキャッチコピーを書いて兵の士気を高めていたと考えられています。江戸時代になって戦いがなくなると、のぼり旗は武具としての意味よりも儀礼的な意味が強くなっていきます。
鯉のぼりは子どもの幸せを願う気持ちが形になったもの
端午の節句に飾られる鯉のぼりは、単なるきらびやかな飾りではなく、一つ一つに子供たちの成長と家族の幸せを願う深い意味が込められています。鯉のぼりは江戸時代に生まれた風習ですが、現代までの間、それぞれの時代に合わせてその当時の人たちの考え方を表現しているとも考えられます。その中でも変わらないものが、子どもの健やかな成長を願う気持ちです。興味をひかれる新しいものがあふれている現代ですが、鯉のぼりのような伝統的なものに目を向けてみるのも面白い発見につながるかもしれません。鯉のぼりがそうであったように、これからの時代に合わせた形で、いつの時代も変わらない大切なことを表現するアイディアを大切にしたいですね。