電気はどのように発明された?最初の発電から乾電池の誕生まで
公開日: 2024/04/30
私たちの暮らしには、電気を使った便利な道具がたくさん使われています。例えば、家にあるテレビやパソコン、照明などが使えないとしたら、生活は大きく変わってしまいますよね。この記事では、電気の発見から、現在のように便利に使う方法が見つかるまでの歴史を紹介します。
- 目次
- 人間が電気に気が付いたのは2500年以上前
- 電気は集めてためておける?
- いよいよ「使える」電気の発明へ
- 磁石で電気が作れる?電磁誘導の発見
- 社会に電気を届けよう
- 不思議な現象から当たり前の道具へ
人間が電気に気が付いたのは2500年以上前
皆さんも知っている通り、雷のように電気は自然界にも存在しています。でも雷を手に取って調べるのは難しく、人間がその存在に気が付くためには、もっと身近な例が必要でした。
古代ギリシャ人は電気の存在に気づいていた
電気に関する最初の記録として広く知られているのは、紀元前600年ごろに古代ギリシャの哲学者タレスが行った実験です。タレスは、琥珀(こはく、樹液が長い時間をかけて固まった石のようなもの)を布でこすると、周りの軽い物体が琥珀に引き付けられる現象を見つけました。英語では電気のことを「Electricity」と言いますが、これは古代ギリシャで使われていた琥珀を指す言葉に由来しています。
電気を帯びた物は、引き付けあったり、遠ざけ合ったりする
タレスが記録した現象は、現在は静電気として知られています。静電気は、二つの物質をこすり合わせた時に、電気を持った物質が一方に移動することで起きます。物質が持っている電気のことを「電荷」と呼びます。電荷にはプラスとマイナスがあり、プラスの電荷同士またはマイナスの電荷同士の間には、お互いを遠ざける力が働きます。反対にプラスの電荷とマイナスの電荷の間には、お互いを引き付けあう力が働きます。タレスが観察したのは、プラスとマイナスの電荷を持つ物が引き付けあっている現象で、電気の働きを人間に分かりやすい形で表したものでした。
電気は集めてためておける?
タレスの実験は興味深いものですが、それだけでは現在のような電気の便利な利用には結び付きません。電気の力を上手に使うための次のステップは、電気を集めて貯蔵してみることでした。
電気をためておける装置「ライデン瓶」
1746年頃、オランダのミュッセンブルークという学者が、静電気をためるための装置である「ライデン瓶」を作りました。ライデン瓶は、ガラスの瓶の内側と外側に金属の膜を張ったものです。電気を通しにくい物質(ライデン瓶の場合はガラス)を、電気を通しやすい金属で挟んだ構造は、現在、コンデンサと呼ばれている電気をためておく部品と共通しています。コンデンサに貯蔵できる電気の量はそれほど多くないので、電池のように使うことは難しいですが、電気の研究にとって大きな進歩であることは間違いありません。
雷を捕まえる?ベンジャミン・フランクリンの凧あげ実験
アメリカの建国に大きな貢献をしたことでも知られるベンジャミン・フランクリンは、雷の中で凧をあげ、雷によって発生した電気をライデン瓶の中にためることに成功しました。これによって、雷の正体が電気であることが確かめられたのですが、この実験は非常に危険であり、彼が無事だったのはとても幸運だったからとも言われています。皆さんは、絶対に真似しないでください。
日本にもライデン瓶が伝わっていた
ライデン瓶が作られた18世紀の日本は、江戸幕府の鎖国政策によって海外との交流が制限されていました。それでも、貿易が認められていたオランダから、ライデン瓶を使った「エレキテル」装置が日本に持ちこまれていました。エレキテルの箱にはハンドルがついていて、これを回すと内部で摩擦による静電気が発生し、ライデン瓶に集められます。集められた電気は、銅線を通じて箱の外に放出される仕組みになっています。平賀源内は、まだ電気に関する知識がほとんどないなか、大変な苦労をしながら壊れたエレキテルを修復したことで知られています。
いよいよ「使える」電気の発明へ
ライデン瓶にためておける電気はわずかで、実際になにかの仕事に使うことは困難でしたが、電気に関する理解はますます深まりました。そのおかげもあって、19世紀になると電気の利用が現実的になってきます。
最初の電池の発明
電池は、必要な時に電気を取り出すことができる便利な仕組みで、リモコンなどに使われています。この電池の仕組みを発明したのは、イタリアのボルタという学者です。ボルタの電池は、性質の違う2種類の金属を電解液(電気を通す液体)に接触させたときに起こる化学反応を利用しています。この化学反応が起こっている間は電気が継続的に流れ続けるので、静電気を利用したライデン瓶ではできなかったさまざまな実験が可能になりました。
磁石で電気が作れる?電磁誘導の発見
電気の歴史を語る上で、欠かすことができないポイントが「電磁誘導」の発見です。電磁誘導は、現在も使われている発電機の基礎となっている現象です。
磁石の動きから電気のエネルギーへ
1831年に電磁誘導を世界で初めて報告したのはイギリスの科学者マイケル・ファラデーです。彼は、電線を巻いたコイルの中で磁石を動かすと電気の流れ(電流)の発生を発見しました。この発見のポイントは、電気と磁石の動きの関連です。私たちは普段、電気を使って何かを動かしています。例えば、扇風機は電気の力でプロペラを回します。ファラデーが示したのは逆のメカニズムで、物を動かすエネルギーがあれば電気を作れる、ということです。
実用的な発電機の発明によって電気を使う時代に
1870年に、ベルギーの発明家ゼノーブ・グラムによって実用的な発電機が開発されました。グラムの発電機は、ファラデーが報告した電磁誘導の原理を利用して、動力を電気エネルギーに変換する装置です。大量の電気を効率よく生み出せるようになったため、この時代以降、電気の利用が拡大していきます。
社会に電気を届けよう
ここまで、電気の発見、貯蔵、発電の歴史を紹介してきました。電気に関するさまざまな研究の成果によって、ついに、多くの人が電気を使える時代がやってきます。
電気を作ってみんなに送る、エジソンの挑戦
トーマス・エジソンは、白熱電球で有名な発明家ですが、実は発電所や発電所から家庭などに電気を送る仕組みを作ることにも熱心に取り組みました。エジソンは1882年に、商業的な火力発電所をニューヨークのパールストリートに作りました。パールストリートは、現在でも世界の金融の中心として知られるウォール街のすぐ近くにあります。電力の商業的な可能性をアピールするにはうってつけの場所ですね。
エジソンの敗北?電流戦争
エジソンの仕組み(直流)では、電気を遠くに送ることが難しく、電気を使う場所のすぐ近くに発電所を作る必要がありました。現在使われている送電方法(交流)は、エジソンの会社で働いていたテスラという技術者が推進したもので、発電所から遠く離れた場所にも効率的に電気を送れます。
安全で使いやすい乾電池の発明
この時代、日本でも注目すべき発明がなされています。日本人の発明家である屋井先蔵は、1893年に液体を使わない電池(乾電池)を開発しました。ボルタの電池や、それを改良した電池は、化学反応を起こすために電解液を必要とするので、寒冷地で液体が凍ってしまったり、漏れたりする危険がありました。乾電池であればそのような心配はなく、あらゆる場所で安全に使用できます。
不思議な現象から当たり前の道具へ
この記事で紹介したように、2500年前、電気は不思議な現象の一つでしかありませんでした。しかし、多くの人たちの努力によってその正体が解明され、今では人間の生活のあらゆる場面で利用されています。 一方で、発電のために多くの化石燃料を燃やすことが地球温暖化につながっている可能性があるなど、電気にまつわる課題は現在でも残っています。もし興味が湧いてきたら、未来の電気について、いろいろな可能性を調べてみるのもおすすめです。