液状化現象の仕組みを実験で学ぼう!知っておきたい地震後のリスク
公開日: 2019/06/26
日本は地震が多い国といわれており、過去にもさまざまな大規模地震災害が発生しています。地震への備えのためには、建物の構造を強くすることだけではなく、地盤についても注意することが大切です。 2011年に発生した東日本大震災では、地震によって発生した液状化現象によって大規模な被害が発生しています。今回は、この液状化現象の仕組みを実験で学び、地震のリスクも知っていきましょう。実験材料はご家庭にあるものでそろいますし、理科の自由研究としても取り組みやすいテーマですので、ぜひ親子で取り組んでみてください。
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液状化現象とは
液状化現象ってどうなること?
液状化現象とは、地震のグラグラとした揺れによって地面が液体化してしまい、不安定な状態になることです。これによって、地盤の安定感を失った場所の建物が倒れたり、地面から砂まじりの水が地表にあふれ出してきたりします。
日本では、1964年に発生した新潟地震の際に、建物が埋まったり傾いたりしたことで初めて液状化現象が注目されました。
・液状化現象の仕組み
通常、地中では水分を含んだ砂粒同士が密にくっつき合っていて、お互いを支え合っています。ところが、地震による強い揺れが起こると、振動によって砂の粒子がバラバラに離れてしまい、水の中に浮いた状態になってしまいます。そして、時間が経つにつれて砂の粒子は水中に沈下し、その砂粒を支えるために水の圧力が上がって、地表に噴水してくるのです。
特に、水分を多く含む埋立地や干拓地、海岸や河川敷などの比較的地盤がゆるく地下水位が高い砂地盤で発生しやすいといわれています。
・液状化現象による被害にはどんなものがあるの?
過去にした液状化現象では、建物の倒壊や沈下、地割れ、泥水の噴水による噴砂や冠水、水道管などの地下管やマンホールが浮き上がり破損してしまう(マンホールの抜き上がり現象)などの被害が確認されています。
2011年に発生した東日本大震災では、液状化現象によって道路が割れて車の通行ができなくなり物資の輸送ができなくなってしまった他、水道管が破損して水道水が使えなくなるなど、ライフラインへの大きな影響が出ました。特に、地中に埋められている地下管の破損個所の特定や修理には時間がかかり、復旧まで長い時間がかかったため、被害の出た地域では不便な生活も長く続くことになりました。
液状化現象の実験に必要なもの
・砂(園芸用の土や海の砂など、粒度の違うものを2つ用意する)
・ペットボトル
・虫かご
・水
・ろうと
・丸ピン
・鉛筆数本
・単三乾電池
・フィルムケース
・ビー玉数個
液状化現象の実験方法とまとめ方
では、さっそく液状化現象の実験をしていきましょう。
実験が終わったら、まとめを書いていきます。まとめには、実験の目的、実験方法、結果、考察を書いていきますが、写真や表、図などを入れてまとめていくとわかりやすいです。また、実験をしてみた感想を入れても良いので、実験をしながら写真をとったり、実験方法の様子を図に書いたり、どう感じたのかなどを簡単にメモしながら進めていきましょう。
ここでは、2つの実験例をご紹介しますが、実験手順などのイメージがわきやすいように、最初に『液状化現象の実験時に参考にしたい動画』を確認してください。
また、いくつかの実験を行った場合には、実験ごとにまとめ、最後にすべての実験を通しての全体のまとめとして、気づいたことや感想などを書くと締まりやすいです。
(実験1)粒の大きさの違う砂を使って液状化現象を再現してみる
実験の目的
砂粒の大きさの違いによって、液状化現象の起きやすさに違いがあるか確認します。
実験方法
材料
・砂(園芸用の土や海の砂など、粒度の違うものを2つ用意する)
・虫かご
・水
・鉛筆数本
・単三乾電池
手順
1.虫かごに砂を入れ、砂の表面を超えない程度に水をそっと入れる
2.水が入ったら表面を平らにする
3.砂の上に乾電池を立てる
4.鉛筆数本を等間隔に置いた上に、虫かごをそっと置く
(このときなるべく衝撃を与えないように注意)
5.虫かごを揺らし、液状化によって乾電池が沈むまでの時間を計測する
6.粒度の違う砂ごとに(1)~(5)を繰り返す
結果
砂粒の粒度の違いによって、乾電池が沈むまでの時間が違っていました。
考察
粒度の小さい砂の方が、大きい砂よりも早く乾電池が沈むため、液状化現象が起こりやすいことがわかりました。調べて見ると、粒度の小さい砂の方が、液状化によって砂粒同士のすき間が小さくなりやすいということでした。また、液状化現象が発生した後に水が引けると、砂地盤の体積に変化が見られたり、元の状態よりも地盤が固くなったりすることもあるということでした。
(実験2)重量の違う重りを使って液状化現象を再現してみる
実験の目的
重量の違いによって、液状化現象のときの倒れやすさに違いが出るかを確認します。
実験方法
材料
・砂
・虫かご
・水
・鉛筆数本
・フィルムケース
・ビー玉数個
手順
1.虫かごに砂を入れ、砂の表面を超えない程度に水をそっと入れる
2.水が入ったら表面を平らにする
3.フィルムケースにビー玉を入れ砂の上に立てる
4.鉛筆数本を等間隔においた上に、虫かごをそっと置く
(なるべく衝撃を与えないように注意)
5.虫かごを揺らし、液状化によってフィルムケースが倒れるまでの時間を計測する
6.ビー玉の数を変えて、(1)~(5)を繰り返す
結果
ビー玉の数が少ないフィルムケースの方が早く倒れてしまいました。
考察
液状化現象によってものが浮かび上がるのは、浮力が大きくなるためです。重量が軽い場合、浮力の影響を受けやすくなるため、早く倒れてしまうことがわかりました。日本の多くの住宅は木造住宅で重量が軽く、液状化現象の影響を受けやすいといえるため、液状化現象の発生しにくい地盤に住宅を建てることや地盤の強化をすることが地震対策になると感じました。
(実験のまとめ)
これらの実験結果から、地震の際に液状化現象の被害が出やすい条件としては、次のような条件が整ったときだということがわかります。
・粒度が小さな砂地盤
・水を多く含む地質
・構造物が小さくて重量が軽い
日本は流砂によってできた土地や、開拓地だった場所などの上に空港などの大規模施設が建っていたり、住宅地になっていたりすることもあります。そのような場所では、大きな地震の際に液状化現象が発生する恐れがあります。液状化現象の被害を小さくするためには、構造物を建てる前に地盤の状態をきちんと調査し、必要に応じて対策をとることが大切だと思いました。
液状化現象の実験時に参考にしたい動画
液状化現象の実験をしよう!
実験の目的
丸ピンを使った実験によって、液状化現象の仕組みを理解します。
実験方法
材料
・砂
・ペットボトル
・水
・ろうと
手順
1.空のペットボトルにろうとを使って1/3程度まで砂を入れる
2.ペットボトルがいっぱいになるまでろうとで水を入れていく
3.ペットボトルを振って砂を洗い、濁った水だけを捨てる
4.ペットボトルの水がきれいになるまで(2)と(3)を繰り返す
5.指に刺さないように注意しながら丸ピンをペットボトルに入れて蓋をする
6.ペットボトルを逆さにして丸ピンを砂に沈める
7.ペットボトルを立てて静かに机の上など平らなところに置き、そっとしておく
8.丸ピンが砂の中に完全に沈んだら、ペットボトルを軽く指で弾くように叩く
9.丸ピンが浮き上がってくる様子を観察する
結果
振動によって丸ピンが浮き上がってくることを確認し、液状化現象を再現することができました。実験の前と後とで、ペットボトル内の砂の高さを計測したところ、振動を与えた後の高さが低くなっていました。
考察
丸ピンは、液状化した地盤よりも表面に浮き上がってきました。もともと丸ピンは砂の中に埋まっていましたが、液状化現象によって丸ピンの周りの砂と水がまじり合う浮力が大きくなるため、丸ピンは浮かび上がったのだと思います。
また、砂同士のすき間にあった水が異動して液状化が起こりますが、実験後の砂の高さが低くなっていることから、砂同士のすき間が詰まって密度が高くなったこともわかりました。
科学実験で液状化現象の仕組みを知ったら地震対策についても考えてみよう
この記事では、小学生から中学生のお子さんでもできる液状化現象の科学実験についてご紹介しました。液状化現象の仕組みを知ることで、地震が起こった際にどんなことが起こるリスクがあるのかを話し合うきっかけにもなります。ぜひ親子で実験をしたり、地震対策についても話し合ってみたりしてくださいね。
<参考>
地震本部 『液状化現象』
https://www.jishin.go.jp/resource/terms/tm_liquefaction/
財団法人日本化学技術振興財団
科学実験Web 『地盤の液状化実験で地震のこわさを学ぼう!』
http://ppd.jsf.or.jp/jikken/jikken/30/diy01.html
液状化現象に関する研究
http://www.takajo-hs.gsn.ed.jp/SSH/es3/10report/10.4.pdf
防災科学技術研究所
Dr.ナダレンジャーの科学実験教室1 『感性でとらえる 地盤液状化の科学おもちゃエッキー』
http://www.bosai.go.jp/activity_general/ekky/ekky.pdf
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