人類はどのように進化したの?4つの過程をわかりやすく解説!
公開日: 2022/11/30
大昔の人類はどのような姿をしていたか知っていますか?私たち人類の祖先は、ゴリラやオランウータン、チンパンジーなどのサルの仲間(類人猿)の祖先と同じだと考えられています。 その共通祖先からゆっくりと時間をかけて体の構造が少しずつ変わってゆき、やがて別の生きものとして進化したのです。 今回は 、人類はどのようにして今の姿に変わったのか、進化の過程を紹介していきます。
- 目次
- 人類はどのように進化してきたの?
- 【人類の進化】猿人とは?
- 【人類の進化】原人とは?
- 【人類の進化】旧人(ホモ・ネアンデルターレンシス)とは?
- 【人類の進化】新人(ホモ・サピエンス)とは?
- 人類の進化には、まだ不思議がいっぱい
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人類はどのように進化してきたの?
人類は「霊長目(れいちょうもく、別名はサル目)ヒト上科ヒト科」に属する唯一の生きものです。つまり、大きくグループに分けると人類はサルの仲間であり、そこから派生(はせい)して進化してきた生きものであることがわかります。では、どのように進化してきたのでしょうか。
・人類が進化した4つの過程
共通祖先から進化を始めた人類は、始めに猿人を誕生させます。そこから、原人、旧人、新人(ホモ・サピエンス)の4つの過程を経て進化してきました。
[1] https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/14189[2] https://www.businessinsider.jp/post-204487[3] https://www.bbc.com/japanese/60329796
しかし、人類は一つの種族だけが姿を変えて進化していったわけではありません。4段階の進化の過程で、いくつもの種族に枝分かれしたのですが、他の種族は途中で絶滅してしまい、現在の人類に続く系統だけが生き残ったのです。あまりに昔のことなので、人類が進化を始めた起源はいつなのか、正確な年代は分かっていません。進化の過程もはっきりと年代が区切られているわけではなく、多くが重なり合っています。これは、新しく進化した種族が登場した後も前の種族は生き残り、ゆっくりと時間をかけて世代交代をするように猿人から原人、旧人、新人へと移り変わっていったからです。それでは猿人から順番に、これまでに解明されている4つの進化の過程を紹介しましょう。
【人類の進化】猿人とは?
「猿人」は、サルから進化したばかりの最初の祖先です。猿人の時代は長く、およそ700万年前から120万年前頃まで続いたと考えられています。では、最初の猿人はどのような姿をしていたのでしょう。
・最も古い人類の祖先は?
1970年代に発見された化石骨から、約400万年前頃に生存していたアウストラロピテクスという種類の猿人が最古の人類だと考えられてきましたが、もっと古い骨が2001年に中央アフリカのチャドで発見され、「サヘラントロプス・チャデンシス」という学名が付けられました。推定700万~600万年前の猿人の骨の一部だと分かり、今ではこの化石骨が最古の人類といわれています。化石骨から見ると、猿人はおそらく脳容量が小さかったのでしょう。頭が小さく、鼻から口にかけて前に出ていて、腕が長く、足は短いというサルによく似た姿をしていました。姿はサルに近くても、人類の祖先だと分かる大きな特徴が、2本足で立って歩く「直立二足歩行」をしていたことです。他にも犬歯(前から3番目の尖った歯)が短い、尾が退化してほとんどないなどの特徴もあります。
・全身が復元された最古の女性「アルディ」
1994年にエチオピアで発見された化石骨を15年の時間をかけて修復した結果、約440万年前に生きていたとされる猿人と分かり、「アルディピテクス・ラミドゥス」(ラミダス猿人 )という学名がつけられました。発見されたラミダス猿人は残っていた体の骨から全身を復元し、エチオピア国立博物館に標本化石として飾られて「アルディ」という愛称で呼ばれています。アルディは身長約120センチ、体重約50キロの女性だと推定されています。年齢までは分かりませんが、大柄なので、大人の女性だと考えられています。
・国立科学博物館で見られる「ルーシー 」
1974年に最初に発見された猿人は、約318万年前に生きていたとされる化石人骨女性で、学名上は「アウストラロピテクス・アファレンシス」(アファール猿人)といいます。全身が復元された姿は「ルーシー」という愛称で呼ばれています。ルーシーは身長105センチ、体重25キロの女性でした。全身の骨格の40%がまとまって残っていたという貴重な存在で、ルーシーの発見により人類の歴史の研究は大きく進んだといわれています。復元されたルーシーは、国立科学博物館で見ることができます。ルーシーが生きていた頃から、人類は道具を使い始めるようになりました。これまではこの後に紹介する初期の原人(ホモ・ハビリス)が石器を使い始めた種族だと考えられてきましたが、2011年に330万年前の石器が発見 されたことで、最初に道具を使い始めた人類はアウストラロピテクスだという説 が有力になっています。
【人類の進化】原人とは?
猿人はゆっくりと進化し、やがて「原人」が登場しました。原人は、猿人からどのように変化したのか見ていきましょう。
・現在の人類に通じる始祖
原人は約200万年前から10万年前頃にかけて出現していた と推定されています。猿人から現在の人類に通じる進化をした存在だと考えられていて、分類上の学名にも「ヒト」を意味するホモ(Homo)という言葉が付けられています。原人は、猿人よりも脳が大きく、知能が発達し始めたことから、本格的に道具を使っていたことが分かっています。火を使い始めたのも、原人の時代からだと言われています。顔や歯が小さくなり、眉のあたりが盛り上がり、より人間らしく見える容貌になっています。
・猿人と原人の中間の存在がいた?
アウストラロピテクスから枝分かれしたとされる初期の原人は、「ホモ・ハビリス」と呼ばれます。この時期は、猿人に属するパラントロプスも生息していました。身長は大きくても135センチほどと小柄なのに、長い腕を持ち、脳容量も小さかったことから猿人と原人の過渡期の存在だという見方もされています。
・アフリカから居住地を移動
猿人の多くはアフリカで生息していましたが、道具を使って狩りをするようになった原人(ホモ・エレクトス)が登場すると、獲物を追いかけてユーラシア大陸やアジアへと移動を始めるようになりました。アフリカ外の各地で化石骨が見つかっていることから、原人の生息地の分布が広範囲に広がったことが分かっています。生息地を移動した原人は、移動した各地で独自の進化を遂げたので、地域ごとに少しずつ特徴が異なるようになり、多様化が始まりました。アジアでは、発見地が名前の由来となった「ジャワ原人」「北京原人」などが有名です。なお、ジャワ原人は、以前は「ピテカントロプス・エレクトス(直立原人)」と呼ばれていましたが、名前が改められ、今ではホモ・エレクトスに分類されています。原人が次の旧人に進化する過渡期には、ホモ・エレクトスとは別の種族に枝分かれした「ホモ・ハイデルベルゲンシス」などが生息していたことも分かっています。
・海を越えた原人がいる?
謎めいた進化をしたと考えられているのが、2003年にインドネシアのフローレス島で発見 された「フローレス原人」です。身長100センチほどととても小柄で、ホモ・エレクトスが絶滅した後の5万年前まで生息していたことが分かっています。海を渡らなければたどり着けない地で、かなり原始的な姿の原人の骨が見つかったことで、その謎を解明 しようとさまざまな説が話し合われています。
【人類の進化】旧人(ホモ・ネアンデルターレンシス)とは?
原人から、次の段階に進化したのが「ホモ・ネアンデルターレンシス」という学名を持つ旧人です。ネアンデルタール人とも呼ばれます。進化の過程から考えると、ネアンデルタール人の存在は少し異質です。どういうことか、詳しく見ていきましょう。
・起源がよくわからないネアンデルタール人
旧人のネアンデルタール人は40万年前にヨーロッパに出現した種族です。原人であるホモ・エレクトスよりも進化した存在で、誕生した経緯はよく分かっていません。火を使い、死者の埋葬を行うなど精神的に発達していたことから、ヒト(ホモ属)に分類されています。生息時期が約40万年前から4万年前頃までと、時期的に新人類(ホモ・サピエンス)と重なっている時代が長く、ホモ・サピエンスがネアンデルタール人の絶滅に関わっていると考えられてきましたが、その後の遺伝学の研究結果から新たな事実が解明されました。実際は共存関係にあり、家族集団を構成して混血を誕生させていたことがわかっています。ただ、ネアンデルタール人はホモ・サピエンスよりも個体数が圧倒的に少なかった ので、異種交配が進むと、純血のネアンデルタール人がいなくなり、やがてホモ・サピエンスの中に吸収される形で絶滅したと考えられています。
・ネアンデルタール人以外の旧人類
旧人類はネアンデルタール人だけではありません。2008年にロシアの西シベリアにあるデニソワ洞窟で見つかった子どもの化石骨 のDNAを調べた結果、デニソワ人 という旧人がいたことも明らかになっています。さらに、2018年には東南アジアのラオスの洞窟でもデニソワ人の子どもの骨が発見され、東南アジアにもデニソワ人が生息していたことが新たにわかりました。デニソワ人については謎が多く、遺伝子研究などで解明が進んでいます。
【人類の進化】新人(ホモ・サピエンス)とは?
現代を生きている私たち人類は、進化の最終過程である新人に属するホモ・サピエンスです。現生人類とも呼ばれます。私たちの直接の祖先として、ホモ・サピエンスについて知っておきましょう。
・弱いからこそ知恵を使って生き残った
ホモ・サピエンスは、原人のホモ・エレクトスが各地に広がって行く中で、その地で暮らしていた種族と交流し、異種交配することで進化したと考えられています。大脳の前頭葉が大きくなったことから、額が垂直に持ち上がり、眉のあたりの盛り上がりが小さくなるなど、現代人とほぼ同じような容貌をしています。ホモ・サピエンスは旧人のネアンデルタール人と比べると力が弱く、身体能力が劣っていたので知恵を使って生存確率を高めていました。たとえば、遠くから獲物を狙える道具アトラトル(やり投げ) をつくり出したり、言葉を使ってお互いの気持ちを話したりすることで、仲間同士が協力し合えるようにしたのです。
・現生人類の直接の祖先
ホモ・サピエンスの仲間には、現生人類の直接の先祖となる「ホモ・サピエンス・イダルトゥ」(ヘルト人 )や「クロマニョン人」がいたことがわかっています。ヘルト人やクロマニョン人は壁画を描くなど芸術的、文化的な性質のある人類でしたが、時間の経過とともに淘汰され、現在の人類のみが生き残りました。「ホモ・サピエンス・イダルトゥ」と区別するために、現生人類は正式な学名はホモ・サピエンス・サピエンス(Homo sapiens sapiens)とされています。
人類の進化には、まだ不思議がいっぱい
今回の記事では、4つの過程に従って、人類の進化を見てきました。人類の進化にはまだまだ解明されていないことがたくさんあります。私たち人類がどのように誕生し、進化してきたのかは、考古学者や人類学者、遺伝学者など、たくさんの研究者が謎を解明しようと取り組んでいます。これからの研究により、いつか、もっともっと古い時代のことが解明される日がくるかもしれません。