近代五種競技とは?激しい優勝争いに釘付け!ルールと見どころ

公開日: 2019/11/12

4年に一度開催される世界的なスポーツの祭典。競技が始まると、日ごろはあまりテレビで見られない競技に出会えるのも楽しみの一つです。2018年にカーリング女子チームが日本やアジアで大注目されたことも記憶に新しいでしょう。カーリング以外にも「改めて見てみると面白い」というスポーツはまだまだありそうです。 今回この記事で注目したいのは「キング・オブ・スポーツ」と言われている「近代五種競技」です。知っている人はまだ少ないかと思いますが、見どころ満載なこの競技について、ルールや魅力などを解説していきます。

目次
近代五種競技とは
近代五種競技のルール
近代五種競技の見どころ
最後の最後まであきらめない選手たちを応援しよう!

近代五種競技とは

数々あるスポーツの種目の中で「キング・オブ・スポーツ」と言われながらも、「キング・オブ・マイナースポーツ」ともいわれている種目があります。それが、「近代五種競技」です。

近代五種競技とは、1人の選手が1日のうちに「フェンシング」「水泳」「馬術」「射撃」「ランニング」と全く種類の異なる5種目を競い、タイムや勝敗などで順位を決める複合競技です。近代五輪を提唱したクーベルタン男爵によって考案され、1912年のストックホルム大会から正式競技となりました。「なぜ5種目なのか?」と言うと、紀元前の古代五輪において行われてた、「走幅跳」「円盤投」「スタディオン走」「やり投」「レスリング」の5種目からなる(古代)五種競技にならったのだそうですよ。

近代五種競技は、ヨーロッパでは王族や貴族のスポーツと言われて根強い人気があるものの、各種目を行うためには異なる競技施設や道具を必要とすることや、5種目全てにおいて必要な身体能力や技術を高めなければならないこと、過酷な競技であることなどから、他の競技に比べて競技人口は伸び悩んでいます。「キング・オブ・スポーツ」と言われつつも、「マイナー」と言われているのは、その競技人口の少なさ故なのです。

日本での歴史は、1955年に日本近代五種競技連合が結成された時から始まります。その当時の日本人競技者は、ゼロ。現在でも日本国内の競技人口は数十名程度と言われています。過酷・マイナーと言われる近代五種競技なので、子どものころから競技を始めている人はほとんどいません。多くの選手が高校生や大学生のころにスカウトをきっかけに始めることが多いのだそう。特に、水泳の能力が高い人が、陸上競技の能力を強化することで近代五種競技に転向するケースが多く、現役の近代五種選手の8割~9割は元水泳選手だったといわれています。

近代五種競技のルール

近代五種競技では、1日で5種目の競技を少ないインターバルで次々に行っていきます。それぞれどんな種目なのか、ルールを見ていきましょう。

フェンシング

エペによる1分間一本勝負の総当たり戦となります。エペとは、フェンシングの種目の一つです。頭からつま先までの全身が有効面で、有効面のどこかを相手より先に剣先で突くことによってポイントになります。フェンシングの剣先にはセンサーが付いていて、圧力750g以上の突きに機械が反応しランプが点灯するので、初心者でも観戦していて勝敗が分かりやすいです。勝率70%を250点とし、1勝あたり6点が増減します。この種目では、一瞬の隙が勝敗を分けることになるため、瞬発力の他に高い集中力が必要となります。

水泳

200メートル自由形で行われます。男女共に2分30秒を250点の基準とし、1秒あたり2点増減します。タイムによって得点が決まってしまうため、選手は200メートルをより速く泳ぎ切らなければならず、パワーと持続力が求められます。

馬術

貸与馬による障害飛越競技です。騎乗馬は、競技がスタートする1時間前に抽選によって決定します。12障害15飛越(ダブル、トリプル障害を含む)で行われ、高さは最高で120センチ、300点満点からの減点方式です。障害の前で止まる拒止や障害を避けてしまう逃避は10点、障害の落下は7点と、大きな得点が減点されてしまうため、初対面の馬をどれだけ乗りこなせるかが重要になってきます。そのため、試合前に許されている短時間のウォーミングアップだけで馬の気質やその日の調子を見極める観察力や冷静さなどが求められます。

レーザーラン(射撃とランニング)

これまでの3種目の合計点の得点差1点=1秒と換算して、上位の選手から時間差でスタートし、射撃と800メートルのランニングを交互に4回行います。以前は射撃とランニングは別々で行われていたのですが、競技時間の短縮などを理由に、2009年から2つをミックスして行う、現在の方式に変更になったのだとか。

射撃で使うのは本物の銃ではなくレーザーピストルで、制限タイム50秒のうちに5回的に当てなければいけません。制限タイムを過ぎると、強制的にライニングに移行させられます。5回命中するまで先に進めないため、射撃のミスによってロスタイムが大きくなってしまい、順位に大きな影響が出てしまうため、精神的な焦りにつながりかねません。

また、800メートルのランニングで乱れた呼吸を整え、射撃を的に当てることを考えると、相当な集中力が必要ということが想像できるでしょう。「全力で走った後に心と身体を落ち着かせて集中する」という切り替えを素早く行うことは難しく、しかも後半になるに従って疲労もたまって呼吸も乱れていきます。そのため、スタート直後のまだ呼吸も乱れていない最初の射撃をいかにライバルよりも素早く通過できるかがポイントになっていきます。
最終的に、この競技でゴールした順位がそのまま最終順位となるため、レーザーランを制することが勝敗の分かれ目となります。

近代五種競技の見どころ

一度に複数の競技を見られる

異なる要素を持つ5種目を1日で行うため、様々な種目を一度に観戦することができます。すべての競技を1会場で行う大会もあり、移動することなくすべての競技を楽しむこともできます。競技時間をなるべく短くし、選手がコンディションを整えやすくするよう、工夫が凝らされるのだそうですよ。

順位の入れ替わりが激しいから最後まで見逃せない

他のスポーツと比べて、番狂わせが起きやすく、最後の結果が出るまで順位が分からないというのも見どころです。特に、馬術で選手が乗る馬はその日に抽選で決まるため、どの馬に乗ることになるのかによっては大きく順位が変動してしまうこともあります。
逆に、複合競技なので一つの種目で順位が振るわなかったとしても他の種目で順位を上げることもあれば、今まで上位だった選手が順位を大きく下げることもあり得ます。特に、最後のレーザーランでの射撃は集中力を要するため、ちょっとしたミスによって後から来た選手にあっさりと抜かれてしまうということがあるそうです。最後の種目なだけに、その緊張感や焦りもことさら大きくなってしまうのでしょう。

もしかしたら無名の選手が入賞するかも!?

近代五種競技は、世界の競技人口が少ないスポーツです。その分、今までは陸上や水泳など他の競技で活躍していた選手が転向すれば、競技経験が浅くとも、あっという間にメダリストになる可能性もあります。それだけ夢のある競技ともいえますね。

最後の最後まであきらめない選手たちを応援しよう!

近代五種競技は、選手それぞれに得意・不得意があるため、順位は一定ではなく入れ替わりが激しい競技です。そのため、選手自身も「あきらめなければ勝てるかも」という希望を最後の最後まで捨てずにいるそうです。この、全力で競技に挑む姿は、きっと私たちを感動させてくれることでしょう。ぜひ皆さんも2021年の東京で、近代五種競技を応援してみてはいかがでしょうか。

<参考>
公益財団法人日本オリンピック委員会『競技紹介 近代五種』
https://www.joc.or.jp/sports/pentathlon.html
公益社団法人日本近代五種協会『近代五種とは』
http://pentathlon.jp/about_5/
GROWING『「競技をもっとメジャーに」 近代五種の知られざる魅力とは』
https://www.toto-growing.com/interview50
Sportie.com『日本代表になれるかも!?キング・オブ・スポーツ近代五種』
https://sportie.com/2016/07/modernpentathlon
Canon『東京2020オリンピック・パラリンピック&55競技 見どころ紹介 近代五種
オリンピック競技』
https://global.canon/ja/event/2020/sport/public19/

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